2016年1月18日(月)早稲田大学1号館にてKenneth Schultz教授特別講義を開催しました。
CPPEは早稲田大学SGU事業と共催で、スタンフォード大学よりKenneth Schultz教授を招聘し、1月18日に特別講義を開催しました。Schultz教授は国際政治の理論・実証研究の第一人者であり、特に安全保障、民主主義と紛争に関する研究で顕著な功績を収められています。また、その功績によって、国際政治研究で最も優れた若手に贈られるKarl Deutsch Awardを受賞されています。当日は朝から降雪が続くあいにくの天候でしたが、学部生や大学院生を中心に多くの人が特別講義に参加しました。
特別講義は「領土紛争から推論できる政府の意図とは」と題し、Schultz教授が現在行っている研究に関して発表していただきました。Schultz教授は、領土獲得を目的として行われる紛争において、しばしば領土全体が要求されないことを指摘します。その際、領土を要求した政府が本当に部分的にしか欲していないのか、それとも少ない要求で譲歩を引き出しより多くの領土を獲得しようと目論んでいるのか判断するのは困難です。そのような状況をバーゲニングモデルによって分析し、より少なく領土を要求することで、その要求に信頼性を担保させていると結論しました。
講義ではGoogle Earthを用いて領土紛争の座標などの地理情報をデータ化した上で、領土紛争がどのように国境線を動かしたかを実際に見ることができ、とても興味深いものでした。また、Schultz教授の研究の進め方を垣間見たことで、国際政治における実証分析の面白さを改めて実感することができました。
講義終了後には、Schultz教授を交えた昼食会を開催しました。講義の内容に関して学生から積極的に質問がなされ、Schultz教授との間で活発な議論が展開されました。短い時間ではありましたが、学生にとっては権威ある研究者と直接話す貴重な機会となりました。
また、1月18日の特別講義に先立ち、1月15日に栗崎周平教授の学部ゼミにおいて、Schultz教授の前で3人の学生が研究発表を行いました。国際政治経済学科4年の西亮介さんは、防衛同盟の危機外交における効果に関して、ゲーム理論を用いた分析を発表しました。続いて、政治学科4年のヤナオトランさんは、領土紛争における住民の戦略的役割に関するゲーム理論分析を、経済学科4年の桔梗谷光史さんは、戦闘効率性に対する政治制度の効果に関する計量分析を発表しました。Schultz教授からは、分析内容やプレゼンテーションの方法に関して各学生にフィードバックをしていただきました。当日は、栗崎ゼミ内外から多くの人が集まり、世界的な研究者がどのような視点で研究を考察するのか、真剣に耳を傾けていました。