最近生成AIが大きな話題になっている。その利用が社会に大きな影響を与えることは間違いないし、大学教育の目標や方法も改めて考え直さなければならないであろう。こうしたデジタル情報化の進展に伴い、近年大学での理系シフトが話題になっていた。国立大学の理系定員の増加、早稲田でも文系学部で数学が入試科目になったり、また全学的にデータサイエンス教育が充実してきている。こうした状況で文系理系を問わず数学的素養の重要性が増しているわけで、大学生として各自の数学的力を磨く努力は必要であろう。
直接そうした数学の話ではないが、デジタルデータに関連した注意点を2点述べたい。そもそもデジタルデータ作成には、複雑な物事・事象を分類したり、特徴や属性を数値化あるいは記号化したりすることがその出発点にあること、そしてそうした分類・数値化・記号化の適切な規則作りが、データの質に最も大切であることが1点目である。
2点目として、データの数字、その集まりである表やグラフという流れで資料が作成されるわけだが、その元の数字について常に吟味が必要である。実際のデータの数字は幅を持って理解されなければならないものである。その幅がどれくらいなのか、また揺らぐ数字のおおよその確率といったことに考え及ぶべきだ。この種の数字に対する思考力・直観力(「数字に対するリテラシー」と呼ぶべきか)はそんなに難しい数学を必要とするものでないが、若い人たちにはぜひ身に付け自然に使ってほしい力である。
(Y)
第1151回