「夢や目標を持ちなさい」と、誰もが一度は言われたことがあるだろう。海外ではどうか分からないが、少なくとも日本では、夢や目標を持つことは素晴らしいことであり、それに向かって努力することが美徳とされているように思う。子どもの頃からそのように刷り込まれているので、夢や目標が無いと焦ったり劣等感を抱いたりするかもしれない。しかし、あえて言わせてもらうと、「夢や目標は無くてもいい」。何かエビデンスがあるわけではないが、今を一生懸命生きていれば、夢や目標は後から付いてくるものだと私は考えている。
かくいう私も、子どもの頃の夢をかなえることはできず、大学生の頃からは明確な夢や目標を持たずに生きてきた。大学教員という職業に就いたのも、それが夢や目標だったわけではない。何となく進学した大学院で、目の前の課題に日々必死で取り組んだ結果、おのずと進むべき道が決まっただけである。幸運なことに、今の仕事には大きなやりがいを感じているが、いまだに将来の夢や人生の目標は見えていない。いつか夢や目標が見えてくるのであろうか? 答えはそのときまで生きてみないと分からないが、取りあえず目の前の授業や研究に一生懸命取り組みたいと考えている。
学生諸君には、授業でもサークルでも趣味でも何でも良いので、今できることに集中して、自分なりに人生を楽しんでほしい。夢や目標、夢中になれるものが無くても気にすることはない。この大変な世の中を生き抜いているだけでも素晴らしいことである。自信を持って、今をしっかりと生きてほしい。
(K.T.)
第1140回