松本 潮霞 (まつもと なみか)
社会科学部4年
見附 絵莉 (みつけ えり)
スポーツ科学部3年

まつもと・なみか(左) 千葉県出身。県立松戸国際高等学校卒業。1年次から全日本学生選手権で優勝するなどの実績を残し、日本代表に選ばれる。趣味は体を休めること。
みつけ・えり(右) 兵庫県出身。県立三木東高等学校卒業。2012年度に出場した全ての大会で3位以内に入り、松本選手と共に日本代表に選出される。趣味は韓流ドラマ、K-POPの鑑賞。
まさに「小さな巨人」と言うべきか。今年4月に行われた「第10回全日本学生ウエイトリフティング選抜大会」にて、女子63kg級、同69kg級を大会 新記録で優勝した二人は、共に150cmをわずかに上回る小柄な女性。早稲田大学ウエイトリフティング部の先輩後輩である松本さんと見附さんは、日本代表 にも選出されたトップアスリートだ。
ロンドン五輪で銀メダルを獲得した三宅 宏美 (みやけ ひろみ)選手の活躍などから、近年にわかに注目を集めている女子重量げ。競技を始めたきっかけを二人に尋ねたところ、「姉もウエイトリフティングの選手 で、姉と同じ高校に通っていたところ、彼女の指導者から熱烈な勧誘を受けて…」と松本さん。一方の見附さんは、「高校のウエイト部の雰囲気が楽しそうだっ たから」。共に競技に魅せられたわけではなかったが、徐々にその奥深さに取りつかれ、大学でも続けることを選んだ。
「マイナー競技であるが故に、大会に出られる機会が多かったことがモチベーションになっていたと思います。そして大会に出たら出たで、ハイレベルな選手の存在を痛感する。経験を積むほど、もっと強くなりたいという欲が増していくんです」。
そう言って隣に座るハイレベルな選手に視線を向ける松本さん。「こう言いつつ、松本先輩の方がすごい選手です(笑)」と見附さんが返す。二人は選手として互いに意識しながらも、普段は親友のように振る舞う間柄だ。
ただ、その雰囲気も練習中は一変する。過酷なメニューが待っているのだ。「最もきついのはバーベルを持ちながらのスクワット。100kg以上の重量を担ぐこともあります」(見附さん)。
練習場には部員のうめき声が響く。明日の勝者を目指し、皆、過酷なウエイトトレーニングに耐えるのだ。だが、筋力を増大すればいいわけではない。「いかに 筋肉を疲労させずに重い重量を持ち上げられるかが勝負のカギ。そこでジャンプをしながらバーベルを浮かし、そのスペースに体を入れるようにするのですが、 身体の柔軟性や敏しょう性がないと、このフォーム自体が成立しません。さらに、笑顔のパフォーマンスも重要です」(松本さん)。
練習で泣いて、本番で笑う。今年の春、二人は大舞台で大いに笑った。
松本さんは来年4月からは実業団に入って競技を続ける。3年生の見附さんも、将来的に実業団入りを目指すという。こうした選択肢の広がりも近年の女子重量挙げ選手の努力の産物だ。
二人の目標の選手は松本さんの姉で、いちごグループホールディング所属の松本 萌波 (もえは)選手。部のOGでもあり、今年6月に行われた「第27回全日本女子ウエイトリフティング選手権大会」で優勝した萌波選手は、社会人選手として ロールモデルになる存在だ。そんな偉大な先輩の背中を追う前に、二人にはやっておきたいことがある。
「団体戦は学生時代にしか経験できません。12月に行われる『全日本大学対抗女子ウエイトリフティング選手権大会』では今年こそ結果を残したい」。
大会直前まで二人は厳しい練習に励む。早稲田として栄冠をつかむために。
第578回