学生が持つ最大の特権は「失敗できる」ことにあると私は考えている。
年齢を重ねれば重ねるほど「失敗」は自身にも周囲にも重くのしかかるし、外部からその危険性を伝えてくれる人も少なくなる。そのため、「失敗」をしないために入念な準備や研鑽(さん)を事前に行うことが、大人になるということなのかもしれない。
しかし、最近はその恩恵を最大限に生かそうとしている学生が少ないようにも感じる。問題は2点で、「失敗をそのままにする」ことと「失敗を恐れるために挑戦しない」ことだ。論文を書いても最初はリジェクトが多いだろうが、出し続けなければ採択はされないし、業績にもならない。就活も同じで勝率100%の人物はマレであろう。ただし、1つ成功できれば直前までの失敗もある意味では帳消しになる。
電球を発明した偉大な科学者は、多くの失敗について「1万通り以上のうまくいかない方法を発見しただけ」と述べている。目標に近づくための近道は、失敗をしても挑戦する「機会を増やす」ことにある。試行錯誤を繰り返すことで、猫が箱という困難からも素早く脱出できるように、まずは舞台に上がり続けることが必要になる。
私は単純に多くの失敗が成功につながるということを言いたい訳ではない。むしろ、「失敗しない」ための準備や想定を学んでほしいが、その中でも「失敗できる」というのが学生諸君のメリットなのだ。失敗による批判は自身へのフィードバックであるという視点も持つことで、成長の機会を増やすことができる。もちろん、同じ失敗はなるべくしない方が良いのは言うまでもない。
(M.O.)
第1125回