Waseda Weekly早稲田ウィークリー

News

ニュース

アラビア語コンテストで最優秀賞 思想研究で日本とアラブ世界の架け橋へ

「アラビア語に対するモチベーションが高いのは、早稲田の優しい先生方に恵まれたおかげ」

文学部 3年 岡田 祥寛(おかだ・よしひろ)

戸山キャンパスにて

皆さんはアラビア語に触れたことがありますか? アラビア語は世界で2億人以上が公用語としている言語です。早稲田大学では文学部と文化構想学部で基礎外国語として履修可能なだけでなく、グローバルエデュケーションセンター(GEC)でも受講できるものの、他の外国語に比べるとなじみのない学生が多いかもしれません。そんなアラビア語を学ぶ大学生を対象に2022年12月、「アラビア語朗読コンテスト」(東京外国語大学主催)が開催されました。今回はそのコンテストで見事最優秀賞を受賞した岡田祥寛さんにインタビュー。コンテストのことやアラビア語を学び始めたきっかけ、イスラム圏の文化に対する熱意を聞きました。

――「アラビア語朗読コンテスト」最優秀賞の受賞、おめでとうございます。まず、どのようなコンテストなのか、参加したきっかけを教えてください。

このコンテストは、12月18日の「世界アラビア語の日」を記念して、東京外国語大学主催、在日本シリア・アラブ共和国大使館協力の下、2022年に初めて開催されました。事前に提示されたシリア出身の詩人や作家の文学作品から好きな一節を選んで1分ほど朗読するのですが、表現力も含めて審査されます。コンテストに向けてかなり練習したので、最優秀賞をいただけて努力が報われた気持ちです。

「アラビア語朗読コンテスト」で最優秀賞を受賞した際の岡田さん。右は審査委員長を務めたムハンマド・ナジーブ・エルジー在日本シリア・アラブ共和国臨時代理大使

コンテストに参加したのは、大学で履修しているアラビア語の担当であるスライマーン・アラーエルディーン先生から「受けてみないか?」とお話をいただいたのがきっかけです。日本でアラビア語の実力を試す機会はなかなかないので、良い機会だと思い応募しました。

――コンテストに向けてどのような準備をしましたか。また最優秀賞を受賞した決め手はどんな点だと思いますか。

コンテストへ参加するにあたり、特に直前の1週間はスライマーン先生にZoomを使用してマンツーマンで指導してもらいました。ネーティブの方なので、発音の面でも的確なアドバイスを頂けたのがありがたかったです。

また、朗読の一説を暗記して挑んだことも賞をいただけた理由として大きいと思います。40人ほどの参加者がいましたが、詩を暗記しているのは自分だけでした。詩をしっかり覚えていたおかげで観客の方を真っすぐ向いて堂々と読み上げることができました。それと、自分の声が大きいのも理由の一つかもしれません(笑)。

――そもそも、なぜアラビア語を学ぼうと思ったのですか? また、文学部に進学した理由を教えてください。

アラビア語に出合ったのは、高校3年生の時です。「本はたくさん読んでおいた方が良い」と、ある先生が話していたことがずっと頭の片隅にあり、ふと書店で手に取ったのが井筒俊彦先生の『イスラーム文化-その根底にあるもの』(岩波文庫)という本。そこでイスラム教の思想に対する興味が湧いたことからアラビア語を学びたいと思い、独学で勉強を始めました。

また、自分は附属校(早稲田大学高等学院)出身なのですが、大学進学にあたって各学部の情報を調べる中で、文学部に中東・イスラーム研究コースがあるのを見つけて。その頃は既にイスラム神学に興味があったので、そのようなコースがあるならば、文学部でアラビア語を学ぼうと決めました。

――アラビア語の難しさはどんな点ですか?

後ろに表示されているのは岡田さんが朗読したアラビア語の詩。日本語や英語とは違う独特の難しさがあるという

まずアラビア語を学ぶ上で感じる難しい点の一つとして、母音を書かないというアラビア語特有の点が挙げられます。文字は子音だけを記すので、例えば子音の「K T B」を表す文字の場合、「カタバ(Ka Ta Ba)」と発音すれば「彼は書いた」という意味に、「クトゥブ(Ku Tu Bu)」と発音すれば「本(複数形)」という意味になります。全く違う意味でも書く文字は同じなので、意味は文脈で理解する必要があるんです。二つ目としては文法が日本語はもちろん、英語とも大きく異なる点が挙げられます。文字は右から左に書くというのも特徴的です。

これまでに高校の授業や独学でロシア語やフランス語なども学んだものの長続きしなかったのですが、アラビア語に関してはそういったことがなく、今に至るまで楽しく学び続けています。ここまでアラビア語に対するモチベーションが高いのは、早稲田の優しい先生方に恵まれたおかげかもしれません。また、自分はアラビア語を通してイスラムの思想を学んでいます。著者の言いたいことが理解できたときはものすごくうれしく、それもモチベーションになっています。

――文学部の中東・イスラーム研究コースでの学びはいかがですか?

文学部にはイスラムに関する歴史や社会系の授業が多く、アラビア語の授業も初級から上級まであります。中東・イスラーム研究コースでは、テロや戦争など現代系のテーマを扱う学生も多いですが、自分のようにイスラムの思想を学ぶ人間にとってもためになる授業が多く、今は学びたいことが学べていると思います。

2023年の春休みに短期留学でエジプトへ渡った岡田さん。思想を学ぶ上でも多くの刺激を受けることができたそう

今年の春休みには1カ月半ほど短期留学でエジプトへ行き、現地ではアラビア語の語学学校に通ったので、会話力はとても伸びたと実感していますし、自分の研究対象としている思想家たちが暮らしてきた街や風土を直接感じたり、思想家の墓に訪れたりするなど多くの刺激を受けることもできました。本もたくさん購入したので、今後しばらくは読書にいそしむつもりです。

岡田さんがエジプトで購入した本。日本ではなかなか入手が難しいという

――今後の展望について聞かせて下さい。

まだアラビア語の古典文学を読むための十分なスキルが身に付いておらず、エジプト留学を通して会話力をさらに伸ばしたいと感じたので、語学は引き続き頑張りたいです。また現在、「カラーム」と呼ばれる、イスラム思弁神学という分野に興味を持っているのですが、大学生活も残り2年を切り卒論に向けて準備を始める中で、まだまだ満足行くまで学べていないと実感するようになりました。そのため、大学院に進みさらに勉強を続けていきたいと思っています。

コンテストの際に企画委員長でもあった東京外国語大学の青山弘之教授に「日本とアラブ世界の架け橋になってほしい」とのお話もいただいたので、あまり知られていないイスラム教思想の魅力や学びを日本にもっと広く届けていくという意味で、日本とアラブ世界をつなぐ架け橋になれればな、と思っています。

第846回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
社会科学部 3年 堤 壮太郎

【プロフィール】

千葉県出身。早稲田大学高等学院卒業。のびのびとした校風に魅力を感じ高等学院へ入学。高校在学中は陸上部に所属していた。趣味は読書だが、「暇な時間があったらアラビア語の本を読む」と話すほど、アラビア語漬けの日々を過ごしている。

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/weekly/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる