皆さんは「奨学金」についてどんなイメージを抱いていますか? 利息が増え、返済できずに自己破産に…などというニュースが度々報道され、ネガティブな印象を持つ学生も少なくないかもしれません。
実は、早稲田大学には独自の学内奨学金が多数あり、その数はなんと約150種類にも上ります。それらは全て返済不要の給付型で、冒頭のような心配は無用。2022年度は約3,000人もの早大生が登録し、うち約1,000人が採用されたという実績があり、多くの学生に受給のチャンスがあるのも魅力です。また、民間奨学金にも多くの給付型があり、学内奨学金との併給も可能です。
そんな学内・民間奨学金に一括で登録できる「春の奨学金登録(学部)」がいよいよ2月1日からスタートします。それに先駆け今回は、1年生の時から毎年奨学金を受給している、先進理工学部3年生と人間科学部3年生の二人に体験談を聞きました。彼らの話を参考に、新しい学年に備えて、ぜひ奨学金の登録を検討しましょう!

(左から)鳥谷さん、川田さん
奨学金のおかげで、自分が思い描く充実したキャンパスライフを送れています
先進理工学部 3年 川田 敦也(かわた・あつや)
人間科学部 3年 鳥谷 彩純(とりや・あすみ)
――奨学金を申請したきっかけや理由を教えてください。
川田 早稲田実業学校高等部から先進理工学部への進学が決まった際に、ふと思い付いて学費を調べてみたところ、予想を超える金額にびっくりしました。高校時代は学費がいくらかなんて考えたこともなかったのですが、ゆくゆくは大学院まで進む予定であること、妹が数年後に大学進学を控えていることなどから、少しでも家計の負担を減らしたいという意識が芽生えました。
そんな折、入学予定者に配付された書類一式の中に早稲田大学の奨学金案内冊子『奨学金情報 Challenge』を見つけ、早稲田大学には返済不要の独自の奨学金が豊富にそろっていることを知りました。給付型の奨学金は、成績優秀など多くの条件を満たした限られた学生だけが採用されるものと思っていましたが、読み進めていくうちに、「あれ? 実は狭き門ではない?」と一気にハードルが下がり、奨学金が他人ごとから自分ごとへと変わったんです。

取材時に鳥谷さんが持参した2022年度版の『奨学金情報 Challenge』。この一冊に早稲田大学の奨学金情報が網羅されている
鳥谷 私の場合は、高校時代に父が突然病気になり、収入が減ってしまったため、入学前から奨学金の受給を念頭に置いていました。当初は、貸与型で返済の必要がある「日本学生支援機構奨学金」も検討していたのですが、早稲田大学について調べるうちに、給付型の奨学金がたくさんあることを知り、この大学でなら、学びを諦めることなく安心して学生生活を送れるのではと思いました。そして晴れて進学が決まり、すぐに春の奨学金登録を済ませました。以来、毎年学内奨学金を受給し、2022年度からは給付型の民間奨学金も併給しています。
――現在、どんな種類の奨学金を受給していますか?
鳥谷 「小野梓記念奨学金」(学内)を受給しています。その他に、大学から紹介していただき応募した「公益財団法人ユニ・チャーム共振財団奨学金」(民間)も受給。二つ合わせて年間88万円もの奨学金を全額返済不要で給付していただき、本当にありがたいです。
鳥谷さんが受給中の奨学金
学内奨学金 | 小野梓記念奨学金 | 対象は全学部の1~4年生。修学上経済的に困難な学生を援助することを目的としている。年額40万円。 |
民間団体奨学金 | 公益財団法人ユニ・チャーム共振財団奨学金 | 対象は人間科学部または国際教養学部の3年生で、身体が健康で高い志を持ち、品行が正しく、学業が優れ、将来の活躍が期待できる者。月額4万円。 |
川田 「横山宏・敏子奨学金」(学内)と「公益財団法人春秋育英会」(民間)を受給しています。両方合わせると給付額は年間で86万円。併給可能な奨学金に採用されたため、年間2種類の奨学金を利用できています。
川田さんが受給中の奨学金
学内奨学金 | 横山宏・敏子奨学金 | 対象は全学部の1~4年生。修学上経済的に困難な学生を援助することを目的としている。年額50万円。 |
民間団体奨学金 | 公益財団法人春秋育英会 | 対象は卒業時に26歳以下、保護者の年収が800万円以下、心身健全、学力優秀であって経済的理由により就学困難な者。月額3万円。 |
※奨学金の採用条件は年度によって変わることがあります。
――2月1日から春の奨学金の登録がスタートしますが、登録にあたり大変だったことや、意外だったことはありますか。
鳥谷 家庭によって変わるのかもしれませんが、私の場合は非常に簡単に感じました。毎年この時期に奨学課から配付される『奨学金情報 Challenge』の中に、収入に関する書類提出のチェックシートがあるのですが、煩雑な書類関係はこの通りに進めていけば漏れがないはず。父が会社員なので、必要な証明書については、私一人で役所で請求できるものばかりでした。

煩雑な印象のある収入関連の書類提出も、『奨学金情報 Challenge』にあるチェックシートを利用すれば、やるべきことが一目瞭然
川田 Webサイトで登録する際に、一回の手続きで全ての奨学金の申し込みができてしまったのには驚きました。ただ、当たり前のことですが、申請には締め切り日があるので、余裕を持って準備を始めたほうがいいと思います。私の場合、家族の協力を得なければ用意できない書類がいくつかあり、自分一人ですぐに準備できるものではなかったので、そういったものに関しては、特に早めに早めに家庭内に周知しておくべきだと思いました。

希望奨学金をチェックする申請画面。多数ある学内奨学金と民間奨学金の中から個別に選択する必要なく、一括で申請できる。
※画面に掲載されている団体は年によって変わる場合があります。
――申請後、どのようなプロセスを経て採用が決定したのでしょうか。
鳥谷 「小野梓記念奨学金」などの学内給付奨学金については、2月の登録を済ませれば、大学からのお知らせを待つだけです。無事にいずれかの奨学金に採用されれば、Wasedaメールでお知らせがきて、その詳細はMyWasedaを確認。あとは給付を待つだけなんです。もっと面倒なプロセスがあるのかと思っていたので、実際交付されるまでは、「私、何か大事な手続きを飛ばしている?」と不安になるほど簡単でした。
民間の「公益財団法人ユニ・チャーム共振財団奨学金」については、5月頃に大学から所沢総合事務センターを通して「こういう奨学金があるけど応募してみませんか」という連絡をいただきました。締め切りまで1週間というタイトスケジュールだったのですが、大急ぎで課題リポートを作成し、ゼミの教授からの推薦書も準備。7月中旬に採用結果のメールが来て、その月末には奨学金が給付されました。小論文の書き方や推薦書の手配などは、全て所沢総合事務センターの方がサポートしてくださり、財団と直接コンタクトを取ることも、奨学課のある戸山キャンパスまで出向く必要もありませんでした。
川田 登録さえ済ませてしまえば、あとは大学が応募資格の有無や適性などを考慮し、それぞれの奨学金に合致した学生をアレンジしてくれるので、自分でどんな奨学金があるのかとか、条件が合うのかなど一つ一つ入念に調べる必要がないのがすごく便利。奨学課の方によると、他大の奨学金のシステムにはあまりないそうで、早稲田の奨学金制度の特徴の一つだと思います。
民間団体奨学金についても、大学が各学生に合った奨学金とマッチングさせて紹介してくれます。一度、医療関係の奨学金を勧められたのですが、その団体が望む学生像(将来医療関係の仕事を目指している)と、自分が描く今後の展望が合致していないと感じ、辞退させていただきました。しかし、その日のうちに自分に合った別の奨学金を紹介していただき、学生側の気持ちに寄り添う大学の対応に感激しました。
※民間団体奨学金の申請のプロセスは、団体によって変わります。
写真左:鳥谷さんが所属する井上典之先生(人間科学学術院教授)のゼミ合宿での1ショット。「こういった活動に参加できるのも奨学金のおかげです」
写真右:塾講師のアルバイト中。生徒からもらったお菓子と一緒に。小・中学生に英数の個別指導をしている
――奨学金の使い道について教えてください。
鳥谷 全額学費に充てています。いろんな方のサポートのおかげで大学に通えているという思いが強くなり、一つ一つの授業をより大切に受講するようになりました。今は「生徒の内発的動機を高めるには授業でどのような働きかけを行うことが効果的なのか」というテーマで研究をしていて、将来は教育関係の道に進みたいと考えています。こういった目標ができたのも、奨学金によってより教育の大切さを痛感できたから。また、週3回塾講師のアルバイトをしていますが、学業に支障が出ない範囲で無理なくできています。全て奨学金のおかげですね。
川田 毎回奨学金が給付されると、その翌学期の学費を支払っています。現在一人暮らしをしていて、家賃と光熱費は両親に出してもらっているのですが、学費を含めたその他は奨学金とアルバイト代で賄えています。学費の心配がないのは、本当に気持ちに余裕ができますね。
中高の頃から物理が大好きで、今は応用物理学科で好きな実験や演習に没頭できるのが幸せで…。奨学金のおかげで、自分が思い描いていた充実したキャンパスライフを送れています。また、民間団体奨学金の財団から、定期的に温かい応援のお手紙をいただくんです。一学生の自分を応援し続けてくれる存在があることがすごく心強いし、学びのモチベーションにもなっています。

実験の授業で、フッ化水素酸という薬品でシリコン半導体試料の表面を洗浄中。「4年生からは、数理物理、量子光学、原子核物理学のいずれかの研究室を志望したく、今悩み中です」(川田さん)
――他の早大生へ向けてメッセージをお願いします。
川田 友人に奨学金のことを話すと、みんな「自分は大丈夫」と言うんです。お金の話ってデリケートなので、家族でオープンに話す機会がないかもしれませんが、実は苦労して学費を捻出している家庭も多いと思うんです。なので奨学金を他人ごとと思わず、ぜひ一度家族に奨学金について相談してみてほしいですね。早稲田の奨学金は多くの学生に受給のチャンスがあると思うので、利用しないのは本当にもったいないと思います。
鳥谷 こんなに素晴らしいシステムがあることを知らない学生が多いのがもどかしく、何とかそれを広めたくて、今日の対談にわざわざ所沢から参加しました(笑)。奨学金の受給は経済的にプラスになるのはもちろんですが、自分自身をより成長させてくれる存在でもあります。奨学金を遠い存在に感じている方も、ぜひこの機会に登録してもらえたらうれしいです。
奨学金登録について
早稲田大学では、奨学金希望者は全員、定められた期日までに「奨学金登録」(Web申請および必要書類の提出)をする必要があります。奨学金登録学生の中から、各団体の奨学金の趣旨・出願資格に最も適した学生が選考・推薦されます。ただし、家計支持者の死亡・失職・災害による被害などといった家計急変の事由が発生した場合は、その都度登録が認められることがありますので、奨学課に相談してください。

2023年度版『奨学金情報 Challenge』は各所属学部・研究科事務所で配布中の他、奨学課Webサイトからダウンロード可能
撮影:布川 航太
【次回フォーカス予告】1月16日(月)公開「副専攻特集」