とある部署で新型コロナウイルス感染症対策関係業務を行っている。従来は、学生が行うさまざまな活動を支援する立場にあったはずなのに、今は学生たちに、あれはダメ、これはダメと「してはいけないこと」を伝え、行動を制限する毎日を送っている。学生たちが、食堂では黙食をしているかを確認し、廊下やラウンジでは常にマスクをしているかを確認し、外している学生には声を掛けていた。今までは、私とすれ違う際にあいさつやちょっとした雑談をしていた学生たちが、あるときから、こちらの存在に気付くと、マスクの着用について指摘されることを嫌がり、私を避けていることに気付いた。学生との心の距離が、ものすごく離れてしまったことに、寂しさを覚えた。
感染を防ぐことは、学生自身の健康を守ることだけでなく、同居する家族の命を守ることにもつながる。命を守ることが最優先であることは言うまでもないが、その裏では、大学生の大切な4年間の「経験」が失われている。多くのことを制限されて卒業していく学生たちが、数年後に学生生活を振り返り、何を思うのだろうか。
感染症が広まり始めて3年目。入学して3年間で卒業に必要な単位の多くを取り終えてしまう学生もいる。サークル活動は就職活動もあり3年間で終える学生が多い。附属や系属の高校生たちも3年間で卒業してしまう。あらためて、「してはいけないこと」ではなく「今できること」を見つけていくべきだと痛感している。
(T)
第1129回