Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

小宮山監督×金森助監督 プロ経験豊富な指導陣が目指す早稲田野球とは

東京六大学野球・早慶戦で声援を届けよう
5月27日(土)・28日(日)は神宮球場へ!

4月から始まった東京六大学野球2023春季リーグ戦。コロナ禍では声出し応援や観客数などに制限が設けられていましたが、今シーズンからは以前の応援席が復活。従来のように観客と応援部が一緒に応援できるようになりました。そんな中、就任5年目を迎えた小宮山悟監督率いる早稲田大学野球部に、東北楽天ゴールデンイーグルスをはじめ、プロ・アマで多くの指導経験を持つ金森栄治氏が助監督として参画。チーム一丸となって試合に臨んでいます。

加藤孝太郎選手(人間科学部4年)と熊田任洋選手(スポーツ科学部4年)の選手対談に続き、小宮山監督と金森助監督へインタビュー。名打撃コーチとして知られる金森助監督が加わりパワーアップした指導陣が目指すものとは何か、語っていただきました。さらに、早稲田ウィークリーではチームを支える学生コーチにも注目。学生コーチの取りまとめ役でもある肥田尚弥新人監督に話を聞きました。

※取材は2023年4月25日に行いました。

INDEX
▼小宮山悟監督×金森栄治助監督 伝統の重みを感じながら早慶戦へ
▼チームを支える学生コーチ。現地観戦では三塁コーチャーにも注目!

小宮山悟監督×金森栄治助監督 伝統の重みを感じながら早慶戦へ

(左から)小宮山監督、金森助監督

小宮山 悟(こみやま・さとる) 監督
金森 栄治(かなもり・えいじ) 助監督

基本を身に付ければ、どんな場面でもやっていける

――今季から金森栄治さんが助監督に就任しました。その経緯を改めて教えてください。

小宮山:そもそもで言うと、僕が千葉ロッテマリーンズの選手時代、金森さんが敵チームのコーチとして何人もの選手を好成績に導く様子を目の当たりにしていました。その金森さんがチームを離れるタイミングで、当時のバレンタイン監督に「いい打撃コーチがいるからなんとかロッテに呼んでくれ」とお願いしたこともあったほどなんです。

その時は実現しませんでしたが、昨年の11月頃、「金森さんがコーチを務めていた東北楽天ゴールデンイーグルスを離れ、早稲田でバッティングの研究をしたいと言っている」という話を耳にして、すぐに金森さんに連絡を取り、なんとか説得して、今年からご尽力いただいています。

――金森助監督は卒業以来となる「WASEDA」のユニホーム、いかがでしょうか?

金森:学生の頃は分からなかったですけど、卒業して何十年もたった今の方が先輩方によって築かれてきたユニホームの重みを痛感します。自分なんかで大丈夫かな、と思う時もありますけど、小宮山監督の力になれれば、ということで毎日やっています。

試合前のあいさつの様子。(左から)日野愛郎部長(政治経済学術院教授)、小宮山監督、金森助監督(写真提供:早稲田スポーツ新聞会)

――小宮山監督から見て、助監督としての金森さんはいかがですか?

小宮山:私自身は、バッティングは「正解がないもの」だと考えています。ただ、正解はないけども理論や理屈はある。それらをどれだけ学生が理解した上でバッティングをするかが大事です。

金森さんに指導をお願いした理由の一つは、その「理論」の部分。そしてもう一つ、金森さんの学生時代について聞くと、どの人も口をそろえて「あんなにバットを振った人間はいない」と言うんです。バットを振って答えが出た成功例がここにいる、ということも含めて、今の学生に教えてほしい。そういう狙いなんです。

実際、本当にシンプルなことしか教えていないと思います。そのシンプルなことを、学生たちが「本当に大事なことなんだ」と認識してバットを振れるかどうか。学生たちも最初は半信半疑だったはず。でも、目に見えて結果が出ている選手も既にいますから、その成功例を見て、他の学生もいい影響を受けてくれればしめたものです。

試合中、吉納翼選手(スポーツ科学部3年)に話し掛ける金森助監督(写真提供:早稲田大学野球部)

――今、「シンプルなことしか教えていない」というお話がありました。金森助監督が具体的に選手に送ったアドバイスなどを教えてください。

金森:本当に当たり前のことしか言っていないんですよ。「ストライクを振ってボールを見送れ」「下半身で打て」「高めを打て」と。よく例えに出すんですけど、算数ならまず基本の足し算・引き算ができるようになり、九九を覚えて、そこからより複雑な掛け算や割り算、分数の計算ができるようになるじゃないですか。

バッティングでも、まずは基本を身に付ける。後はその基本をベースに、試合で打席数を重ねることで、自分の色・個性が出てくる。とにかくシンプルな基本を身に付けてほしいだけ。難しいことは何も言っていないです。

社会に出ても同じだと思うんです。人間として、社会人としての基本を身に付ければ、どんな場面でもやっていけるはず。野球もまずは基本ありきでやってほしいですね。

「さすが早稲田だ」と言ってもらえるような戦いを

――投打の軸、エースの加藤孝太郎選手(人間科学部4年)の状態や、首位打者を争う熊田任洋選手(スポーツ科学部4年)はいかがですか?

小宮山:加藤については昨年1年しっかり投げているので、東大戦・立教戦での2勝は当たり前くらいにしか思っていないです。ただ、ここからが本当の勝負。序盤に打線が打ってくれての2連勝でしたが、この先は投手陣の踏ん張りが重要になります。

熊田は卒業後のプロ志望が強い選手です。この春の成績が重要だということを本人も自覚して、冬場の練習から、どうすればよくなるかを考えながらやっていました。その成果が出ていると思うので、何よりですよね。

写真左:今年9年ぶりに行われた米国・ロサンゼルス遠征にて。USC(南カリフォルニア大学)でトレーニングする加藤選手
写真右:USCの室内練習場で打撃練習をする熊田選手(いずれも写真提供:早稲田大学野球部)

――森田朝陽主将(社会科学部4年)に期待することは?

小宮山: 1年生のときから、普段の練習でも本当に死に物狂いでやる選手です。それこそが早稲田の野球部に欠けていた部分だと思い、(森田)朝陽にキャプテンの10番を背負ってもらうことにしました。ベンチでも誰よりも声を出しますから。非常にいい雰囲気のチームになっていますね。

写真左:2023年3月、沖縄・浦添キャンプで選手たちに指導をする小宮山監督(森田主将は左から2人目)
写真右:試合中、中村将希選手(教育学部4年)に声を掛ける小宮山監督(いずれも写真提供:早稲田大学野球部)

――では、新体制で迎える早慶戦への意気込みをお願いします。

東伏見キャンパスにある早稲田大学野球部・安部寮の玄関脇、「野球の父」と呼ばれる野球部初代部長・安部磯雄の石碑前にて

小宮山:これはもう、早稲田のアイデンティティーですから。早慶戦に勝つか負けるかで、その先の人生も決まる。それくらいのつもりで戦いに挑まなければならない。どれだけライバルの慶應相手に早稲田のすごさを見せつけることができるか。「結果として勝ちました」では納得してもらえない。「さすが早稲田だ」と言ってもらえるような戦いをしたいと思っています。

金森:やっぱり特別ですよね。早慶戦はリーグ戦の最後を飾る試合で、テレビ中継もある。学生時代よりも卒業して何年もたつと、早慶戦がいかに特別かよく分かります。先輩方が築いてきてくれた重みの上に立ち、伝統を汚さず、慶應相手に堂々と戦って、質実剛健な勝ちをつかみたいですね。

小宮山:金森さんも僕もプロの世界を経験しているけど、プロ野球以上に早慶戦はしびれる雰囲気がありますから。その恵まれた環境で試合ができるありがたみも感じつつ、存分に野球というスポーツを満喫してもらいたいですね。

――金森助監督が早稲田に戻ってきて注目度も増しています。

小宮山:いやぁ、もう大変ですよ! 貧打に泣いていたチームが開幕2カードではあれだけ打ちまくっていますから。「さすが金森だ!」と、校友(卒業生)からもたくさん連絡をいただきます。金森さんとしては、だんだんプレッシャーも大きくなっているでしょうけど。

金森:いやいや、小宮山監督ありきですから。監督も今年で5年目。4年生の選手たちは小宮山監督の目指す野球も分かっているし、理解力も高いから、こちらが1伝えるだけで10動いてくれます。そういう意味ではやりやすいというか、助かりますね。

小宮山:でもね、オヤジギャグがたまに出ても選手たちが誰も反応できないんですよ。僕は分かるんだけどね(笑)。

金森:ちょっと古すぎるんですよね…。

小宮山:選手たちがきょとんとしているのが何とも滑稽で。でもその空気感を楽しめるくらい、チームは今、いいあんばいです!

安部寮にて。「一球入魂」は、「学生野球の父」と呼ばれる野球部初代監督・飛田穂洲の言葉

【プロフィール】
小宮山 悟:早稲田大学野球部第20代監督。芝浦工業大学柏高等学校出身
千葉県出身。1990年早稲田大学卒業後、ドラフト1位でロッテオリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。2000年から横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)でプレーした後、2002年にニューヨークメッツへ移籍。2004年に千葉ロッテマリーンズに復帰し、2009年に現役引退。その後プロ野球解説者として活動し、2019年1月より早稲田大学野球部第20代監督に就任。

金森 栄治:早稲田大学野球部助監督。PL学園高等学校出身
石川県出身。1979年早稲田大学卒業後、プリンスホテルでプレーし、1981年にドラフト2位で西武ライオンズ(現埼玉西武ライオンズ)へ入団。1988年から阪神タイガース、ヤクルトスワローズ(現東京ヤクルトスワローズ)でプレーした後、1996年に現役引退。引退後は、現東京ヤクルトスワローズ、現埼玉西武ライオンズ、阪神タイガース、現福岡ソフトバンクホークス、千葉ロッテマリーンズ、東北楽天ゴールデンイーグルスなどでコーチを歴任。2023年1月より早稲田大学野球部コーチに就任。同年3月より助監督就任。

チームを支える学生コーチ。現地観戦では三塁コーチャーにも注目!

モチベーション高く優勝を目指す選手たち。基本を徹底しながら「早稲田らしく勝つ」ことを求める指導陣。その間を取り持つのが「学生コーチ」の存在です。中でも、学生コーチの取りまとめ役でもある肥田尚弥新人監督がチームづくりで意識することは?

スポーツ科学部 4年 肥田 尚弥(ひだ・なおや) 新人監督 早稲田摂陵高等学校出身

チームが日本一になるために貢献できる方法はないか

――学生コーチはどのように決まるのでしょうか?

伝統的に2年の秋シーズンが終わったタイミングで学生コーチを一人、その学年から選出します。自分たちはどういうチーム像を目指していくのか、そのために一番適しているのは誰なのかを3カ月近く毎日話し合って決めるんです。

私自身、チームが日本一になるために貢献できる方法はないかと考え、自分が学生コーチになることがその最適な方法ならば喜んで引き受けようと決断しました。

――学生コーチの役割は?

3年次が「学生コーチ」で、4年になると「新人監督」の肩書で全体を統括する役割になります。グラウンドの外では練習メニューの作成、監督をはじめとした首脳陣とのミーティングで、1週間先、1カ月先と幾つものスパンで今後どうしていくかを綿密に話し合っていきます。

グラウンドの中では、選手が一番熱量を持って練習できるように自分が率先して声を掛けながらノックを打ったり、ミーティングを重ねたり。また、試合中は三塁コーチャーを務めながら腹の底から声を出し続けてチームを鼓舞します。

写真左:試合終了後、金森助監督と話をする肥田新人監督。選手たちはもちろん、小宮山監督も「われわれ首脳陣の考えを一番理解しているはず」と信頼を寄せる
写真右:試合中の肥田新人監督は、早稲田大学の攻撃時には三塁コーチャーとしてコーチャーズボックスに立つ。守備の際にはベンチで森田主将の隣にいることが多いそう(いずれも写真提供:早稲田大学野球部)

――コーチングについて、ご自身で勉強していることはありますか?

私はスポーツ科学部なのですが、コーチになる予感がして(笑)、スポーツコーチングコースに進みました。授業で学んだ心理学が選手のメンタルケアに役立つなど、とても参考になっています。

――今年の2月下旬から3月上旬には、9年ぶりの米国・ロサンゼルス遠征もありました。印象的な出来事は?

ロサンゼルスは暑くて天気もいいと聞いていたんですけど、ひょうが降るくらいずっと悪天候で、思うように練習ができなかったんです。いつもと違う環境で言葉も分からないですし、今から行く練習場がどんなところかも分からない。選手たちは私が困っているのをくみ取ってくれたのか、全員がリーダーシップを発揮して動いてくれてすごく助かりました。みんなでピンチを乗り越えたことで、より一体感が生まれたように感じています。

ロサンゼルス遠征時の集合写真(肥田新人監督は中段右端)。遠征中は練習だけでなく、野球部にゆかりのある人たちの墓参りや現地の子どもを対象とした野球教室なども行った(写真提供:早稲田大学野球部)

――では、その一体感の下に臨む早慶戦への決意を教えてください。

声出し応援が復活して、私たちの憧れた形でのリーグ戦がやっと開催されました。その中で試合ができるので、早慶戦は今まで以上に盛り上がるだろうなと予想しています。そこでしっかり勝って早稲田大学を盛り上げられるように、自分たちらしい戦いができればいいですね。早慶戦こそ、4年生が躍動すべき舞台。最終学年の私たちがしっかり引っ張っていきたいです。

取材・文:オグマナオト(2002年、第二文学部卒業)
Twitter:@oguman1977
撮影:石垣 星児

東京六大学野球2023春季リーグ・早慶戦の試合概要とチケット販売について

【試合日時】
◆1回戦:5月27日(土)13:00~
◆2回戦:5月28日(日)13:00~
※雨天順延
※2回戦までで勝ち点が決まらない場合には月曜以降に続けて試合
※「新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン」はこちら

【会場】
明治神宮野球場

【チケット販売】
早慶戦のチケットについては、以下のように販売されます。各日、販売枚数が上限に達した時点で販売終了となります。
◆内野席(全席指定):前売りのみで、プレイガイド3社(チケットぴあ、ローソンチケット、イープラス)にて販売
◆外野席(自由席):当日券のみで、神宮球場にて販売
◆学生応援席(内野・外野):早稲田大学生活協同組合店舗(早稲田キャンパス・戸山キャンパス・西早稲田キャンパス・所沢キャンパス)にて5月25日(木)まで販売。購入時に学生証の提示をお願いします。また、内野・外野の選択はできません

詳細は、一般社団法人東京六大学野球連盟のWebサイトをご確認ください。

【ライブ配信】
以下の方法で全試合ライブ配信動画の視聴が可能です。
インターネットサービス「BIG6.TV
AbemaTV

【次回フォーカス予告】5月29日(月)公開「大学院特集」

投打の軸、加藤×熊田が語る 早大野球部の今と早慶戦への思い

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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