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かまいたちマネジャー・樺澤まどか 人生は“不測の事態”を楽しんだもん勝ち!

マネジャーもインフルエンサーに。想定外ばかりの人生をいかに面白がれるか

吉本興業株式会社 東京マネジメントセンター 樺澤 まどか(かばさわ・まどか)

卒業以来4年ぶりに訪れた、西早稲田キャンパス55号館にて

いまやメディアで見ない日はない吉本興業の人気コンビ、かまいたち。そしてM-1王者とろサーモン。そんな注目芸人のマネジメントを担当するのは、早稲田大学出身の樺澤まどかさんだ。激務の印象がある芸能人のマネジャーという裏方業務を担当しながら、自身も吉本興業発のアイドルグループ・吉本坂46のメンバーとして表舞台に立ったこともある、異色のキャリアの持ち主でもある。

そんな樺澤さんのマネジャー業の原点と、表現することの原点。悩める時間も過ごした早稲田大学時代のエピソードを聞いた。

西早稲田キャンパス中庭にて

早稲田時代に打ち込んだ、「マネジャー」と「自己表現」

「中学時代はCOWCOWが大好きでした。あ、過去形じゃなく、今も好きですよ(笑)。そのCOWCOWの2人が私の顔を覚えるくらい、地元の群馬から東京のお笑いライブに何度も通い詰めていました」

お笑いに夢中だった地元時代を振り返る樺澤さん。その通い詰めたライブで気付いたことは、芸人の面白さ以外にもう一つ。現場でかじ取り役となるマネジャーの存在だった。

「テキパキと仕切る姿がとにかくすてきで、『こんな仕事もあるんだ、いいな』と憧れを抱き、吉本興業に入りたいと思うようになりました。ただ、高校時代の担任に『吉本は高学歴じゃないと難しいぞ』と言われたんです。実際にはそんなことはないのに、当時の私はその言葉を真に受けて、理系科目が得意だったこともあって早稲田大学の先進理工学部に進学しました」

写真左:入学式にて。「小学生の時に観たテレビドラマ『オレンジデイズ』のようなキラッキラのキャンパスライフを夢見てた頃です(笑)」
写真右:実家のほうれん草畑にて。「家族はほうれん草とオクラをメインに作っています。どちらもゆでて醤油と鰹節をかけるだけで超絶品!」

入学当初、思い描いていたのはお笑いに染まるキャンパスライフ。だが、実際にはサークル活動と学業、それぞれに打ち込みすぎた結果、「吉本のマネジャーになる」という夢をすっかり失念してしまう時期があったという。

早稲田大学理工硬式庭球部という、準体育会のような厳しいサークルに入ってしまったのが運の尽き。練習についていくのも精いっぱいで、いつ辞めようかと考えていたのに、なぜかプレーヤー兼マネジャーをやることになり…。日々、練習メニューやスケジュール、誰と誰をペアにするか、とサークルについて考えることに忙殺されましたね」

関東理工科大学硬式庭球連盟団体リーグ戦で早稲田大学理工硬式庭球部のメンバーと(前列左から2人目が樺澤さん)

学生時代から本人も気付かぬうちにマネジャー業に染まっていた樺澤さん。その一方で、学業面では大きな挫折を経験した。

「応用物理学科に籍を置いた学部時代は、とにかく理解できないことばかりで…。そんなダメ過ぎる自分に納得がいかず、もっと自分に適したことでしっかり学びたいと修士に進むことにしたんです」

大学院修士課程では、科学と芸術を融合した分野を学べる「表現工学専攻」を選択した樺澤さんは、学部時代を取り返すかのように研究に打ち込んだという。

「何かを作ること自体が楽しかったし、展示会での発表も含め、人に自分の作ったものを見てもらうことも楽しかったですね。また、表現工学専攻の学生はみんな自己表現がうまくて、私もその環境に影響されて、Instagramにイラストを載せ始めました。表現欲求をどう打ち出していくか、という点では、今に生きていると思います」

写真左:表現工学専攻の展示会で発表したテーマは「瞬きする肖像画の試作とさりげない情報提示への展開
写真右:「イラストと共に英単語を語呂合わせで覚えよう」をテーマに、スマホのペイントアプリで指で描いたイラストをInstagramに投稿している。お絵かきInstagram @me1smadoka

修士課程での研究に没頭しつつも、迎えた就職活動期。樺澤さんは就活本を手に企業研究を始めたところで、かつての夢を思い出した。

「私は何がしたいんだろう、と業界研究を始めたところ、吉本興業の文字を見つけて、『あ!』と思い出しました(笑)。いや、忘れすぎだとは思うんですけど、そこからはもう、吉本一直線でした」

想定を重ねて臨んだ採用面接。想定外だらけの吉本興業

あらためて吉本興業入社を目指した樺澤さんだったが、思いが強いだけでは突破できないのが採用面接。一度は夢破れた樺澤さんは、他の会社への就職に気持ちを切り替え、あとは修士課程修了を待つだけだった。

そんな中、吉本興業の2次募集の案内を発見。これが最後のチャンスと、全身全霊を懸けて再び夢を追いかけたのだ。

「今度は準備に命を懸けました。エントリーシートも、1次募集の際はただボールペンで書くだけでしたが、2次募集では蛍光ペンも駆使してとにかく目立つエントリーシートに。友人にも何度も見てもらいました。面接では緊張しすぎて声が小さかったことを反省し、叫ぶくらいに大きな声を意識しました。これが良かったんだと思います。吉本は声の大きい人が好きですから」

面接での質問もあらゆる角度から想定し、準備に準備を重ねた樺澤さん。その努力が実り、ついに吉本興業からの内定を獲得することができたのだ。

「実際には想定外の質問もありましたけど、『あれだけ準備したから大丈夫』と自信をつかんで臨んだことが良かったんだと思います。内定が出ていた会社の入社式2週間前、本当にギリギリのタイミングで吉本興業への入社が決まりました」

吉本興業の大型お笑いイベントにて。「会場の仕切りだけでなく、ライブの企画・構成などにも携わるので、大盛況に終わったときの達成感は何物にも代えがたいです」(樺澤さん)

こうして、長年の夢をかなえた樺澤さん。実際のマネジャー業務は、さまざまな面で「想定外」に満ちていた。

「入社前のイメージは、超体育会系で四六時中仕事ばかりしている人たち。激務で大変だろうなと想像していましたが、いざ入社してみたら皆さん優しくて、仕事以外の自分の時間も大切にしている人ばかり。私も粘土細工を作ってInstagramで公開したり、猫を飼って癒やされたりするくらいに、プライベートの時間はちゃんとあります」

写真左:趣味の粘土細工。写真の作品は全て「嫌いな食べ物」をテーマに制作。詳しくは粘土Instagram @carrot___kun
写真右:ルームメイトの恭介(マンチカン)。「たまに布団の中に来てくれるんですが、もうたまらんです」(樺澤さん)

もちろん、芸能人のマネジメントという「人対人」の仕事。独り黙々と研究を重ねる「個人プレー」が中心だった学生時代とのギャップに苦労することも。だが、樺澤さん自身が「吉本坂46」として表に出る経験もしたことで、仕事の幅も人間の幅もどんどん広がっていったという。

「吉本坂のメンバー入りは全くの想定外。流れに身を任せていたら、いつの間にかそうなっていました。ただ、私以外全員芸人なので、担当していない芸人さんとも交流を図れたことは、他の現場でも生きています。また、マネジャーがどう動くと芸人は心地よく仕事に打ち込めるのか、といった相手側の気持ちが理解できた点でも、幅が広がりましたね」

その吉本坂の活動休止に伴い、アイドル活動も卒業することに。だからこそ、あらためてマネジャー業の価値を高めていきたい、と樺澤さんは語る。

「今担当しているのはすでに大きな発信力を持った芸人ですが、今後は無名の新人を担当するかもしれません。そんなとき、マネジャーの私自身に発信力があれば、そこから芸人を知ってもらうキッカケを作れるかもしれない。マネジャーもインフルエンサーになる…そんなイメージを持っています」

2021年に初の単独ライブ「樺澤まどかワンマンショー2021 summer 」を開催し、自ら作詞・作曲した『卑屈のうた』を披露。「ワンマンショーを開催するなんて自分でもびっくりですが、大学の友人からは『まどからしかった』と言われました」(樺澤さん)

ただ、想定外のことばかりが起こる吉本興業。未来を決めすぎないことも大事、と話を続けた。

「入社してからの4年間も、自分自身が舞台に立ったり、作詞作曲をさせていただいたりと、マネジャー業務以外では不測の事態ばかり。でも、大事なことは自分自身も面白がること。楽しいからこそ、忙しくても充実しています。何よりも、担当する芸人がウケたり、SNSでトレンドに上がったときの満足感は本当に大きいです」

西早稲田キャンパス55号館にて

そんな樺澤さんから、新入生をはじめ学生たちに伝えたいことは?

「好きなこと、興味を持ったことは全部やってほしいです。学生時代だからこそできることはたくさんあったなって、社会人になって気付くんです。私も学生時代に海外留学に憧れたのに、サークルの忙しさを言い訳に諦め、今になって『やっぱり、やっておけばよかった』と思うことがあります。仕事をしていると、なかなか難しいですから。そんな後悔をしないように、興味を持ったことはすぐにやったほうがいいですよ。私みたいに、自分が何を好きか忘れてしまうのは考えものですけどね」

取材・文:オグマナオト(2002年第二文学部卒業)
撮影:布川 航太

【プロフィール】
群馬県出身。早稲田大学先進理工学部応用物理学科を経て、早稲田大学大学院基幹理工学研究科表現工学専攻修士課程を2019年に修了。吉本興業株式会社に入社し、かまいたち、とろサーモンを担当。アイドルグループ・吉本坂46のメンバーとして活動した経歴も持つ。Instagramでは自作の粘土細工やイラストを発表し、その図案がかまいたちオリジナルグッズに採用されるなど、多才ぶりを発揮している。

Instagram:
本人 @kabasawa_madoka
お絵かき @me1smadoka
粘土 @carrot___kun
ルームメイト・恭介 @kabasawa_kyosuke

Twitter:@kabasawa_madoka

 

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