数理的な手法を適用し、効果的なマーケティング活動を行うための研究
大学院創造理工学研究科 修士課程 2年
坪井 優樹(つぼい・ゆうき)
「ビッグデータに機械学習モデルを適用し、分析を通じて獲得した消費インテリジェンスに基づいた、データドリブンな意思決定を見据えたAI技術研究」と聞いて、皆さんはどのように感じるでしょうか? 「なんだか難しそう」「意識高そう」「外資系コンサルタントが言っていそう」などのイメージを持たれるかもしれません。一方で、これら一つ一つの言葉は近年よく耳にすることも多いのではないのでしょうか。実は私の研究室では、上記のような研究を行っています。まず皆さんに興味を持って頂くために、あえてとても格好つけて書いてみました。分かりやすく言い換えると「膨大なデータに数理的な手法を適用し、分析を通じて消費者に関する新しい知見を発見し、これに基づいた効果的なマーケティング活動を行うための研究」となります。このように説明されると少しイメージが湧いてきたのではないでしょうか。
例えば、AmazonやYouTubeで「この商品を買った人はこんな商品も買っています」「あなたへのおすすめ」などと、他の商品やアイテムが自動的に表示されると思います。これは、裏で各ユーザーの購買・閲覧履歴データなどに基づいて推薦すべきアイテムを数理的な手法で予測しているからなのです。私の研究室では、このような予測・分析のための数理的な手法の研究を行い、学術的な価値を見いだしつつ、共同研究などを通して実際にビジネスに貢献することを目的としています。そのため私たちは、優れたデータエンジニアリング力だけではなく、ビジネス課題の理解から今後の方向性の提案までができる、総合的に優れた研究者でなければなりません。これが非常に難しいのですが、研究をしていて最も面白い要素の一つでもあります。
現在私は、機械学習と呼ばれる、最先端の数理的な手法を活用したデータ分析による施策の効果検証に関する研究をしています。きっかけは学部生の頃の純粋な興味で、研究室の先輩方が導いたデータに基づく施策を仮に実施した場合に、その施策はどのようなユーザーに、どれくらい効果があるのかについて気になったことからでした。
実際に研究を始めると、なかなか奥が深いテーマであることが分かりました。例えば、限られたユーザーにクーポンを配布することを想定した場合、せっかくならば高い効果を見込めるユーザーに配布したいと考えます。つまり、「クーポンがなくても買ってくれるユーザー」ではなく、「今のままであれば買わないが、クーポンがあれば買うユーザー」に配布することが望ましいはずです。私の研究では、後者がどのような特徴を持つのかを特定し、適切なユーザー選定や施策の改善につなげることを目的としています。そしてそのための手段として、データを活用して、施策が各ユーザーにどの程度効果があったのかを推定します。この研究は一見シンプルに思えますが、現実問題として各ユーザーに対してクーポンを配布した場合と配布しなかった場合の両方の結果の獲得が不可能であるため、単純に比較が行えず、実は非常に難しいテーマとなっています。
写真左:筆者の研究室の机。いつも広々とスペースを取り、ディスプレイやiPadを用いて作業をしています
写真右:最近はPayPayでの決済に対応し、遅くまで研究している学生向けに研究室内で食品を販売しています
そこで現在私はこのような問題に対処するため、クーポンを配布したユーザーに対しては配布しなかった場合の結果を、配布しなかったユーザーには配布した場合の結果を、つまり「もし~だったなら (What if )」の結果を予測することによって施策効果を推定する手法の開発をしています。研究がなかなか進まず、『ドラえもん』に出てくるひみつ道具や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンのようなタイムマシンがあれば両方の結果が得られるのになあと思うこともありますが、先輩や同期、先生など、多くの方に支えられながら取り組めているため、いつも楽しく研究ができています。
修士1年次には、3回の国内学会と1回の国際学会に参加しました。残念ながら全てオンラインでの開催となりましたが、多くの経験を得ることができました。今後もビジネスで有益となるようなAI(人工知能)技術研究を行っていきたいと考えています。
「もしあなたがデータサイエンスは面白そうだと感じたなら」、後藤正幸研究室にてお待ちしております。

研究室前の掲示板は、先輩方の痕跡で混沌(こんとん)としています
ある日のスケジュール
- 09:00 起床
- 10:00 ゼミ(午前中のゼミですが、オンラインなので個人的には助かっています)
- 13:00 昼食
- 14:00 通学
- 15:00 後輩の研究相談(後藤研究室では、院生が学部生の研究をサポートする体制をとっています)
- 17:00 研究(分析モデル構築、データ分析、学会の予稿やゼミ資料などの作成)
- 20:00 夕食
- 21:00 研究(自宅で集中できないタイプなので、できる限り研究室にいます)
- 24:00 帰宅・入浴など
- 25:00 就寝(研究やその他の作業は研究室で全て済ませ、帰宅後はすぐ寝られるようにしています)

高田馬場駅戸山口近くのラーメン屋「廻麺 鶏千(かいめんとりせん)」。週替わりの限定メニューが魅力で、自分へのご褒美にしています