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ライブ好きから世界一の企業を目指して 早大生起業家の熱い思いとは?

「Webサービスを開発するだけでなく、より大きな課題を解決することにつなげたい」

創造理工学部 3年 堤 真聖(つつみ・まさと)

西早稲田キャンパス51号館前にて

参戦した音楽ライブを記録するアプリを中心に、Webサービスなどの開発・提供を行う株式会社ウォールオブデスを立ち上げ、代表取締役CEO・CTO(最高技術責任者)を務める堤真聖さん。音楽ライブ管理アプリ「OTOAKA」をリリースするなど、精力的にサービスを開発・提供しています。そんな堤さんを突き動かしてきたのは、「起業」と「音楽」への熱い思いでした。今回のインタビューでは、在学中に起業に至った経緯や、自身が感じるライブの魅力、そしてこれから追い求めていきたい目標などを聞きました。

——堤さんは「OTOAKA」というアプリを開発しています。どのようなアプリなのですか?

私が開発・提供している「OTOAKA」は、参戦した音楽ライブを記録することがメインのアプリです。自分が参戦したライブの履歴を登録して、ライブの感想を投稿したり、さらにはその感想を他のユーザーにシェアできるのが大きな特徴です。普通のメモ帳とは異なり、友達と「つながる」部分を重視しています。

一方で「OTOAKA」は、つながるための機能を重視する一般的なSNSと異なり、音楽に特化することによって、音楽を楽しむためのさまざまな機能も盛り込んでいます。例えば、アプリ内で音楽を再生することはもちろん、一人一人が投稿した感想をアーティストごと・ライブごとに表示することで、共通のアーティストのファンに出会うことができるようになっています。また、「投げ銭」で推しのアーティストを応援する機能(snack)も最近追加されました。ぜひ、参戦したライブを記録する楽しさを体験してほしいと思います。

写真左:「OTOAKA」は、現在iOS向けに提供されている
写真右:堤さん一押しの機能である「snack」。アプリ内で貯まっていくポイントを使って、アーティストを応援したり、口コミを上位に表示させて好きなライブを紹介したりできる

——アプリを開発するだけであれば個人でも可能ですが、堤さんは会社を立ち上げています。どうして起業することに決めたのですか。

起業家交流会にて。他の起業家に向けて事業内容を説明した

いつか起業したい、という気持ちは実は中学生くらいからありました。実際に起業することを決心したのは、自分がどのような起業家を目指すべきか定まったタイミング。私は起業家には二つのタイプがあると考えています。一つは、トレンドをつかんで、お金になりそうなことをビジネスにするタイプ、もう一つは、自分の好きなこと・やりたいことをビジネスとして形にするタイプ。私自身は後者だと感じたので、どうすれば自分が好きな音楽やライブを実際のビジネスにつなげることができるかを考え始めました。

ではなぜ会社をつくったのかといえば、個人開発には限界があるからです。個人事業主と法人とでは、売上金額が明らかに違います。また、大きな額の投資を受けるためにも法人化して、信頼を得ることが大事になります。ただアプリやWebサービスを開発するだけでなく、もっと大きな課題を解決することにつなげたいと心に決めたので、会社を立ち上げることにしました。

正直、会社の経営は大変なことばかりです。どのようにユーザーを増やすか、誰を社員として雇うか、投資家を募るには何をすべきか…考えることは多いですが、企業価値を最大化することを意識して、2020年の12月に起業してから今までやってきました。2021年12月には、バリエーション(企業価値評価)が1億円となり、1,300万円の資金調達を行うことができたので、スタートアップの経営としては一定の手応えを感じています。「OTOAKA」のサービス自体でも、既に3,000人を超えるユーザーに利用してもらうことができています。何より、継続して感想を投稿していただけていることが経営の励みになっています。

——起業した2020年は、ちょうどコロナ禍で音楽ライブが難しい時期だったのではありませんか?

コロナ禍が始まってすぐは、本当に一切ライブが開催できないという状況でした。だんだん感染者数も落ち着いてきて、私が会社を立ち上げた12月は、次第にライブも再開されて、これから頑張っていこう、という時期だったんです。だから、株式会社ウォールオブデスとして、「OTOAKA」などを通じて、音楽ライブを全力で応援していきたいと考えていました。

以前参戦したフェスでの一枚

また、一音楽ファンとしての感覚になりますが、やはりアーティストの演奏を生で観られるのは魅力的です。特に私が好きなのは、「魂」が感じられる作品なのですが、それは演奏を生で聴かないと分からないもの。さらに、アーティストとの距離だけではなく、ファン同士の距離が近いこともライブの大きな魅力だと思っています。音を浴びながら、知らない人たちで共鳴し合い盛り上がる瞬間。そんなライブでのファン同士のつながりを後押しするための一つのツールを作りたいと思ったのも、「OTOAKA」を開発した動機でした。

——起業する学生は増えていますが、そう簡単にできるものでもないと思います。

「好きなこと」と「できること」を結びつけるのが大事かもしれません。私の場合、音楽ライブに行くのが好きでしたし、プログラミングは中学生の頃から勉強していて得意でした。今も大学で学んでいます。

起業にあたって私が一つ幸運だったのは、ちょうど大学生になった頃に、友人が立ち上げたベンチャー企業でエンジニアとして働くことができたことでした。会社を立ち上げ経営していくとなると、考えないといけないことが多くありますが、起業の正攻法を実務の中で学ぶことができたのは大きかったですね。

Rainbow Town FM「ナイスク学園」(2022年2月4日放送)の収録。学生起業家のゲストとして登場した

代表取締役を務めていますが、開発者としてのこだわりももちろんあります。ここは特に理工系の学生に興味を持ってもらいたい部分ですが(笑)、「OTOAKA」は珍しい技術をいくつも使って作成しています。例えば、サービス全体を「Swift」という一つのプログラミング言語で組み立てたり、「AWS」というクラウドサービスを利用してアプリケーションを提供したり…質の良いサービスを提供するために意識しているのは、ポテンシャルの高い技術を活用することです。

——これから起業を目指す学生にメッセージをお願いします。

やはり「自分ができること」を一つでも作ることが重要です。私の場合、それはプログラミングでしたが、営業でもデザインでも何でも良いと思います。できることが挑戦のきっかけになりますし、何より心が安定します。また、起業すると「やりたいこと」を模索し続けなくてはなりません。投資家が常に「なぜそれをあなたがやるの?」と問いかけてくるのも理由の一つですが、そもそも起業は自分がやりたいことを実現する「方法」であることを忘れてはいけないんです。自分のやりたいことを明確にしていくことが必要だし、そうしないと押しつぶされてしまうようにも感じます。

私もこれから、「OTOAKA」を成長させていくのはもちろん、もっとさまざまなことに挑戦していくつもりです。プラットフォーマーとして世界一になり、そこから好きな音楽に還元するという目標もあります。今はまだ力不足だと感じていますが、できることを一つずつやっていき、大きな目標の実現につなげたいと考えています。

第810回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
大学院法学研究科 修士課程 1年 植田 将暉

【プロフィール】
神奈川県出身。早稲田大学高等学院卒業。ライブに行くのが好きで、今年はこのままだと30回は行くことになりそうだとか。一番聴くのは邦楽ロックで、「MY FIRST STORY」の大ファン。少年漫画の主人公のようなバンドと一緒に自分も成長しているように感じるという。最近推しのバンドは「アスノポラリス」と「ハルカミライ」。「アスノポラリスは広島県出身のバンドで、東京でライブがあるたびに足を運んでいます。スタートアップの起業家として、親近感を覚えますね。ハルカミライは、ライブで観たい一番のバンド。はっちゃけるパフォーマンスにすごくワクワクさせられます」(堤さん)

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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