数物系科学拠点では10月11日、Dan Crisan 教授(インペリアル・カレッジ・ロンドン)による数物系科学コースの学生向けに特別講義を開催しました。この講義では3次元確率オイラー方程式の時間局所解の一意存在や解の延長可能条件を解説していただきました。この講義で扱った3次元確率オーラー方程式は流体の挙動を記述するオイラー方程式にホワイト・ノイズを加えたものであり、流体粒子が不規則に動くことを考慮している点が特徴的です。
- Imperial College London Prof.Dan Crisan
3次元オイラー方程式は Beale らをはじめとする多くの研究結果が知られていましたが、ホワイト・ノイズを加味した確率オイラー方程式の研究は発展途上でした。確率オイラー方程式は確率偏微分方程式の一つであり、従来のオイラー方程式に比べてより実際の物理現象に近い数理モデルであることから近年活発に研究されている方程式の一つです。この講義では、ホワイト・ノイズや流体の渦度の重要性を数値シミュレーションを通じて解説され,適切なラグランジアンを選ぶことで3次元確率オイラー方程式を定式化できることが示されました。また、3次元確率オイラー方程式の時間局所解の一意存在と時間局所解を延長するための十分条件が解説されました。
Crisan 教授は、この研究分野を世界的にリードする数学者であり、これまでに多くの興味深い研究結果を発表されています。講義の参加者の中には、確率偏微分方程式を専門としない学生もいましたが、大変ありがたいことに、Crisan 教授は基礎となるホワイト・ノイズの重要性から丁寧に解説してくださいました。Crisan 教授による特別講義は、確率偏微分方程式の奥深さだけでなく、世界最先端の数学のテクニックも学べる、とても教育的なものでした。