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「ちぐさ賞」を受賞 早大生ジャズテナーサックスプレーヤー

「ジャズはこういうものだよ、と音で伝えられるようになりたい」

文学部 4年 中根 佑紀(なかね・ゆうき)

10月3日に行われた、若手ジャズミュージシャンの登竜門と称されるコンテスト、「第8回ちぐさ賞ライブ選考会(以下、ちぐさ賞)」において、サックス奏者として見事最優秀賞である「ちぐさ賞」を受賞した中根佑紀さん。11月10日にはNHK横浜放送局のラジオで生放送ライブも行い、2022年3月にはレコードリリースも決定。そんな中根さんに、サックスを始めたきっかけから所属サークルでの活動、そこで出会った仲間との演奏、ちぐさ賞受賞までの道のり、テナーサックスに対する思いなどを聞きました。

――まずは「ちぐさ賞」受賞、おめでとうございます。受賞したときの気持ちを聞かせてください。

ありがとうございます。正直びっくり、という感じです。でも、実は自信はぼちぼちありました(笑)。ちぐさ賞というのは、日本に現存する一番古い「ジャズ喫茶ちぐさ」(横浜野毛)のオーナーであった故・吉田衛さんが、若いミュージシャンを育てたいというコンセプトで2013年から行っているコンテストです。応募しようとしたのが2021年6月ごろ。新型コロナウイルス感染症拡大の影響でサークル活動の拠点である学生会館は閉まっていて、練習はできなかったのですが、そのときから計画は練っていました。課外活動が再開し始めたらすぐに学生会館の練習室を予約して練習を始めました。

一次選考は演奏動画による審査でしたが、その動画を撮ろうと思ったときから、サークルの友達や仲間の存在が大きかったです。コンテストでの演奏を快く引き受けてくれたり、演奏の相談にもいつでも応えてくれました。ちょっとしたことで毎日のように連絡を取っても嫌な顔をせず、向き合ってくれたことが支えになりました。

写真左:日本ジャズ界の伝説的ピアニスト、今田勝審査委員長と、授賞式で握手の瞬間。「ご機嫌だったねぇ」との言葉をいただいたという(写真提供:ちぐさ賞ライブ選考会)
写真右:ちぐさ賞本選、演奏中の1枚。今にも折れそうな腰の角度が、尊敬するジョー・ヘンダーソンを意識したものだそう

——中根さんがサックスを始めた理由や、ジャズにはまったのはなぜですか?

写真家の方に撮ってもらったというお気に入りの一枚

3歳からエレクトーンを習っていて、その先生の一人がジャズやファンク、アメリカンポップスなどが好きな方でした。あるときの課題曲に有名なジャズ曲の『Take The “A” Train(A列車で行こう)』をもらい、弾いてみると、かっこいい! と感動したんです。特に右手のメロディがかっこよくて、先生からそれがテナーサックスのパートだと教えられ、そこで初めてテナーサックスという楽器を知りました。テナーサックスでジャズならこの人がいいんじゃないか、などアドバイスもいただき、ジャズを聴き始めました。

高校は地元愛知県の公立では3校しかないビッグバンド部があるところへ進学し、本格的にテナーサックスを始めました。そのビッグバンド部は、定期演奏会が年に一回あるほか、地域の大会に出場したり、コンサートによく呼ばれるようなところでした。そのときの顧問の先生が熱狂的にジャズが好きな方で、今思い出しても、よくこんな曲を演奏したな、というほどマニアックな曲をたくさん演奏しました。この顧問の先生の影響も大きいと思います。

——早稲田大学への進学を決めたのはなぜですか?

気付いたら高校ではジャズとサックスにどっぷりはまっていて、何とかして大学でも続けたいと思っていました。そんな中、早稲田大学には有名なジャズのサークル、モダンジャズ研究会(公認サークル)があると聞いて、ジャズを続けるなら早稲田でしょう、と思ったんです。それまでは愛知県内で進学しようと考えていたのに、急に高校3年生の4月になって「早稲田に行きたい」と親や高校の先生に言ったので、驚かれました(笑)。それと、文学部は有名なジャズ奏者を輩出しているとも聞いたので、ジャズに密接に関われるのではと思い文学部を志望しました。そこからの一年間は、サックスを押し入れの奥に封印し、プレイリストからもジャズを削除して、勉強に集中しました。ジャズを聴いてしまうとサックスを吹きたくなるし、サックスを吹くとジャズを聴きたくなるので。どうしても行きたい、早稲田に入学してモダンジャズ研究会に入りたい! という一心でした。

ちぐさ賞ライブ選考会で披露した中根さん作曲のオリジナル曲、『A Letter to Someone』のメモ。実はSomeoneにはモデルがいるそう

——サークル活動と大学生活について教えてください。

1年生のころはサークルと大学生活が両立できるよう頑張っていました。でも、サークルを含む音楽活動の割合が次第に増えていって、教室よりも学生会館の練習室にいることが多くなり、今では教員の方々よりも学生会館のインフォメーションセンターの方に顔を覚えてもらっている気がします(笑)。サークルは、人数だけでなく、やる曲も時代も異なり、いろいろなことに触れられるということで、ビッグバンドのハイソサエティ・オーケストラ(公認サークル)と、小編成で演奏するモダンジャズ研究会の2つに入っています。ハイソサエティ・オーケストラの一員としては、2019年に国際ジャズオーケストラフェスティバル「ステラジャム」の最優秀賞と優秀ソリストを受賞しました。

大学では文化構想学部の授業で、「民族音楽論」とか、「アメリカン・ミュージカル表現史」「音からみることばと文化」(いずれも文化構想学部設置科目)のような音楽について学べる授業が特に面白かったです。違う学部の授業も取れるのが早稲田大学の魅力ですね。また、大学で音楽仲間ができた、というのが大きいです。1年生の時の必修科目で仲良くなった友達がライブに遊びに来てくれたりしています。

レギュラーカルテットメンバーとライブ後の1枚

——ジャズに初めて触れる早大生に、お薦めの曲を教えてください。
  • ソニー・ロリンズ 『What’s New?』(1962年/RCAビクター)から『Don’t stop the carnival』
  • ジョー・ヘンダーソン 『Lush Life The Music of Billy Strayhorn』(1992年/Verve)から『Take The “A” Train』
  • ビル・エヴァンス 『Trio64』(1965年/Verve)から『Santa Claus Is Coming to Town』

自分の中で揺るぐことのないトッププレーヤーたちの代表曲です。越えられない壁があると思っているけれど、壁に一歩でも近づきたい、近づくにはどうしたらいいかを考えながら演奏しています。自分のプレイリストには、気が付けば200曲ものジャズが入っています。今回紹介した曲じゃなくても、ジャズには名盤と呼ばれるものがたくさんあるので、そういうところからかじってもいいし、今なら「Apple Music」や「Spotify」などの音楽ストリーミングサービスで、“必聴ジャズ”とかを聴いてみるのもお薦めです。プロの人が選んだものなので、いいものが入っていると思います。

——今後の目標を聞かせてください。

ちぐさ賞を受賞したことで、ありがたいことに演奏依頼がたくさん入ってきているので、気持ちだけでもプレッシャーに負けずに演奏したいです。日本のジャズシーンをつくり上げてきた人たちについていけるように努力していきたいし、もっとみんなにジャズを知ってほしいと思います。ジャズって音楽の中でも辺境な、メジャーなジャンルではないかもしれないのですが、こんなにもいい音楽なんだよ、と伝えていきたいです。ジャズが好きな人だけじゃなくて、「どんな音楽なの?」と聞かれたら、音で伝えていけるようなプレーヤーになりたいです。

12月20日(月)表参道ZIMAGINEにて、カルテットで出演予定。初出演のライブハウスのためメンバー一同楽しみにしているという

第802回

【プロフィール】
愛知県出身。市立向陽高等学校卒業。趣味を広げる一つに音楽があるという。その他には、映画やアニメ作品を見るのが好き。ディズニーのファンで、パーク内で流れてくる音楽やキャラクターの声が好きで、自宅の本棚にはディズニーで買ったお土産専用のコーナーもあるそう。今後も都内を中心に精力的に音楽活動をしていく予定。2022年1月10日(月・祝)には横浜野毛のJAZZ SPOT DOLPHYにてライブレコーディングを行う。詳しくはSNSをチェック!

Twitter: @tenor_ukiuki15
Instagram: @tenor_ukiuki15

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日はほぼ毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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