7月27日、香港城市大学 (City University of Hong Kong) より、コーポレート・ファイナンスを専門とする新進気鋭の経済学者であるXueping Wu准教授をお招きし、“The Sensitivity of Investment to Cash Flow: A Firm Growth Type Explanation” と題した研究報告会を開催しました。この研究報告会は、早稲田大学SGU実証政治経済学拠点が主催、産業経営研究所、高等研究所との共催にて行われ、商学学術院の鈴木一功教授が司会を務めました。
研究報告会では、Wu准教授は、香港中文大学のChau Kin Au Yeung氏との共同研究の成果を発表しました。研究では、企業の抱えるリスクのタイプによって資本政策が影響を受けること、また、企業の抱えるリスクのタイプは長期に渡って安定的であることが報告されました。また、少なくとも米国市場のデータからは、成長機会のある企業にとって資金制約が見られるとは言えないことを示唆する実証分析の結果が報告されました。伝統的なコーポレート・ファイナンスの理論では、企業が選択する資金調達の手段は、その調達コストの低さから①キャッシュフロー(内部留保)、②負債、③株式(増資)の順番で選好されると考えられてきました(Myers, 1984; Myers and Majluf, 1984)。これに対して、Wu准教授らの研究で示された実証結果は、資金調達の選好は全ての企業に一律ではなく、成長性の高い企業、特に成長機会に関して不確実性の大きい企業においては、外部からの株式(増資)による資金調達が選択され、既存の事業の成長性が低い企業では、負債による資金調達が選択されている可能性を示唆するものでした。
研究報告会中には、Wu准教授と本学教員(商学学術院 宮島英昭教授、樋原伸彦准教授、政治経済学術院 小倉義明教授ら)による熱気を帯びた意見交換が行われ、その様子を学生達が熱心にメモを取りながら耳を傾ける姿が見られました。会場は白熱した空気に包まれていました。この研究報告会以外にも、Wu准教授は、大学院生を対象に全5回の特別講義(テーマ:企業金融の諸問題)と計4回の個別指導を行いました。セミナー終了後には、Wu准教授と気心の知れた学生達との間で談笑する様子が見られるなど、緊張感の中にも和やかな雰囲気が感じられる研究報告会となりました。