2022年3月に早稲田大学を卒業・修了する皆さんへ、各学術院長・学校長からのメッセージを贈ります。これらの言葉を胸に、夢に向かって歩んでください。
他者との間での自由
政治経済学術院長
齋藤 純一(さいとう・じゅんいち)
「人が自由であろうとするなら、まさに主権こそ放棄されねばならない」(ハンナ・アーレント)。自分が支配する範囲を押し広げたり、逆に自分の世界に引きこもることで人は自由になることはない。一方的にコントロールしたり、されたりしない関係をさまざまに築いていってください。
勇気を失うことは、すべてを失うことである
法学学術院長
箱井 崇史(はこい・たかし)
「金を失うのは小さいが、名誉を失うのは大きい。」に続く部分で、チャーチルからの引用だがオリジナルは不詳。金や名誉と違い、勇気は与えられるのではなく自身の内面にある。今後の人生で出くわす分かれ道や壁を、早稲田魂をもって進み、乗り越えてほしい。
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと気づいているほうがいい
文学学術院長
嶋﨑 尚子(しまざき・なおこ)
「正しいことを言うときは 少しひかえめにするほうがいい」に続く詩人 吉野弘「祝婚歌」の一節です。現代の不毛な対立と対話の不成立の多くは、言葉の暴力に因(よ)ります。正しいからこそ声高になりがちですが、正論それ自体が暴力的であると、再認識したいですね。
ことばでは納得しても感覚で納得できない部分を切りすてない
教育・総合科学学術院長
若林 幹夫(わかばやし・みきお)
社会学者の見田宗介の言葉です。学問や知は言葉によっていますが、言葉にならない思いや感覚と共に、人は世界を生きています。自分の、他の人たちの、そしてとりわけ弱い立場の人たちの思いや感覚をすくい取るために、みなさんが学んだ学問と知を活かしてください。
春宵多旅夢
(張喬「荊楚道中」)
商学学術院長
横山 将義 (よこやま・まさのり)
後世、21世紀の大きな出来事と記録されるであろうコロナ禍の中、社会の至るところで変革が生じています。未知の世界に不安を抱いている方が多いと思いますが、このようなときだからこそ夢をもって人生の旅を歩んでください。ご活躍をお祈りします。
進取果敢に前進する
理工学術院長
菅野 重樹(すがの・しげき)
先を見て進むことを常に意識してください。そして、失敗を恐れずに前向きにチャレンジすることが創造につながります。エジソンも“I am not discouraged, because every wrong attempt discarded is another step forward.”と言っています。
教育は人生の準備ではなく、人生そのものである(デューイ)
社会科学総合学術院長
早田 宰(そうだ・おさむ)
アメリカの哲学者、教育者の言葉です。学びは一生です。食べること、寝ることと同じように、学ぶことなしには生きられません。学びが楽しければ人生も楽しく、学びが豊かになれば人生も豊かになります。これからは学校のかわりに社会があなたの学び場です。
人と人、知識と知識をつなぐ
人間科学学術院長
三嶋 博之(みしま・ひろゆき)
人と人の出会いや知識と知識の融合は、それらが単独であったときには見えなかった新しい価値を創発します。早稲田大学での出会いと学びが、皆さんのこれからの出会いと学びにつながり、さらに豊かな未来の価値の創出に結実することを期待します。おめでとう!
人生が何をわれわれから期待しているかが問題なのである
スポーツ科学学術院長
土屋 純(つちや・じゅん)
あまりにも有名なV.E.フランクルの「夜と霧」から。与えられることを期待するのではなく、常に自分らしく、誠実に、あなたの人生からの問いに応えていってください。ご活躍を!
Without veracity and sincerity, politeness is a farce and a show.
国際学術院長
池島 大策(いけしま・たいさく)
新渡戸稲造の『武士道』(原書はInazo Nitobe, Bushido: The Soul of Japan.)第Ⅶ章より。誠実さは、古今東西を問わず人間関係の基本とされ、孔子も『中庸』で誠を説いています。今後も信義誠実 (bona fides)をもって人との信頼関係を構築していきましょう。
「まだ半分あるぞ」
芸術学校長
古谷 誠章(ふるや・のぶあき)
吉阪隆正が大学紛争中の1969年7月に理工学部長として発した告示。グラスに半分のワインを手に「まだ半分残っているぞ」とニコニコする男と、「もう半分しかないや」と悲しがる男が描かれている。吉阪はこのニコニコする男の説に従いたいと言っています。