長年高等学院の独語科で教鞭(きょうべん)を執り、学院長も務められた伴一憲先生が先日亡くなられた。伴先生は私の高等学院時代の恩師であり、彼の遺(のこ)した言葉はたくさんあるが、その中でも特に印象に残っているのが「若者は全てにおいて正しい」というものである。これは極端に聞こえるかもしれないが、今を生きる若者こそが未来を創る存在であり、社会の運命を決定するのだという考えに基づくものである(と私は解釈している)。
現在の日本では急速に少子高齢化が進んでいる。2011年の国土交通省報告(「『国土の長期展望』中間とりまとめ概要」)によれば、1970年に24.0%であった総人口に占める若年人口比率は、2050年には8.6%になるという(※1)。つまり、これからの日本には世界でもまれな水準での「超少子高齢化社会」となる現実が待ち受けている。
この超少子高齢化社会の日本で、一体誰が社会を動かしていくのかを考えるとき、それは間違いなく「若者」という存在でなくてはならないだろう。伴先生は、若者たる高校生のあらゆる科外活動を常に全面的に肯定し、ややもすれば大学への単調な通過点になりがちな高校の3年間を充実させるべく生徒を鼓舞し続けていた。振り返れば、私自身も先生の言葉に励まされ、さまざまな活動に打ち込んだ一人であり、高校生時代の経験が今の人生を決定づけるものとなった。
ご縁をいただいて、私は昨年度から早稲田大学に専任教員として奉職することとなった。教員という立場から、これからの未来を創る若者をどのように勇気づけ、発破をかけることができるのか、試行錯誤しつつ模索する日々である。
(※1)2017年の国立社会保障・人口問題研究所報告(『日本の将来推計人口(平成29年推計) 結果の概要』p.17)によると、同割合は10.6%とされている。
(S.S)
第1128回