Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

読書の秋特集 とっておきの1冊を見つけよう!

 

「近頃の学生は本を読まない」とはよく言われることですが、日本図書研究会の調査では、多読層は昔と変わらず安定している一方で、「少しだけ読んでいた」中間層が減少し、「ほとんど読まない」層の大幅な増加につながっているとのこと。本との出会いは知識と教養を深め、視野を広げ、人生を豊かにしてくれます。「最近、本を読んでいないなあ」という皆さん、この機会に本の世界の魅力に触れてみませんか?

 

3大読書系公認サークルに聞く 〜この秋イチ押しのお薦めBook〜

・現代文学会

幹事長 文化構想学部3年 喜田  智尊(きだ とものり)
『女の子を殺さないために 解読「濃縮還元100パーセントの恋愛小説」』
(川田 宇一郎 著/講談社/2012年) 1,995円(税込)

“恋愛小説”は“女の子”を殺してきた?東奔西走の文芸評論!

お薦めポイント

軟らかめの文章ですが、内容はとても刺激的な評論。秋の夜長にはぴったりだと思います。誰もが知ってる村上春樹から、大御所作家の古井由吉に川端康成、さらには元祖ラブコメ作家(?)の庄司薫、などの恋愛小説の“謎解き”をするだけでなく、海外文学からアニメやマンガまで取り上げ、そしてさまざまな批評・評論を下敷きにした「ラブコメ」の文化論へと大風呂敷が広がります。浅尾いにお作の装画もイイ!

サークル紹介

現代文学会の主な活動は、読書会・勉強会、講演会の企画、機関誌の発行・販売の三つです。しかし実際には、これだけではありません。部室でおしゃべりしたり、外でお酒を飲んだり、部室のパソコンをいじったり……。こうした活動全てが、現代文学会の活動につながっていきます。つまり、現代文学会は、いまの会員たちが望み、そして為す方向へと、日々変わっています。

 

・ワセダミステリ・クラブ

文化構想学部2年 安江  拓人(ひろと)
『秋の花』
(北村 薫 著/東京創元社/1997年) 651円(税込)

“日常の謎”の苦さと暖かさを味わえる正統派名作です。
お薦めポイント

秋の物語、主人公が早稲田大学文学部の学生、作者の北村薫先生がワセダミステリ・クラブのOBであるということでこの小説をお薦めします。米澤穂信先生の“古典部シリーズ”でおなじみとなった推理小説のジャンルである“日常の謎”を扱ったシリーズの一作です。主人公の女子大生“私”の母校で起こった事故にまつわる、苦さと暖かさを味わえる作品。
サークル紹介
ワセダミステリ・クラブは江戸川乱歩先生を初代顧問に迎えて発足した、ミステリを中心とした総合文芸サークルです。主な活動は月1回の読書会と年2回の文学フリマで発行する機関誌の制作です。普段は早稲田キャンパス15号館のラウンジで活動しています。随時新会員を募集しているので興味があったらいつでも連絡してください。「早稲田祭2012」では推理作家の三津田信三先生の講演会を行いますのでどうぞお越しください。

 

・児童文学研究会

幹事長 文学部3年 齋藤  眞徳(まさのり)
『ふしぎなふしぎな子どもの物語 なぜ成長を描かなくなったのか?』
(ひこ・田中 著/光文社/2011年) 998円(税込)

この本を読めば“物語”を新たな視点で楽しめるようになります!

お薦めポイント

本、漫画、特撮、アニメ、ゲーム―こと日本において、子ども向けの“物語”は多様です。この本では、それらを昭和から平成まで網羅的に“成長”という視点で解説しています。たとえば、『魔法使いサリー』から『プリキュア』に至るまで、女の子における成長像は今と昔ではまるで違うものになりました。時代背景を踏まえて“物語”を読み解くことで、子どもの成長と“物語”の意味を考えさせてくれる本です。
サークル紹介
児童文学研究会は、今年で40周年を迎える総合文芸サークルです。児童文学をはじめヤングアダルト文学や純文学、ファンタジー、また子ども向けの詩や現代詩など多様な文芸作品を創作・評論しています。そして絵本やイラストの制作、子ども向けの本の読み聞かせなども行っています。早稲田祭と年2回の文学フリマでは、オリジナルの冊子を販売しています。また11月には新宿区で子ども向けの地域交流イベントを開催しています。

 

・学生時代に熱心に読んだ一冊

文学学術院 教授 高橋  敏夫

『銀河鉄道の夜』(宮沢賢治 著/岩波文庫) 693円(税込)

わたしが大学生になって熱心に読んだものに童話がある。宮沢賢治や新美南吉、あるいは小川未明や鈴木三重吉の作品である。

当事者にものごとは、よく感じられたとしても、はっきりとは見えない。終えたばかりの子どもの姿は、大人になってようやく見えはじめる。そこには、始まったばかりの大人の在り方を、鋭く問いかける子どもが浮かび上がる。大人こそ童話の読者なのだ。

わたしは、童話を、大人も子どもになってしまう“問い”のもとにつくられた話、と考えている。大人になる過程で学習していくさまざまな“答え”がついに通用しない“問い”のもとにつくられた話、といいかえてもよい。

“世界とはなにか?”“生きるとは?”“人はなぜ人を裏切るのか?”“どうして人は別れなければならないのか?”“人はなんで戦争をするのか?”“死んだら人はどこへ行くのか?”“わたしとはなにか?”など。幼いころ誰もが、そこに閉じこめられたまま苦しさのあまり、眠れない夜をおくった“問い”である。哲学的あるいは宗教的問いともかさなるそんな問いをはっきりさせるとともに、大人得意の概念的な答えの一歩手前で、従来の言葉やイメージを削ぎ落としつつ話として組織するのが童話なのである。そんな童話というスペースで、大人たちはたちまち壊れて子どもと再会し、新たな一歩をふみだす。

たとえば、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を開けばそこには、答えのない問いがおりかさなり、声にならぬ叫びと呻きにみちた漆黒の夜がひろがる―。

読者であるわたしたちは、はたしてジョバンニのように、ひとすじのひかりへ辿りつけるだろうか?
———————————————-
■たかはし・としお
文芸評論家、演劇評論家。早大第一文学部、大学院文学研究科博士課程修了。日本近・現代文学、文学理論研究。学生時代より文芸評論家として活動、演劇・映画・マンガ・音楽などへ対象をひろげる。『嫌悪のレッスン』『藤沢周平 負を生きる物語』他著書多数。学部での講義「ホラー論・怪物論」は書籍化(『ホラー小説でめぐる「現代文学論」』宝島社新書)されている。

 

・本好き学生が選ぶ大学生に一番薦めたい本
〜大学読書人大賞の紹介〜

社会科学部2年 森本  珠央(たまお)
(現代文学会所属、大学読書人大賞2013実行委員長)

 

「読書したいけど、どの本を選んでよいのか分からない」そんな学生にぜひご紹介したいのが、「大学読書人大賞」です。

 大学読書人大賞は、全国の大学文芸サークル49団体による“投票・評論・討論”を経て、“大学生に一番薦めたい本”を年に1回決定する、大学生による大学生のための賞で、出版文化産業振興財団(JPIC)の支援の下、参加サークルの有志が組織する実行委員会によって運営されています。選考の過程は、まずサークル単位で投票(一次選考)を行い、ノミネート作品の推薦文(書評)を募集します。続いてWebサイト上で公開された一次選考結果に対して投票し(二次選考)、上位5作品の推薦文執筆者をプレゼンターとして公開討論を行います。

本好き活字漬け学生のパワーはすごいもので、今年度の公開討論会では今回大賞を受賞した『ハーモニー』(伊藤 計劃 著/早川書房)の推薦者が作品のプロット分析を行い、作者が影響を受けたであろうハリウッドの脚本術にまで踏み込んでいました。さらに「難しいことはよく分からないが、結局面白いのか?」という会場からの質問に対しては、「そりゃもちろん、チョー面白いですよ!!」と熱く答える場面も。また大人気ラブコメ『図書館戦争』(有川 浩 著/アスキーメディアワークス)を学生と社会のつながりから批評してみたりと、鋭い分析と若さ故のエネルギッシュな作品への愛が混在する討論会は最大の魅力の一つでしょう。

ジャンルの多様性も魅力です。過去の大賞にはアーサー・C・クラークのSF古典や、過去に三島賞も受賞している舞城王太郎の『好き好き大好き超愛してる』、沖方丁の歴史小説『天地明察』など、幅広いジャンルが含まれます。参加サークルも多岐にわたり、ミステリ研究会、ライトノベル研究会、図書館運営団体、文芸・評論執筆サークルやゼミなどさまざまです。

関連イベントも盛りだくさんで、書評家や編集者を招いての講演会や、大賞作家を招いての贈賞式を開催しています。今年は『文学賞メッタ斬り!』の豊崎由美さんや早川書房『SFマガジン』の名編集者・塩澤快浩さんをお呼びしました。

“若者の活字離れ”が嘆かれていますが、本当にそうでしょうか? 本好きの学生は一般的な社会人より活字漬けといっても過言ではありません。活字離れのアンチテーゼとして生まれた大学読書人大賞にあなたの文芸サークルもぜひ参加してみませんか?

■大学読書人大賞 URL:http://www.jpic.or.jp/dokushojin/

・知ってる?やってる? 読書マラソン

本を継続的に読んで大学在学中の4年間で100冊以上を目指そうという「読書マラソン」は、全国大学生協共同組合連合会が主催する企画で、今年で8年目を迎えます。読書マラソンに参加するためには、早稲田大学生活協同組合の店舗でエントリー手続きを行い、本を1冊読んだ後にPOPカードを書いて提出すると、カードにスタンプが1個押され、10個たまるごとに早稲田大学生活協同組合の利用券が進呈されます。

また、早稲田大学生活協同組合では独自に「読書マラソン早稲田賞」を設けて、早大生の読書意欲の増進を応援しています。例年、応募は6月1日~10月末まで受け付けており、今年の応募はすでに終了しましたが、12月14日に17号館B1Fブックセンター店内イベントスペースで開かれる授賞式にて、各賞の受賞者が表彰されます。授賞式終了後には作家の中村航さんのトークイベントやサイン会が開催されます。(授賞式以外は一般の方も参加可能)

問い合わせ先 早稲田大学生活協同組合ブックセンター
(Tel:03-3202-3236)

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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