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晴れの日も、普段の日も 一期一会の着物で過ごす

ワタマサの洗える御召とJOTARO SAITOの羽織

国際学術院教授 上杉 勇司(うえすぎ・ゆうじ)

1970年静岡県生まれ。県立沼津東高等学校卒。国際基督教大学教養学部卒、米国George Mason University, Institute for Conflict Analysis and Resolution(現Carter Center for Peace and Conflict Resolution) 紛争分析・解決学修士号、英国University of Kentにて国際紛争分析学の博士号を取得。特定非営利活動法人沖縄平和協力センター副理事長、一般社団法人広島平和構築人材育成センター理事を兼務する。『どうすれば争いを止められるのか−17歳からの紛争解決学』(WAVE出版)、『紛争地の歩き方−現場で考える和解への道』(ちくま新書)。無双直伝英信流篤志会に入門し、早稲田大学居合道部員たちと日々稽古に励む。上杉勇司公式Webサイトはこちら

京都に出張したときのこと。滞在したホテルの近くに呉服屋がありました。ぶらりと店内に入るとリユースのコーナーに案内されました。そこで結城紬(茨城県結城市の絹織物)のアンサンブル(長着と羽織のセット)に出合います。身長182cmの私の身丈に合うリユースの着物はめったに出ません。店員の「この着物は昨日入荷されたばかりです。お客さまに着てもらうためにここに届いたようなものです」という口車に乗せられ購入してしまいます。

最初は、初詣や国際会議などの特別な機会に着る「晴れ着」としていました。ところが、着物を身に着けていると周囲から声を掛けられることが多くなり、徐々に袖を通す頻度が高くなります。「粋ですね〜」と言われると上機嫌になり、もっと着物が欲しくなりました。着物のリユース店やネットを物色しますが、なかなか私の身長にぴったりの着物が出てきません。それでも、適したサイズの着物を見つけると「一期一会」だと自分に言い聞かせて購入していました。

着物は着るのがむつかしい、と考える方もいるかもしれません。私の場合は、本を読んだり、YouTubeを観たりして、独学で覚えました。着物に関する知識の多くは、毎週土曜日の夜9時からのYouTubeチャンネル「あづまやきものひろばテレビジョン」から得ました。着物好きとつながるオフ会もあって、異業種の方ともご縁ができました。

あづまやでは「普段着」としての着物を推しています。「初心者こそマイサイズの着物を着るべき」(その方が着やすい)というメッセージに感化され、着物を誂える(反物からマイサイズに仕立ててもらう)ようになりました。

「普段着」といえば、毎日のように羽織るわけですから、自分で洗濯できないと不便です。そこで自宅で洗濯できる木綿の着物や麻の着物をそろえていきました。デニムも素材は木綿。デニム着物は丈夫ですし、気軽に自宅で洗えるので重宝しています。麻の着物は夏の暑い盛りの必需品。汗をかいてもすぐに蒸発します。自宅で洗って干しておけば、1時間程度で乾きます。丹後ちりめんの織元ワタマサの洗える御召は、正絹ですが自宅で洗えます。木綿や麻にはない絹の光沢や滑らかな肌触りが魅力です。

デニム着物で茶道

今では毎日のように着物で過ごしています。オフタイムだけでなく、大学で教壇に立つとき、学会報告のとき、出張のときにも着用します。そして、華やかなパーティーには美しい着物を纏いたくなります。男着物は紺色、茶色、ねずみ色の無地が多い中で、着物デザイナー・JOTARO SAITOの作品は突き抜けています。着物のファッションショーに出掛け、令和時代の着物に触発されています。

キモノデザイナー・斉藤上太郎先生(左)と

そして、和服の素晴らしさを次世代に伝えたいと思い、早稲田大学で着物を中心に和の文化にフォーカスした科目の新設を目指しています。卒業式だけでなく、茶道、落語・歌舞伎鑑賞、居合道など、いろいろな場面で和の文化は味わえます。

例えば、居合道の高段者は黒紋付きに袴姿で舞います。私は袴の着姿が武士のようでカッコいいと昔から思っていました。しかし、袴姿はコスプレと間違えられかねません。袴を着ていた日に、大学のエレベーターに乗り合わせた同僚から、「坊っちゃんの時代にタイムスリップしたかと思った」と言われたことがあります。そこで正々堂々と袴を着用できる居合道を始めました。動機は不純でしたが、この年になって師範に付いて新しいことを学ぶのは、とても新鮮な経験です。早稲田大学居合道部(公認サークル)の学生さんたちと並んで刀を振る時間は、身体と精神を鍛えてくれます。着物はもちろん、多彩な和の文化をこれからも楽しんでいきたいものです。

写真左:着物初心者の定番、新潟県産の片貝木綿
写真右:透け感のある麻の小千谷縮

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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