2021年がもうすぐ終わろうとしている。思い出は、コロナ禍で東京2020オリンピック・パラリンピックが開催されたことだろうか。東京に世界中から多様なアスリートたちが集結した。早稲田の在校生や卒業生も多数活躍したことが思い出される。日本の選手に多様な背景のアスリートがいたことも注目された。例えば、選手の名前がカタカナの選手も珍しくなかった。
もちろん、それ以前の大会でも同様だった。例えば、2012年にロンドンで開催されたオリンピックには、当時スポーツ科学部在籍のディーン元気さんがやり投げの日本代表選手として出場し、活躍した。ディーン元気さんは英国人の父と日本人の母を持つ。2014年のロシア・ソチで開催された冬季オリンピックにスポーツ科学部卒のレンティング陽(あきら)さんが日本代表のスキー選手として出場し、活躍した。レンティング陽さんはニュージーランド人の父と日本人の母のもと、東京で生まれ長野で成長し、スキー選手となった。
彼らだけが早稲田大学のダイバーシティではない。今も、多様な背景を持つ学生がいる。日本人の両親を持ち幼少期に米国で育った斎藤彩香さん(仮名・国際教養学部)は「国籍イコールアイデンティティではない。私も国籍は完全に日本だが、心はアメリカ人だと思う」と述べている(『探究型アプローチの大学教育実践−早大生が「複言語で育つ子ども」を考える授業』くろしお出版、2020年、p.180)。
来年は北京で冬季オリンピック・パラリンピックが開催される。国籍とアイデンティティ、スポーツの関係をどう考えるかは、21世紀の重要なテーマであろう。
(I.K.)
第1113回