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毎週永田町を訪れ、政治家に直談判! 政策提言活動に取り組む早大生

「政治や行政には、まだまだ可能性が残されている」

法学部 4年 茶山 美鈴(ちゃやま・みれい)

戸山の丘にて

政策提言や社会発信を通じて「グローバルヘルス」の理念を訴える、法学部4年の茶山美鈴さん。大学の入学式が延期になるなど自身も当事者となった新型コロナウイルス感染症の経験から、日本だけではなく地球規模で保健医療体制の構築を目指していく「グローバルヘルス」の考え方を社会に浸透させるための活動を続けています。そんな茶山さんに、日々の活動内容から政治や社会運動への思い、そして今後の展望などを聞きました。

——茶山さんは2022年6月に「Health for all .jp」という団体を立ち上げ、「グローバルヘルス」の実現を目指して活動されています。どのような活動をされているのでしょうか?

Health for all .jpの活動内容は、一言でいえば「政策提言」です。法学・医学・開発経済学などを専門分野として学んでいる学生4人が中心となって活動しています。活動の多くは、厚生労働大臣や外務大臣などの政治家や各省庁の担当者と直接面会し、保健医療分野の政策がもっと実現されるように訴えかけを行うことです。大体1、2週間に1回は政治家の元を訪れて、私たちの活動の中心にある「グローバルヘルス」という考え方を紹介したり具体的な政策を提案したりしています。ちょうど最近は政府開発援助(ODA)大綱の改定や先進国首脳会議(G7)開催のタイミングということで、頻度を増やして、積極的に政策提言を行っているところです。

2022年8月、来日したビル・ゲイツ氏や加藤勝信厚生労働大臣らと意見交換を行った(左から4人目がゲイツ氏、3人目が加藤大臣、茶山さんは右から2人目)

——「政策提言」と聞くとなんだか難しそうなイメージがありますが、どういうことをするのでしょうか?

政策提言といっても、やっていることは一般的なプレゼンテーションと同じです。グローバルヘルスの考え方やそれを実現するための政策を紹介し、「こんなふうにやっていくべき」とアイデアを売り込んでいきます。私が政策提言を行うときには「若者らしさ」を見せるように心掛けています。政策立案のためのロジックは官僚にかなわないので、私は「若者が本当に望んでいることなんだ」と伝えられるように、できるだけアグレッシブに話す習慣が身に付きました。

Health fo All .jp の副代表らと武井俊輔外務副大臣に政策提言を行った(茶山さんは後列中央)

また、若者だからこそ政治家に話を聞いてもらえるということもあります。政策提言に行くと、「若い世代が将来のことを考えて話をしに来てくれているから」ということで話を聞いてもらえるんです。今、若い世代には「社会を変えたい」という気持ちを持ってさまざまな活動に取り組んでいる人が増えています。ただ、私がもったいなく感じるのは、政治や法律に関心を向ける人が少ないことです。例えば、政策提言を通じて法律や政策の形成に関わることは、社会を変えていくための重要な手段になります。もっと多くの人に、ルールメイキングのノウハウを身に付けて、活動の幅を広げていってほしいなと思います。

——「グローバルヘルス」という言葉も聞き慣れない人が多いと思います。どのような考え方なのか教えてください。

最近、国連や日本国政府の保健医療・開発政策分野で関心を集めている考え方です。とても簡単に言うと、私たちが直面しているさまざまな問題を人間の「健康」や「健全性」に関わる問題として捉え、それをグローバルな視点から解決していこう、という考え方のことです。例えば海水温の上昇という問題がありますが、これをただ魚が死んでかわいそうと思うだけでなく、人間の食料問題として、人間の健康にも関わってくる問題として受け止めようということです。さらにこのような問題は、一つの国家だけでなくグローバルに考えて解決していくことも不可欠です。

私が特に力を入れているのは、もう少し狭い意味の「グローバルヘルス」になります。こちらは、感染症対策をグローバルな規模で考えていこうという立場のことです。新型コロナウイルス感染症では、「水際対策」が話題を集めました。確かに出入国の際に感染症対策を行うことは必要ですが、モビリティが発達した現代では限界があります。だから、国を超えてグローバルに広がっていく感染症を、その源から防いでいくことが必要なんです。例えばODAによって戦略的に投資を行い、感染症の源となってしまいがちな発展途上国の医療体制を支援していくことが、グローバルヘルスの考え方を取り入れた外交政策といえます。そのような外交政策を訴えることも、私たちの活動の一つです。

——茶山さんはテレビ番組に出演するなど、社会に向けた発信も積極的に行っているように見えます。何か考えがあるのでしょうか?

TOKYO MXの番組『堀潤モーニングFLAG』にZ世代代表のコメンテーターとして出演する茶山さん©TOKYO MX

「世論をつくる」ということを意識しているんです。政治家を動かすためには、その分野の政策を熱心に行うことが得票につながると感じてもらうことが重要です。だから保健医療分野に関心を持つ世論を形成することが必要だと考えています。

そのためには政治家や官僚に向けて政策提言を行うだけではいけません。Health for All .jpでは、専門家を招いて講演会を開催したり、インスタライブを行ったりして、直接社会に発信することにも力を入れています。また、私がTOKYO MXの朝の情報番組『堀潤モーニングFLAG』などのテレビ番組に出演しているのにも、グローバルヘルスという言葉をいろいろな人に知ってもらいたいという思いがあります。テレビに出演すると反響が大きく、本当にさまざまな方に発信が届いていくことを実感します。

——そもそも茶山さん自身が「政策提言」に出合ったのには、どのようなきっかけがあったのですか?

2019年6月に福岡市で開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議に合わせて、高校生が集まり政策提言を行った。左側手前から3人目が茶山さん(写真提供:西日本新聞社)

元々、高校生の頃から政治には関心がありました。地元の福岡で、模擬選挙などを行う学生団体を作って活動していたんです。そのときに、政策プラットフォームの開発などを行っている株式会社PoliPoli代表の伊藤和真さんに出会い、政策提言などを通じて、民間から声を上げてルールメイキングに関わっていくことが民主主義にとって重要なことだと学びました。

実は法学部に進学したのも、ルールメイキングこそが大事だと考えたからでした。法律は世の中の根幹にあるものです。だから社会を変えていくためには法律を学ぶことが欠かせないと思いました。なにより、六法全書に載っている条文を理解できるようになりたかったんです(笑)。

法学部では、国際法の古谷修一先生(法学学術院教授)のゼミに所属しています。古谷先生の専門は国際人道法なので、グローバルヘルスを考える前提となる知識を学ぶことができています。卒業論文もグローバルヘルスをテーマにする予定です。

——最後に、この記事を読んで政策提言やグローバルヘルスに関心を持った人に、メッセージをお願いします。

もしかすると、政治や政策にはなかなか変えることができないというイメージがあるかもしれません。確かにグローバルヘルスを実現するために外交政策全体をすぐに変えることは難しいでしょう。でも、根気強く政策提言を行い、世論に訴えかけていくことで、省令や通達といったところから、少しずつ変えていくことはできるはずです。そうすれば、気が付いたときにはかなり大きな変化につながります。

政治や行政には、まだまだ可能性があると信じています。特に若い人は政治家に比較的会いやすいですし、起業だけでなく、ルールメイキングへの意識を一緒に持ってほしいなと思います。政治とは持続的なシステムを考えることなんです。売れる商品にははやり廃りがあるとしても、政治や世の中のシステムは続いていきます。政治は難しい話題だと思われるかもしれませんが、まずは身近なところから「どうしてこういう仕組みになっているんだろう?」と調べていくと、次第にさまざまなものが見えてくるはずです。今は検索するだけで政策や政治についても多くの情報を得ることができますし、PoliPoliの「政策リクエスト」のように政策提言の第一歩を踏み出すための仕組みも増えてきています。諦めるにはまだ早いんです。社会をより良くするために一緒に頑張っていきましょう!

政策提言やルールメイキングの持つ可能性について、茶山さんは熱く語ってくれた

第845回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
大学院法学研究科 修士課程 2年 植田 将暉

ドライブに出かけた先で友人たちと

【プロフィール】
台湾出身。小学校6年生から福岡県で育つ。福岡雙葉高等学校卒業。趣味はドライブに行くことと飲み会に参加すること。友だちや同世代の社会起業家たちを誘って、週4回は集まっているそう。人と喋ることが好きなのだという。
茶山さんのTwitter : @chashanmeiling
Health for all .jpのTwitter : @hfa_jp

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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