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資源循環を通じ、環境をめぐる政治社会の在り方を探る【環境・エネルギー研究科】

リサイクルの実務経験者として、世代を超えて学び合う学際研究

大学院環境・エネルギー研究科 修士課程 2年 板橋 千明(いたばし・ちあき)

学部では西洋史学を専攻しました。今から40年と少し前のことです。当時の西洋史学はヨーロッパに近代化の源を探ってお手本とすることから、近代化がもたらした現代の世界システムの理解、批判へと方向を変えつつありました。

卒業後はビジネスマンの道を歩みましたが、当時、日本経済が隆盛を極める中、もはや欧米から学ぶものは何もないとさえ言われたものです。ところが40歳代後半からリサイクル関係の仕事に就くと、いやでもヨーロッパ発祥のリサイクル制度に向き合う必要が生じ、50歳代後半、会社の環境マネジメントを預かってからは、ヨーロッパの動きから目が離せなくなりました。今環境の問題を考えるにあたって、人によりその評価はさまざまと思いますが、ヨーロッパ、とりわけ欧州連合(EU)の動向を無視することは不可能です。

リサイクルの実務家として、ヨーロッパ諸国のリサイクルの実態に関心が生じただけでなく、なぜヨーロッパでは環境問題が政治での主要なアジェンダになり得るのか、彼らは自分たちの引き起こした「温室効果ガス排出」による途上国などでの「気候災害」にどう向き合おうとしているのかなど、ヨーロッパと世界への問いが私の中で大きくなりました。こうした問いを幅広い視点から考えられる場として、会社の退職を機に、学際的な研究が指向されている環境・エネルギー研究科への進学を決めました。

修士論文では、英国と日本における最近のプラスチック資源循環政策に関する比較研究を行います。両国で採用された制度の違いを、EPR(※1)に対する理解と政策への展開を基準として分析し、政策形成に関与するアクターの理念と行動に着目する「政治過程論」のモデルを援用しながら、差異発生の原因とその意味するところを解き明かす予定です。ブレグジット(※2)をした英国をあえて日本の比較対象に選ぶことで、おのずとEUとの比較も視野に入れる必要が出てくるため、日本とヨーロッパというテーマをより深く考えられるのではと思っています。

(※1)Extended Producer Responsibility(拡大生産者責任):製品に関する生産者の責任を製品のライフサイクルの消費後段階まで拡大する環境政策アプローチ。
(※2)英国の欧州連合 (EU) からの離脱を意味する造語。 “British” と “exit” の混成語で Brexit と表記する。

写真左:自宅での研究タイム
写真右:自宅本棚には環境関連書籍や英国史などがたくさん。隣にはCD棚があり、趣味のクラシック音楽CDを約2,800枚収納しています

2022年4月に大学院に入学し、人と人が交わることの効果、楽しさをつくづく味わった1年間でした。私のような年配者を受け入れてくれるかどうか、入学前は多少の不安もあったのですが全くの杞憂(きゆう)に終わりました。所属する野津喬准教授の研究室で他の方の研究発表を聞く際には、一見自分のテーマから遠く見えても思わぬつながりがあって、自分の考えの幅を広げてくれることがしばしばありました。講義でもグループディスカッションが多く含まれていて、理系の学生や留学生ともいろいろな話ができ、たくさんの気付きが得られました。今年は学会発表の予定があり、他大学の研究者、学生、自治体や企業の方々との交流が今から楽しみです。

野津ゼミ修士1年生とのミニゼミナールの様子。2023年度から研究室が早稲田キャンパスに移転しました

研究をするのに2年間というのはあまりに短い時間です。まずは英国と日本のプラスチック資源循環政策から研究を始めましたが、EU加盟の各国は? アジアは? バッテリーは? テクスタイルは? と興味はとどまることを知りません。深堀りする地点はきっちりと押さえながら(願わくは専門家と認められるまで)、じわじわと幅を広げていきたい、そして、具体的なイメージがまだはっきりしないのですが、学びを続けながら、自分の得たものを皆さんと分かち合っていきたい、そんな風に思っています。

ある日のスケジュール
  • 07:00 起床、朝食の後TV(海外ニュースなど)
  • 08:00 自宅周辺散歩(ときどき)、語学学習
  • 10:00 大学図書館(学内図書館をハシゴ、書籍豊富で大いに助かる。コピーは大変だけど)
  • 12:00 昼食(大隈庭園前のUni.Cafe125が落ち着いて良い)
  • 13:00 授業に出席(ゼミや個別面談。今年度からはほとんど対面。ゼミはディスカッション主体)
  • 18:00 夕食、TV(ニュース、食、鉄道主体の旅番組)
  • 19:00 研究タイム(文献、書籍、インターネット。課題があるときは26時まで及ぶこともしばしば)
  • 23:00 音楽鑑賞、趣味の読書
  • 24:00 就寝

    妻と一緒に出掛けたカフェで読書タイム

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