Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

ダマされるな! 近づくな!! 違法ドラッグの実態

「大麻、覚せい剤は怖いけど、合法ドラッグなら大丈夫」と思っている人はいませんか?俗に「合法ドラッグ」「脱法ドラッグ」と呼ばれるものは、厚生労働省で「違法ドラッグ」と呼ばれている危険な薬物です。
今回は、そんな違法ドラッグについての正しい知識を、厚生労働省関東信越厚生局麻薬取締部にご協力いただき解説します。

▲脱法ハーブ。ブレンドハーブやお香として販売されている例

違法薬物使用について、大学生はどう思ってる?

社団法人日本私立大学連盟が発行している『私立大学 学生生活白書 2011』意識調査によると、違法薬物の使用について、「どのような理由であれ、絶対に使うべきではない」と回答した学生の割合は88.3%でした。一方で「使うかどうかは個人の自由であり、使っても構わないと思う」、「一度くらいなら使っても構わないと思う」と回答した学生が7.8%います。皆さんはこの数字を少ないと感じるでしょうか? 2008年には大学生に広がる大麻汚染が深刻な社会問題となりましたが、改めて違法薬物(大麻、覚せい剤、違法ドラッグなど)の危険性について考えてみてください。

1 違法ドラッグの真実

違法ドラッグとは、麻薬などと同様に多幸感、快感を高めたり、幻覚作用があるなどという触れ込みで販売されている化学物質や植物のことです。これらのものは、俗に「合法ドラッグ」「脱法ドラッグ」などと呼ばれ、あたかも合法のような印象を与えていますが、その多くは薬事法で規制される無認可・無許可の違法ドラッグと呼ばれる危険な薬物です。

違法ドラッグからさらに強い麻薬へ

違法ドラッグは、麻薬・覚せい剤・大麻などの乱用のきっかけとなることが多く、「ゲートウェイドラッグ」(入門薬)とも呼ばれています。「麻薬や覚せい剤じゃないなら、大丈夫だろう」と思い、軽い気持ちで手に取ってしまう人もいますが、違法ドラッグは、急性錯乱、意識消失、呼吸停止といった健康障害を起こす強い有害性や習慣性を持つ危険な薬物です。

精神作用だけでなく命を落とす危険も

違法ドラッグの中で、最近、特に問題となっているのが、脱法ハーブ(「合法ハーブ」も同じ違法ドラッグを指します)と呼ばれるものです。ハーブという言葉の響きから安全なものと誤解しがちですが、実はこの「脱法ハーブ」は、いわゆるハーブとは全く別物。「脱法ハーブ」と称して販売されているもののほとんどは、乾燥植物片に合成カンナビノイドと呼ばれる化合物を混ぜ合わせたものです。この合成カンナビノイドとは、大麻と同じような精神作用を引き起こすもので、錯乱や精神病状態に陥ることがあります。「脱法ハーブ」には、実物の大麻に含まれる成分よりも強い精神作用を有する化学物質が配合されているものも多く存在します。また、合成カンナビノイドは、精神作用の問題ばかりではなく、心臓血管障害を引き起こすとの報告もあり、そのため過剰な摂取は重篤な中毒を起こし、場合によっては命を落とす危険性もあります。

▲脱法ハーブ内容物の一例(乾燥大麻に似ている)

▲タブレット状の違法ドラッグ(ラムネ菓子のようにも見える)

2 違法ドラッグの販売手口

半ば公然と販売されている違法ドラッグの多くは、危険な薬物であることを隠し、ビデオクリーナー、芳香剤、観賞用植物のように、人体への摂取を目的ではない物かのように偽装して販売するなど、悪質、巧妙な手口で雑貨店などで販売されているケースが多く見受けられます。このような店に出入りしているのは、10代、20代の若者が中心です。価格も覚せい剤や大麻などに比べれば高くはないので、遊び感覚で始めてしまう若者が増加しています。

3 違法ドラッグ使用の末路

長年、薬物依存症の診療に従事している精神科医師の小沼杏坪先生(KONUMA記念広島薬物依存研究所長)は、「最近、覚せい剤の代替品でMDPVという薬物を使用して中毒になった例が増えてきている。また脱法ハーブは、強い精神作用があるばかりではなく、心臓血管障害などを引き起こす大変危険な薬物だと感じている」と語っています。小沼先生の患者で、薬物中毒に陥った20代の男性は脱法ハーブを吸ってみたら気分が良くなり、それ以来脱法ハーブにはまってしまい、やめようと思っても、なかなかやめられなくなり依存症となったようです。その後、「集中力がなくなる」「考えがまとまらない」「イライラする」といった精神症状が現れ、父母同伴で受診するに至りました。また、別の若者の症例では、「昨年10月ごろから脱法ハーブにのめり込み、11月ごろには頻繁にやるようになった。そのころ、『二、三十人から自分の過去の行状を取沙汰されている』といった妄想(被害的な関係付け)を抱くようになり、郷里の父に電話で助けを求めた」そうです。結局この若者は、空港で父親と落ち合う約束をしましたが、途中で意識が錯乱してしまい警察に保護されました。その後、父親が身元引き受けをして実家に連れ帰り、幻覚妄想状態で緊急入院したとのことでした。

4 違法ドラッグも厳罰化!

2006年に薬事法が一部改正され、違法ドラッグを薬事法の「指定薬物」として指定し規制を行っています。「指定薬物」は、医療などの用途を除き、製造、輸入、販売、授与、または販売・授与の目的での貯蔵、陳列を行うことが禁止されており、これらに違反した者は、薬事法に基づき3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金、またはこの併科の処罰が適用されます(業として行った場合は、5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金)。
また、指定薬物として規制されている物質は、より規制が厳しく罰則も重い麻薬に格上げ指定されることもあります。「脱法ドラッグだから大丈夫だ!」と思っていた薬物が、自分の知らない間に、指定薬物とされ、さらに麻薬として規制されているということもあり得ます。違法ドラッグに手を出せば、無用な健康被害を招き、自身が法による処罰の対象となる恐れも十分にあります。

5 甘い誘惑に「No!」という勇気を持とう

厚生労働省は、違法ドラッグなどの流通を規制するために、添加されている成分を特定して薬事法上の指定薬物として指定しています。しかし、指定薬物と構造が少しだけ異なる新たな成分が流通し、取り締まる側と業者とのイタチごっこと呼べる状況が続いています。これは日本国内のみの問題ではなく、世界各国で大きな社会問題となっています。この状況を打破するには、みんなが「違法ドラッグを持ち込まない、使わない、渡さない、貰わない」ことを当然とした社会環境作りも大事です。また、「やせられる」「頭がスッキリする」などの甘い誘惑には毅然と断る勇気を持ちましょう。

—————-
Information
違法薬物防止講演会
「夜回り先生」水谷修氏講演会開催

早稲田大学では違法薬物使用防止教育の一環として、昨年度に引き続き、繁華街をパトロールする「夜回り先生」として活躍されている水谷修氏による講演会を実施します。この講演を皆さんもぜひ受講してください。

【日時】6月4日(月) 13:00~14:30
【会場】大隈記念大講堂
【対象】早稲田大学学生・教職員
【料金】無料
【申込方法】Waseda-netポータルにて受付
【受付期間】4月23日(月)~5月20日(日)

1272号 2012年4月19日掲載

Tags

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/weekly/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる