
浅尾貴子
不規則な学生生活で、大学生の体調は乱れがち。心身共に健康に過ごすために、毎日の食事から見直してみませんか。
管理栄養士の浅尾貴子さんに、大学生の食と健康についてお話を伺いました。
健康的な食生活は自分に対する“投資”! 今のうちに見直そう
▼不規則な食事スタイルで将来の健康を損なう恐れも
書籍代や教材費、サークル費に友人との付き合い…何かにつけてお金が掛かる学生生活。その中で節約しやすいのが日々の食費です。食事がカップ麺や菓子パンのみという方も多いと思います。健康に留意して日々のメニューを考えている大学生は少ないのではないでしょうか。
また、食費の節約や忙しさ、ダイエットを理由に食事回数を減らす人も見掛けます。ただ、これは少し心配です。人の体は体内時計によってリズムが刻まれる仕組みになっていますが、この体内時計は生活時間である24時間サイクルとは若干誤差があり、放っておくと時差ぼけのような状態になります。それを正すのが「食事(特に朝食)」の時間と「睡眠」です。朝食を食べなかったり、夕食を深夜に食べたりなどの不規則な食事スタイルは、自律神経の機能低下や免疫力低下などにつながります。
その結果、短期的には朝起きられない、集中力の低下、疲れやすいといった症状を起こし、日常生活に支障を来します。長期的には生活習慣病(予備軍)になるほか、血糖値の上昇や肝機能の低下、痛風になる可能性も高くなります。目先の食費を抑えることで、将来の健康を損なっているのです。
▼外食、学食、コンビニでも。できることから食習慣の改善を
食費は「近い将来の健康」に対する“投資”と考え、食習慣を見直すことが重要です。といっても、あまりストイックになり過ぎては長続きしません。毎食は難しくても、1日1回は一汁三菜(ご飯、汁物、おかず、野菜の副菜などがそろった食事)を取るように心掛けましょう。自炊をする場合、初めから食材や調味料を全部用意しようと無理をせず、調味料付きで混ぜるだけの商品やカット野菜などの既製品を使って、できることから始めてみましょう。
外食や学食を利用する場合も、1日に1回は定食スタイルを選ぶこと。コンビニエンスストアなどを利用する場合は、おにぎりだけ・パンだけという買い方ではなく、野菜のおかず、肉や卵、魚のおかず、乳製品などを主食と組み合わせて摂取することをお勧めします。
野菜ジュースや栄養補助食品に頼ることも有効ですが、実際には栄養価が低かったり、特定の栄養素だけに偏ってしまう場合もあります。あくまでも食事をベースに考え、そのサポート的な位置付けで考えましょう。
▼社会人になる前に身に付けたい、毎日のしっかりした食習慣
世の中を見渡すと、ビジネスや社会で活躍をしている人ほど、自身の健康に気を付けている傾向があります。つまり、仕事や生活の質を向上させ、最大限に人生を楽しみたいと思っている人ほど、健康はその基となるものだという意識が高く、たとえ日々の仕事に追われていても、定期的に運動する時間を確保したり、食事内容に気を付けていたりと、健康面の注意を欠かしません。
若いときはある程度無理が利いても、30歳を越えるころには基本的な体力も低下。生活習慣が病気につながり、体のあちこちに不調が出てきます。
学生時代から健康への意識を身に付けておくために、今日からでも食習慣の改善を始めてみましょう。
楽しく気軽に「健康」について学べるイベント
健康フェスタに行ってみよう!
毎年恒例の健康フェスタでは、食や運動をテーマにさまざまなプログラムが開催されます。簡単にできるストレッチング講座、カゴメ(株)の管理栄養士による講演会、学生早健会と生協開発のメニュー試食会、景品がもらえるスタンプラリーなど、楽しみながら健康知識を学べます。この機会に、普段の生活習慣を見直してみましょう。
6月11日(木)13:30~17:00
大隈ガーデンハウス(25号館)2階
無料
予約不要
http://www.waseda.jp/student/health/
【主催】学生健康増進互助委員会、学生生活課、早稲田大学生活協同組合
【協賛】カゴメ株式会社
1週間のメニューをチェック!
1週間の食事を書き出してみると、自分の食生活の癖や偏りが見えてきます。気軽に取り入れられる、大学生協販売の定番商品と併せてワンポイントアドバイスを紹介します。
【CHECK1】
政治経済学部3年 山本 範明(やまもと のりあき)

政治経済学部3年 山本 範明
地方学生の会「学生稲門会」の連合組織である「全国早稲田学生会連盟(全早連)」で企画担当を務める。アルバイト先はイタリアン・レストラン。一人暮らし。
朝食抜きで外食ばかり…典型的な男子大学生の献立です。今は若さで乗り切れても、不規則な食生活を続けると将来の自分の体に影響が出てきます。少しずつでもいいので見直していきましょう。
●ワンポイントアドバイス
一日の始まりはタンパク質で体を目覚めさせる
朝、起きてすぐ胃に何か入れないと体にスイッチが入らず、一日
の不調のもととなってしまいます。体内時計を整える上で特に有効な栄養素はタンパク質。牛乳やヨーグルトドリンク1杯だけでもいいので、毎朝摂取することを心掛けてみましょう。
もう1品の心掛けで野菜補給
夕食は外食で、という学生もいると思います。その場合はせめて昼食で野菜を摂取する意識付けが重要です。お弁当に入っている少量の野菜だけでは不十分です。もう1品、野菜サラダや野菜ジュースをプラスして、ビタミン・ミネラル不足を補いましょう。
丼物・麺類も選び方次第で栄養たっぷりに
例えば、丼物を食べるなら具だくさんの中華丼にしてみる、ラーメンを食べるならタンメンに、パスタの場合はトマトソース系にするといった工夫でも、何もしないよりは野菜の摂取につながります。できる範囲からでいいので、毎日継続していくことが大切です。
【CHECK2】
文学部4年 佐々木 萌好(ささき もえみ)

文学部4年 佐々木 萌好
「早稲田大学学生健康増進互助委員会(学生早健会)」所属。一人暮らしだが、毎日自炊を心掛けている。昼は弁当を持参することが多い。
毎日自炊を続けているのはとても立派です。でも、食材や献立に偏りが見られます。同じものばかりを食べ続けるとアレルギーの原因になることも。少しの工夫でさらに改善できるはずです。
●ワンポイントアドバイス
思い込みは危険!完璧な食材はないと心得る
ヨーグルトや納豆を毎日食べているから栄養バランスは大丈夫、とはなりません。一つだけで全ての栄養素が取れる夢の食材はないのです。野菜であれば淡色野菜と緑黄色野菜の両方を食べる、朝食も3パターンぐらいをローテーションしていくのが理想です。
調理が難しい魚介類は市販の加工品も上手に使って
いろんな種類を食べた方がいい、という意味では、野菜だけでなく動物性タンパク質でも同様です。魚料理の場合はツナ缶などでもOK。1日の献立の中で、さらには1週間全体の中で献立や食材のバリエーションを豊かにすることが将来の健康につながります。
市販のお弁当も活用しよう
栄養バランスを考えるともちろん自炊が有効です。でも、試験やレポート提出前など、忙しくて料理できない場合もあると思います。そんなときは最近増えている「管理栄養士監修のお弁当」なども上手に活用しましょう。ストイックになり過ぎないのも秘訣(ひけつ)です。
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監修:浅尾貴子 エクステンションセンター「食事と健康」2014年度講師・女子栄養大学助教、管理栄養士・校友。女子栄養大学栄養学部卒業後、早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了。食や健康・美容の専門家としてテレビや新聞などメディアでも活動中。主な著書に『大豆力』(主婦と生活社)、『美人になる栄養学』(メディアファクトリー)、『一生太らない朝ごはん』(マキノ出版)など。