社会科学部4年
横尾 千里 (よこお ちさと)

東京都出身。國學院大學久我山高等学校卒業。東京フェニックス・ラグビークラブ所属。チームメイトの誕生日を覚えておき、プレゼントをすることが大好き。贈り物は電車での移動中などに手作りすることが多い。
ラグビーに出合ったのはまだ小学校1年生のときだった。弟が所属しているチームの見学に行ったことがきっかけで、男子に混じって練習を始める。中学ではクラブチームに入り、全日本ユースにも選出。高校は全国的な強豪校に進学するが、女子ということから部活には入部できず、付属中学の男子ラグビー部に所属することになった。公式戦には出られず、トレーニングや練習試合しか参加できない日々の中で、特に激しいボディーコンタクトが交わされるタックルの練習にこだわりを持って取り組んだ。それは、年下の男子に囲まれ自分だけが女子という状況の中で「ナメられたくない!」という横尾さんの意地でもあった。
子どものころから15人制の選手だったが、2016年のリオ五輪の正式種目に決定したことを契機に7人制へ転向する。「それまで経験はなかったし、試合を見たこともなかったんです」と振り返るように、当初はかなり戸惑いが強かった。「人数が15人制の半分だから、スペースの感覚が違うんです。一人ずつの責任が重いし、ミスがすぐ失点につながる。とてもシビアなスポーツだなと感じました」。
横尾さんの身長は164cm。ラグビー選手として満足とはいえない体格だ。それでも18歳で日本代表に選ばれたのは、正確なタックルの技術を評価されてのこと。男子の中で積み重ねた努力が報われた瞬間だった。攻撃時はフォワードとして最前線に位置し、攻撃の要としての活躍も期待されていた。しかし2011年、横尾さんにとって初めての国際大会であるアジアチャンピオンシップでは5位に終わり、屈強な外国人選手との差を痛感することになってしまう。「国の代表として試合に出る責任を感じましたし、結果を持ち帰りたかったんですが…スピードもパワーも圧倒されてしまいました。スキルも体格も不足していることが分かって、とにかく悔しかったですね」。
それから3年間は、平日はほぼ毎日代表チームとしての練習を行い、合宿は毎週末。この強化策が功を奏し、ARFUアジア女子セブンズシリーズ2013で優勝。アジア競技大会2014では、中国に惜敗したものの準優勝を果たし、アジアのトップチームへと急成長を遂げた。だが、まだ五輪への出場が確約されているわけではない。「出場できるのは12カ国。日本の世界ランキングは11位ですが、2015年から始まるアジア予選を1位通過しなければ、リオに行く前に夢は途絶えてしまいます。それに、私自身も代表の座が安泰なわけじゃないんです。これからもっと練習を積んで体を大きくして、まずはメンバー入りを決めること。そして主力として戦って、リオへの切符を確実につかむことが目標です」。
来春の卒業後は、航空会社に勤務しながら競技を続け、2016年のリオを目指す。さらに、2017年に開催される15人制のワールドカップへの出場も大きな目標だ。「今は7人制専門ですが、子どものころはワールドカップに出ることが夢でした。五輪の翌年で準備期間もないから難しいけど、何とかチャレンジしたいですね」。
第602回