早大アスリート特集第6回目は、女子サッカー日本代表の植木理子選手(スポーツ科学部2年)です。大学のア式蹴球部女子には所属していませんが、日本女子サッカーリーグの日テレ・ベレーザ(以下ベレーザ)に所属し、今年の4月にはなでしこジャパンの一員として国際試合に初出場するなど大活躍中です。今回は植木選手に、サッカーとの出会いや東京オリンピックにかける思いを伺いました。
悔しさが原動力
――競技を始めたきっかけを教えてください
女子サッカー選手は兄弟の影響でサッカーを始めることが多いと思いますが、私は違いました。元々色々なスポーツをやっていましたが、通っていた小学校のグラウンドが広く、休み時間にみんなでサッカーをしていて、そこでサッカーが楽しいと親に言って始めました。
――中学校では女子サッカーのクラブチームである日テレ・セリアス(中学生を対象にした日テレ・ベレーザの下部組織、以下セリアス)に進み、3年時には全国優勝しました
自分の中では、セリアスが一番成長できた年代だと思っています。セリアスの一期生として入ったので、3年間試合に出られる環境にありました。
1年生は東京都の予選リーグで負けて、2年生では全国大会の初戦で負け、成長はできていたけれどなかなか良い結果が残せていませんでした。3年生の時に全国優勝したのですが、その時はサッカーが楽しくて仕方なかったですし、周りの選手とも3年間やってきていたので、それが優勝できた要因かなと思います。
――順調にプレーをするステージを上げてきています
自分の中では順調にいきすぎているというか、正直怖いぐらいです。セリアスから日テレ・メニーナ(中学生・高校生を対象とした日テレ・ベレーザの下部組織。以下メニーナ)に上がれたのも、3年時の全国優勝がなければ上がれていなかったと思います。
メニーナからベレーザに上がるのにも、代表でベレーザのメンバーが多くいなくなった時にメニーナから行ってチャンスを掴めたりするなどうまくいったことの方が多いとは思いますが、上にいくたびに「周りがこんなに上手いんだ」と実感させられます。心が折れるわけではないですが、自分はこんなにもできないんだと悔しいです。でもやっぱり楽しいですね。悔しいという思いが原動力になっているのだと思います。
同年代にも刺激を受ける
――ご自身のプレースタイルをどのように分析していますか
元々足が早くてドリブルが得意なので、それがストロングポイントだと思います。その中でも緩急をつけたり、体の動きで相手を抜かしたり、そういった部分でゴールに向かう姿勢というのは特徴ですね。
――今後磨いていきたいところはありますか
ベレーザの選手たちはなでしこジャパンの選手も多く、上手な人が多いです。もっと上手になりたいと常に思っています。他にもできることが増えたらチームの役割も変わってくるのかなと思います。
――同年代のレベルも上がって刺激を受けていると思います
そうですね。去年U20のワールドカップに行ったメンバーとよく話します。それぞれの場所で活躍しているのを見たり聞いたりしていると、自分も頑張ろうという刺激をもらいます。特に浦和レッドダイヤモンズ・レディースの高橋はな選手は小学校の関東トレセン(トレセン制度:将来有望な選手が選抜されるナショナルトレーニングセンター制度。地区トレセン・都道府県トレセン・地域トレセン・ナショナルトレセンと分かれており、地域トレセンの関東地域にあたる)から一緒で、初めてエリートプログラムに選ばれたタイミングも一緒で、連絡もとっているし旅行にも行く仲です。そういう選手がなでしこに入ったりしていて、まだ一緒にプレーはできていないのですが、「オリンピックも一緒に出られたらいいね」と話すことはモチベーションになっています。
女子サッカーを広めたい
――競技以外での目標はありますか
早稲田大学に入ったのは、女子サッカーを知ってもらいたいという思いからでした。プレイヤーとしても、ピッチ外でも、女子サッカーを広められたらいいなと思っています。
――そう思ったきっかけは
小学6年生の前期までは女子で一緒にサッカーをしてくれる子がいなかったのですが、その年にちょうどワールドカップでなでしこが優勝し、クラスメイトがサッカーに興味を持ってくれました。10人ぐらいの女子が急に集まってきたんです(笑)。昼休みに練習試合をしていたのですが、自分のクラスの女子10人と弟のクラスとで練習試合を毎日のようにしていました。その中の1人が自分とサッカーをしたのが楽しくて、今でもフットサルのチームで競技を続けてくれています。自分の影響でサッカーをやってくれているのは嬉しいですし、「女子サッカーを広めたいな」と思った瞬間でした。
考えるだけでワクワクする
――国外と国内の違いはどのように感じていますか
やっぱりシンプルに早くて強いというのは海外の選手の特徴です。去年はU20ワールドカップ優勝という結果ではありましたが楽な試合はなかったですし、そういった部分ではもっともっと海外の選手とプレーしたいです。
――オリンピックに懸ける想いは他の試合とは違いますか
そうですね。テレビでオリンピックの試合を見てきて、あんな観客の中で自分がやれたらというのは思います。2020年は日本でそれができるまたとないチャンスなので、今からワクワクしています。
――東京オリンピックに向けての意気込みをお願いします
やはり、東京オリンピックでプレーできるというのは自分のサッカー人生において最初で最後のチャンスだと思うので、狙っていきたいです。もちろんチームスポーツではありますが、自分がオリンピックに出てゴールを決めていることを考えるだけでワクワクします。「最高の瞬間なんだろうな」と。それが今の1番の目標ですね。
――最後に、植木選手にとってサッカーとは何ですか
生活の一部というか、なくてはならないものです。サッカー中心に生きていて、「サッカーがあるからこれをする」という考えをしているので、逆にないことは考えられないです。自分の中で最高の瞬間は点をとったときなので、やはりサッカーはなくてはならないものです。
記事:早稲田スポーツ新聞会 大山遼佳
写真:早稲田スポーツ新聞会 石名遥