子どもは遊びを通して、人と人との境界を学ぶ。境界とは、自分が受け入れられるのはどこまでで、どこからが嫌なのか、相手が受け入れられるのはどこまでで、どこからが嫌なのか、という区別である。その境界は人によって違うし、自分と相手との関係性によっても違う。だからこそ、一人一人と関わり、時にけんかして仲直りする経験を通して、自分と相手の境界を学ぶのである。ただし、境界を学ぶ過程には助けがいる。年上の子どもや大人が、相手の嫌がることをやり続けている子どもに「嫌がっているからやめようね」と境界を示し、嫌がっていた子どもには「やられて嫌なことは、嫌だと言っていいんだよ」と教えるのである。このようにして、人は境界を守る術を学ぶ。自分と相手の境界を守ることは、「私は私、あなたはあなた」であることを認め、尊重することに他ならない。
大学生でも社会人でも、境界侵犯は起こる。権力の格差、集団の圧力、組織の制度が絡むとき、境界侵犯は深刻になる。ハラスメントや差別は、境界侵犯に他ならない。人との関係でモヤモヤを感じるとき、自分と相手の境界はどこか、自分と相手はその境界を越えていないか、振り返ってみよう。もし境界を越えていたならば、「相手が嫌がることはしない」「自分が嫌なことは嫌だと言う」という子ども時代に学んだことを、勇気を持って実行しよう。それでも状況が変わらないときや、どうしても直接伝える勇気が出ないときは、大学の相談窓口を含め、第三者に相談しよう。「私は私、あなたはあなた」を守るために。
(Y.O.)
第1158回