
撮影:小野 奈那子
早稲田大学総長 田中 愛治(たなか・あいじ)
卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
皆さんの多くは 2021年4月に入学されたことと思います。すなわち、皆さんのうち多くの方はコロナ・パンデミックが日本に到来した1年後に早稲田大学に入学され、最初の1年間はまだオンライン授業が中心で十分な学生生活が送れなかったことと推測しています。大学院を修了する方たちも同様の苦労をされたことと思います。
しかし、その中で皆さんは、早稲田祭を対面とオンラインのハイブリッドで開催し、次第に全面的に対面での開催へと回復させたように、さまざまな形で創意工夫を重ねて困難を克服し、この3月に晴れて早稲田大学を卒業するまでに成長されました。このような厳しい環境を乗り越えてきた皆さんは、まさに「たくましい知性」を育まれたのだと思います。そのことに自信を持ってください。
同時に、皆さんは早稲田で学修した論理的な考え方や、学問を理解する力を身に付けたことにも自信を持ってもらいたいと思います。この4年間の早稲田大学の教育の質ならびに研究の水準は、非常に高いものであったと自負しています。また、学修したことに加えて、皆さんは自分の頭で考える努力を、先輩の世代以上にしてきたと思います。ですから、皆さんには、早稲田大学で学んだことに自信を持って、社会を生き抜いてもらいたいです。
ただし、自信過剰になってはいけません。世界を見れば、例えばウクライナやパレスチナのような、早稲田よりもずっと厳しい環境で学んでいる学生も数多くいます。ただ、早稲田の皆さんは、自分とは異なる環境の人々のことを思いやる「しなやかな感性」も育んできたと思います。建学以来「誰にでも居場所のある大学」という伝統があることからも明らかなように、今日の言葉で言えば、多様性(ダイバーシティ)を大切にし、自分と異なる人々を包摂(インクルージョン)することが早稲田の強みの一つになっているからです。
卒業する皆さんは、ご自身が受けた学問と教育の質に自信を持ち、同時に他者を理解し思いやる気持ちを大切にして、今後の人生を切り開いていってください。時々は母校に戻ってきて、今よりも進化して輝いている早稲田大学を、今よりも成長して輝いている皆さんに応援していただきたいと思います。
ご卒業、本当におめでとう!