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もし、機械と人間が共感し合えるようになったら【人間科学研究科】

機械が人間の感性を理解できるきっかけを作りたい

大学院人間科学研究科 修士課程 2年 村田 英理奈(むらた・えりな)

私は、機械学習を通じて人間の感性を定量化し、モデル化するという研究に取り組んでいます。感性は、その瞬間の状況や環境、過去の体験、さらには個人の性格や価値観に深く根差しているため、一つの数値やアルゴリズムで完全に表現するのは非常に難しいです。ですが、この難しさこそが、私がこのテーマに引かれる理由でもあります。もし感性をモデル化することができれば、機械が人間の感性を理解できるきっかけになります。これにより、機械は人間とより深いレベルで共感し、協力し合える心強い存在になるのではないでしょうか。

小学生の頃から、SF作家・星新一さんのショートショート(超短編小説)が大好きでした。「もし機械が感性を持ったら、どのような世界になるのだろうか?」と胸を躍らせながら読んでいたことを覚えています。その好奇心が、今の自分の研究への情熱を形作る大きな要因になっています。

現在行っている研究内容は、SNSのX(旧Twitter)の投稿を読んだ人がその投稿にどの程度投稿者の承認欲求を感じるかに関して、機械学習を用いて数値化し、評価するものです。機械学習の精度を高めるには、教師データ(※1)が必要です。そのため、人間の評価者がXの投稿に対して承認欲求を感じるかどうかを判別し、その結果を機械学習の教師データとして使用します。これにより、機械は新たな投稿を自動的に分類できるようになり、大量のデータを効率的かつ迅速に処理できるようになります。また、テキストマイニング(※2)や統計解析を使って、投稿者の承認欲求の強弱によってどのように行動(Xでの言葉遣いや投稿頻度など)が異なるかを分析しています。

(※1)機械学習のモデルを訓練する際に利用するデータ。入力されたデータに対して、それぞれに対応した正解(ラベル)が付与されている。
(※2)テキストデータに対して、統計学的手法や自然言語処理を用いて、データのパターン、関係性、感情、トピックなどを明らかにする手法。

研究内容の背景の一部です。スライドを作成する際には、読者が興味を持ちやすく、なおかつ研究の核心を的確に伝えることを目指しています

現時点では、機械は人間の感覚や感性を直接理解することはできません。そこで、SNS上でのユーザーの心理的特徴、特に承認欲求を数値化し、行動パターンを可視化することで、「機械が人間の感性を理解できるきっかけづくり」に寄与できると考えています。また、SNS上でのユーザー行動の予測や、より効果的なコミュニケーション手法の提案にもつながるのではないでしょうか。

2023年9月には、日本学術振興会が主催する日中韓フォーサイト事業に参加し、中国の南京で開催されたワークショップで研究成果の発表を行いました。この事業は、日本、中国、韓国の人工知能やネットワークを専門とする研究者が意見交換を行い、共同で新たな知見を得るための貴重な場です。ワークショップでは、自身の研究を発表する機会になっただけでなく、多くの研究者と交流することができました。さまざまな分野からのフィードバックや新たなアプローチの着想を得ることができ、とても有意義な時間となりました。

日中韓フォーサイト事業では、「SNS投稿における機械学習を用いた承認欲求の分析」について発表しました

研究は順風満帆なことばかりではありませんが、上手くいかない日よりも、研究に向き合わずに過ごしてしまった日の方が、自分にとってつらいと感じることに気付きました。成果がすぐに出なくても挑戦し続けることそのものに価値があり、自分が心から探求したいテーマに向き合っているということが、私のモチベーションの源になっています。

ある日のスケジュール
  • 09:00 起床
  • 10:00 自宅で研究(より良いアウトプットができるように、先行研究を読みます)
  • 12:00 昼食(「麺爺」早稲田店の白(塩)が好きです)
  • 13:00 大学で研究
  • 20:00 夕食(たまに飲み会)
  • 23:00 自宅でスライド作成(研究の進捗状況を可視化するため)
  • 25:00 就寝

写真左:所沢キャンパス100号館6階の研究室。研究室のメンバーと話していると、自分では思い付かないアイデアが出てきます
写真右:夜は飲みに行くことも。趣味は全国各地のバーを巡ることで、写真は兵庫県神戸市のバーにて

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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