オリンピック・パラリンピック事業推進担当 常任理事 恩藏 直人
早稲田大学は、2016年10月にオリンピック・パラリンピック事業推進委員会を設置し、東京2020大会を契機に「早稲田大学の国際的プレゼンスの向上」と「オリンピック・パラリンピックのレガシーの構築」を目的として、一連の事業を推進してきました。活動は5年間にわたりますが、2020年春以降は、多くのエネルギーがコロナ禍との闘いに注がれました。
東京2020大会の開催が1年延期となり、先行きが見通せない中で、オリンピック・パラリンピックの実施に向けて機運を維持、醸成するとともに、関係箇所と交渉を進めるというのは困難の連続でした。イベント等は軒並みリモート開催となり、新型コロナウイルス対策という難題に直面しました。そうした中、推進室メンバーによる労を惜しむことのない取り組み、ボランティア学生たちによる工夫をこらした企画提案などによって、本学が当初に掲げた目的を実現できたものと思っています。
様々な取り組みの中で、最も苦労したのは、イタリア選手団、難民選手団の事前トレーニングキャンプの受け入れでした。選手たちが安全かつ快適に活動できるようにするために、万全の感染症対策を行うことが必要となったからです。
7月9日から8月3日に所沢キャンパスで実施されたイタリア選手団の事前トレーニングキャンプには、水泳、陸上競技、フェンシング、レスリング等の選手、コーチら233人が参加しました。特に陸上チームによる競技成績は好調で、キャンプ参加者による5個の金メダル獲得という快挙を成し遂げました。
7月14日から7月27日には、国際オリンピック委員会が組織した難民選手団の選手、コーチら27人が早稲田キャンパスにやって来ました。この難民選手団は前回のリオ大会で初めて結成されましたが、開催国で事前トレーニングキャンプを行うのは今回が初めてのことでした。
いずれの事前トレーニングキャンプにおいても、選手団から感染者が出ることはなく、選手および関係者にとって満足のいく事前トレーニングキャンプになったものと思っています。
また、事前トレーニングキャンプの取り組みは、早稲田大学と地域やオリンピック委員会との連携を強めることになりました。イタリアチームのホストタウンである所沢市、埼玉県とは数年にわたる準備作業を通じて改めて絆を強めることができましたし、難民選手団の受け入れ自治体である新宿区、難民選手団の練習施設の一部をご提供いただいた川口市とは信頼関係を強化することになりました。東京2020大会は終了しましたが、イタリアオリンピック委員会、国際オリンピック委員会との連携はこれからも続くものと考えています。特に東アジアで大会が開催された際の支援、学生とアスリートたちとの交流などについては、既に新しい企画が動き出しています。
早稲田大学では、スポーツを通じて国際的プレゼンスを引き上げていくとともに、レガシーをしっかりと受け継ぐことにより、学生、校友、教職員を中心とするすべての早稲田関係者の一体感を醸成していきたいと思っています。