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「走り」を通してスポーツが好きな子を育てたい!

音を使用したトレーニングで誰もが現場で使える指導法の確立を目指す

大学院スポーツ科学研究科 修士課程 2年
長谷 伸之助(はせ・しんのすけ)

私は礒繁雄教授(スポーツ科学学術院)の研究室に所属し、「走り」におけるコーチングを、動作解析法や社会調査法によって解明する研究を行っています。トップアスリートだけではなく、児童や中高生、障がい者といった幅広い方々が研究の対象です。

修士課程1年次には、陸上競技400メートルハードルのトップアスリートを対象としたレース分析の研究を実施し、その研究成果を2度、学会で発表しました。

そして現在はがらりと対象者を変えて、部活動に参加する中学生を対象に、メトロノームを使用した「走り」のトレーニングの有効性を研究しています。近年、児童の体力低下が問題視されており、スポーツ庁の『体力・運動能力調査報告書』(2021年9月発表)では、「走り」の指標となる50メートル走でこれまでの統計と比べて低い値を示していたと報告されています。「走り」は主たるスポーツの基礎であり、「走り」の能力を向上・改善させることは、児童の体力を向上させるための重要な課題といえます。しかし、児童の「走り」の動作研究は多数存在するものの、現場レベルの指導に関する研究は少ないのが実態です。

写真左:2021年11月宮崎県で開かれた、日本スプリント学会にて。初めての学会発表で、かなり緊張しました
写真右:小学生を対象に走り方を指導しているところ。小学生は本当に元気が良く、私も研究のヒントや、パワーをもらっています

そんな中、私は「走り」のリズムに着目しました。リズムの研究では、一つのリズムの周期運動を行っているとき、意図せず他のリズムに同期してしまう“引き込み現象”というものが知られています。例えば、指のタッピング動作を行っているとき、別のリズムのメトロノーム音を聞かせることで、そのリズムにタッピング動作のリズムが同期してしまうことが報告されています。引き込み現象自体は、児童の言語獲得の基盤となる、コミュニケーションにおける発話場面などでも頻繁に見られ、非常に強力な干渉作用といえます。そこで、私は「音」による引き込み現象を利用した「走り」の動作の変化を研究しようと考えました。実際に音を使用したトレーニングを実施した結果、「走り」のリズムを操作できることが明らかになりました。また、競技未経験の教師や指導者でも容易にスポーツ現場や部活動で用いることができ、かつ指導者の能力に依存しないため、指導のばらつきが生まれにくい利点もあります。さらに、音による指導は言語を使用しないため、幼児や国外の児童にも適用可能であり、国際的な研究成果が期待されます。

私自身、中学の頃から本格的に陸上競技をしており、現在も競技を続けながら都内中高生の陸上部に指導員として携わっています。私が早稲田大学での学生生活や研究活動、ジュニア期の児童を対象とした陸上教室などの課外活動で培ってきた経験やノウハウ・知識を、指導者という立場から選手や生徒に還元し、国際的に活躍できる有望な人材を育成することが私の指導者としての目標です。これからも、研究者・競技者・指導者の三足のわらじで活動していきます。

写真左:2021年静岡国際陸上での試合。私が専門とする400メートルハードルは走力や持久力、ハードル技術など多くの能力が必要とされるため、短距離種目で最も戦略性が高い競技といわれています
写真右:社会人時代に米国のロサンゼルスを拠点としている陸上のプロクラブチームに留学した際、チームメイトと。トリニダード・トバゴ共和国出身で、2013年モスクワ世界陸上男子400メートルハードルで優勝したJehue Gordon選手です

ある日のスケジュール
  • 06:00 起床、朝食、読書(趣味です)
  • 07:00 出発
  • 09:00  ゼミ(研究室のメンバーで研究の進捗(しんちょく)状況報告や、最近のトピックについて議論しています。夏休み中も継続的に行っていました)
  • 11:00  研究 (自分の研究データの解析や論文作成に加え、学部生の卒論のサポートもしています)
  • 12:00  昼食
  • 13:00  研究
  • 15:00  練習開始 (競走部の選手と一緒にトレーニングを行っていて、後輩たちからかなり良い刺激をもらっています)
  • 19:00 帰宅・夕食・入浴
  • 21:00 研究(時間が余っているときは就寝30分前まで作業をしています)
  • 22:30 就寝

 

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