早稲田大学・SGU実証政治経済学拠点は、ミラノ大学よりLuigi Curini准教授を招聘し、2015年9月末から11月までの第3クォーターに、「Polimetrics-Advanced Scaling Techniques in Political Science」という科目(2単位)を開講しました。Luigi Curini氏は、2002年にミラノ大学でPh.D号を獲得し、現在投票の空間理論、ソーシャルメディア分析及びセンチメント分析などの領域に活躍している研究者です。
この科目は、政治学研究科の大学院生向けに、政党の政策位置推定に関わる理論及び分析方法を教えるものでした。授業は、理論と実践を両方とも重視し、前半の授業がCurini氏による講義であり、後半の授業が主に受講者による実践という形で構成されました。講義では、投票の空間理論、そして政党の政策位置の推定と関連するさまざまな理論モデルが紹介されました。実践の部分においては、学生は実際にStata、R及びCyberSenateなどの分析ソフトを操作しながら、自ら政党の政策位置を推定してみました。さらに、受講者の関心に応じて、ソーシャルメディアの分析にも焦点が当てられ、ビッグデータ分析に用いられたさまざまな技法が説明されました。
また、Curini氏は、11月24日に行われたSGUセミナーで、ISIS(イスラム過激派組織)に関する興味深い研究成果を報告しました。この研究は教師学習による集計型センチメント分析 (Supervised Aggregated Sentiment Analysis)というアプローチを用いて、世界53か国においてアラビア語で書かれたISISと関わるツイートを分析しました。その結果、ISISに対するネガティブなコメント数とその国の出身であるISISの外国人戦闘員の数との間には正の関係があることが発見されました。昨今、ISISが持つソーシャルメディアのアカウントを停止することが各国で検討されていることに対して、むしろ戦闘員を増やすことにつながるとCurini氏は懸念を述べました。発表の後も、セミナーの参加者から、センチメント分析や分析結果に対して多く質問が出て、Curini氏と活発な議論が交わされました。