Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

まず、知ることから始めよう。大学生の発達障がい

発達障がい学生支援部門
学生支援コーディネーター (臨床心理士・特別支援教育士)
石川 悦子 (いしかわ えつこ)

学生支援コーディネーター(臨床心理士・特別支援教育士) 石川 悦子

学生支援コーディネーター(臨床心理士・特別支援教育士) 石川 悦子

早稲田大学障がい学生支援室では、6月から発達障がい学生に対する支援を開始しています。そこで、学生支援コーディネーターの石川悦子先生や当事者の学生 から、発達障がいについてお話を伺いました。皆さんも本特集を通して、発達障がいとは何かを知り、誰もが持てる能力を発揮しながら学び、成長できる環境づ くりについて、一緒に考えてみませんか。

■発達障がいのタイプ
自閉症スペクトラム
社会的な場面・対人関係での障がい、コミュニケーションが苦手、想像力の不足、こだわりが強い、五感の過敏性などの特徴がある。
注意欠如・多動性障がい(ADHD)
不注意(気が散りやすいなど)、多動性(じっとしていられない、落ち着きがないなど)、衝動性(カッとなりやすいなど)が見られる。
学習障がい(LD)
全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するのうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す。

Q 「発達障がい」とはどんな障がいで、早稲田大学ではどのような支援を行っているの?

A 発 達障がいとは、生まれ持っての特性として、物事の感じ方や受け取り方、行動の仕方が大多数の人とは異なっているために、対人関係や学業、日常生活や社会生 活上の問題が生じることを指します。近年、脳科学の研究が進み、「対人関係がうまく構築できない」「物事の処理が極端に遅い」といったことが本人の怠慢や 努力不足ではなく、中枢神経系の障がいの影響と認められるようになりました。従って、発達障がいは病気ではありません。まずこのことを理解し、発達障がい の正しい知識を持つことが大切です。

大学生の発達障がいでは「自閉症スペクトラム」や「ADHD」が多く見られます。知能が高く、得意 なことでは突出した成果を生み出す能力を備えている一方で、ゼミや演習、会話中心の語学のクラスなど、コミュニケーション能力が必要とされる場面でつまず く傾向があります。困っていてもどのように支援を求めればよいのか分からないため、自分の力で問題を解決することが難しいのです。

発達 障がいは、当事者自らが特性を理解し努力することも大切ですが、周囲の環境を整えることも必要です。環境調整によって適応状態が良くなり、持てる能力を大 いに発揮する可能性が広がります。その助力となるべく、障がい学生支援室では相談者の特徴と学生生活上でつまずきやすい場面を整理し、具体的なアドバイス を行います。例えばレポートなどの提出期限や約束事を守れない学生には、リマインドの方法や物事の優先順位の付け方などについて助言をします。また、学生 の学習環境を整えるべく、学生担当教務主任などと連携し、教員の協力を仰ぎながら合理的配慮を検討していきます。

当事者の学生の多く は、孤独の中で困惑している状態です。皆さんも、クラスメイトやサークルの仲間に悩みを抱えていそうな学生がいたら、積極的に声を掛けてあげてください。 その際、彼らが自己開示をしやすくなるよう「最近、授業に出てこないけど、何か悩んでる?」「困っていることがあれば聞くよ」と、相手に寄り添う形で質問 を投げ掛けるとよいでしょう。

■早稲田大学で行っている支援
① 修学支援の相談
② 個別相談、支援内容の立案、アセスメント、支援状況のモニタリング
③ 学内の関係箇所への支援に関する依頼・調整・支援会議の招集
④ グループカウンセリングの企画・運営・実施
⑤ 発達障がい学生の理解を促進するための啓発活動、教員ガイドの作成
⑥ 支援学生の活用および運営調整
⑦ 学外関係機関との連携(医療機関、相談機関、出身高校など)
障がい学生支援室分室【発達障がい学生支援部門】
早稲田キャンパス25号館(大隈ガーデンハウス)1階
03-3208-0587

早稲田キャンパス25号館(大隈ガーデンハウス)1階

早稲田キャンパス25号館(大隈ガーデンハウス)1階

大隈講堂を正面に見て左側に、25号館へと続く道があります

大隈講堂を正面に見て左側に、25号館へと続く道があります

 

Q  実際に大学生活でどんなことに困っているの?困り事の背景にある特性は?
当事者にとって、「発達障がい」であることは言いづらいけれど、周囲の人に理解してほしいというジレンマを抱えています。そこで、発達障がい、あるいはその傾向のある早大生から匿名でコメントを寄せていただきました。

・本音を聞かせてくれたのは…
WADS (Waseda Developmental Differences Social Group)という、発達障がい(あるいはその傾向)がある学生の自助グループのメンバーです。困り事や悩み事を話し合い、その対処法を見いだす活動を行っています。

A 授 業で講義内容を要約したレジュメが配布されなかったり、先生が板書をしなかったりすると、講義を聴きながらノートを取ることがとても難しいので、内容を理 解できないことがあります。また、「適当にグループを作って」という先生の指示に対応することができず、とても惨めに感じることがあります。
・背景にある特性
○聴覚的情報処理の苦手さ
○対人関係・社会性の苦手さ

A   試 験では、準備の仕方を指導してもらわないと、勉強の目標や方法が分かりません。過去問題を入手するとか、先輩のレポートを見せてもらうこともできないので 途方に暮れてしまい、単位取得を諦めたくなります。また、成績が良くない場合、そのフィードバックをもらえないので、失敗を修正することができません。
・背景にある特性
○場面理解の苦手さ
○柔軟思考の苦手さ

 履 修登録の際、シラバスからは単位取得の見通しが立てられず、口コミ情報も入手できず、相談窓口はハードルが高く感じるため、非常に困ってしまいます。時間 割りの組み方が分からずに詰め込み過ぎてしまい、課題や休憩をする時間がなくなり、結局授業に出られなくなってしまうことがあります。
・背景にある特性
○情報の取捨選択の苦手さ
○暗黙のルールを理解することの苦手さ

A  大 学構内には人が多過ぎて、人にぶつからないように教室移動をするのが大変で疲れます。大学には「名札」や「座席表」がないので、人の顔と名前が判別できな いし覚えられません。人の会話を聞いて理解するのにとても時間がかかるし、話し掛けるタイミングや、何をどのくらい話せばいいのかも分からないので、会話 に参加することができません。
・背景にある特性
○身体コントロールの苦手さ
○対人コミュニケーションの苦手さ

A   空き時間に、他の人はどこで何をしているのか分かりません。ざわざわしている場所だと心身共に混乱して疲労してしまうので、休憩になりません。どこも混雑しているから、一人になって落ち着ける場所を見つけるのが難しく、居場所がないように感じます。
・背景にある特性
○感覚の過敏さや鈍麻
○想像することの苦手さ

・2014年1月、日本は国連の「障害者の権利に関する条約」に批准しました。この条約締結に先立っては、国内法の整備や制度改革が行われています。

・併せて知っておきたい、身体障がい学生支援部門の活動
!!支援学生募集!!
障がい学生支援室
聴覚障がい、視覚障がい、肢体不自由をもつ学生が、他の学生と同じ履修環境を得られるよう、サポート業務を行っています。現在は約230名の支援ボラン ティア学生が、授業でのパソコン通訳などの活動を行なっています。支援が初めての人でも事前の講座を受けることで、支援方法を身に付けてすぐに活動できま す。一人でも多くの学生に支援のご協力をお願いしています。

早稲田キャンパス3号館1階 03-5286-3747
[email protected]
支援ボランティア活動事例
●パソコン通訳 ●ノートテイク/記録
●移動支援 ●テキストデータ化

移動支援

移動支援

パソコン通訳

パソコン通訳

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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