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早大生小説家・鈴木るりか 新刊『星に願いを』今秋出版!

「読者からの反響がモチベーションにつながっています」

社会科学部 2年 鈴木 るりか(すずき・るりか)

戸山キャンパス 戸山図書館前にて

小学生の頃から小説の執筆に取り組み、中学2年生で出版した『さよなら、田中さん』(小学館)が10万部を超えるベストセラーとなった鈴木るりかさん。身の回りで起きた出来事から着想を得て、日常生活に根差した作品を生み出す鈴木さんは、学生でありながら計5作品を世に送り出してきました。2023年10月17日には6作目となる、長編小説『星に願いを』(小学館)を刊行。今回は、本との出合いのきっかけや大学での学びが作品作りに与える影響、今後の展望などについて聞きました。

――本に興味を持ったきっかけを教えてください。

家の隣に図書館があったので、字が読めないようなときから母によく連れて行ってもらっていました。2、3歳のときには絵本や図鑑の写真を見て、それに合わせて自分で物語を作って話していたそうです。小さい頃から本が身近な環境にあったことが、小説家として活動する大きなきっかけになったと思います。

幼少期、図書館での一枚

――それを実際に作品として形に残し始めたのはいつ頃からですか。

実は、最初に生み出した作品は漫画でした。それを出版社に投稿したところ、とても丁寧な講評をいただけて、自分の作品に対して反応が返ってくることの喜びを知ったんです。小説を初めて書いたのは小学4年生のとき。小学館が主催していたコンテスト『12歳の文学賞』の副賞の図書カード10万円分に引かれて、一日で物語を書き上げました(笑)。その後、コンテストの主催者の方から編集部門へ「鈴木さんを作家として育ててくれませんか」とお話をしていただいたそうで。それまでの作品を改稿、さらに書き下ろしで短編を3本追加して、中学2年生で初めて本を出版しました。クラスメートが私の本を買ってサインを求めてくれたのが、とてもうれしかった記憶があります。

これまでに出版した6作品の書影。(左上から時計回りに)『さよなら、田中さん』、『14歳、明日の時間割』、『太陽はひとりぼっち』、『星に願いを』、『落花流水』、『私を月に連れてって』(いずれも小学館)

2018年に出版された、自身にとって2作目となる『14歳、明日の時間割』は翻訳され、海外でも愛読されている(左から)韓国版、台湾版

――その後、社会科学部に進学した理由を教えてください。また、5作目の『落花流水』は受験期に執筆したそうですね。

活躍していらっしゃる作家さんが早稲田出身であることが多くて、「作家と言ったら早稲田」というイメージが私の中であり、ずっと憧れていました。実は小学5年生のときから今まで私を担当してくれている編集者さんも校友(卒業生)なんです! 受験を前に大学の情報を集める中で、社会科学部では広くさまざまなことを学べると知り、多角的な視点でもっと世の中を知りたいと考えていた自分にぴったりだと確信しました。

高校3年生では受験勉強と並行して、『落花流水』の執筆にも取り組んでいたのですが、自分に合ったペースで執筆していたので、両立が厳しいと感じたことはあまりありませんでした。私にとって執筆活動は息抜きみたいなもので、受験に対して不安に思ったときには小説を書いて気持ちを落ち着かせていたぐらいです。今振り返ると、受験期間は限られた時間の中で小説にきちんと向き合えた時期でもありましたね。

小学5年生のときに、子ども向けに開催された科学イベントに参加した際の一枚。「早稲田大学のブースで、既にワセダベアと運命的な出会いを果たしていました(笑)」(鈴木さん)

――大学では何を学び、どのように執筆活動に活かしていますか。

これまでに、必修となっているマーケティングや政治、社会学などの基礎的なことを広く学びました。特に面白かったのは、1年生の春学期に履修した日本語を学ぶ授業。それ以来、深く考えてみると実はよく分からない日本語の意味や、違和感のある漢字などについて興味を持つようになり、現在は言語学を専門とする笹原宏之先生(社会科学総合学術院教授)のゼミで学んでいます。

大学で得た知識はさまざまですが、そのまま小説に取り入れてテーマにするというよりは、それをきっかけとして新しい展開を考えていくことが多いです。授業などで一度聞いたことが頭の片隅に残っていて、それが執筆中に突然浮かんでくることもあります。大学での学びを通して自分の中の引き出しを増やしているイメージです。

――小説を執筆していて大変だと思うことはありますか。

休日に自分の部屋で執筆することが多いのですが、作業がはかどる日、そうでない日の差が大きいです。集中していると深夜から明け方まで5、6時間書けますが、何時間たっても数行しか進まないという日もしばしば…。小説を書くこと自体はすごく好きである一方、産みの苦しみのようなものもあります。しかし、時々いただくファンレターで読者の生の声を聞くことができるので、そうした反響を励みに頑張っています。もちろん本を読むこと自体が好きなので、他の小説家さんの作品を味わうことも、私の執筆の原動力です。

読者から送られてきたファンレター。鈴木さんの似顔絵が描かれている

――先日刊行された『星に願いを』はどんな作品ですか。読みどころを教えてください。

2023年10月17日に刊行された『星に願いを』。自身にとって6作目となる長編小説

今作の題材は、これまでに出版した『太陽はひとりぼっち』での太陽、『私を月に連れてって』での月に続き、星。3部作シリーズの最後となっています。内容として、人が生きていく中で法には触れずとも犯してしまった罪や、それに対する赦(ゆる)し、また人間の中に同時に存在する相反する感情を扱っています。

また、前半と後半で雰囲気が大きく変わるところが魅力の一つで、読みごたえのある作品になったと自負しています。というのも、実は書き始めたときには前編と後編で別々の小説にするつもりでいたんです。しかし書き進めるに従って、頭の中にあった二つの物語が自然とつながっていき、一冊の作品として仕上げることに。ラストにはミステリーの要素も加えたので、そこに注目して読んでいただければうれしいです。

――今後の展望を聞かせてください。

私自身、一読者としても小説家としても短編小説が好きなので、いつか一切過不足がない「完璧」な短編小説を書いてみたいです。また今後は、ある意味私の物語制作の原点ともいえる、漫画や絵にも力を入れていきたいです。ただ、今後も制作活動に携わってはいきたいと思う反面、それだけを仕事にしようとは考えていません。出版業界とは全く異なる職に就くことで、どこかで作品作りにつながる部分があったりと、執筆にも活きてくる貴重な経験になるはずだからです。さまざまな経験を積むことで、今後もより良い作品を生み出せるように頑張ります。

第858回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
文化構想学部 2年 浮谷 雛梨

【プロフィール】

東京都出身。星美学園高等学校卒業。14歳で『さよなら、田中さん』を出版し、10万部を超えるベストセラーに。2018年『14歳、明日の時間割』、2019年『太陽はひとりぼっち』、2020年『私を月に連れてって』、2022年『落花流水』を刊行。2023年10月17日に6作目となる『星に願いを』を刊行(いずれも小学館)。

好きな小説は『星への旅』(吉村昭著/新潮社)。漫画研究会(公認サークル)に所属していて、「早稲田祭2023」では作品を展示した。

▼これまでの鈴木さんの作品紹介はこちら

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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