Organization for Regional and Inter-regional Studies早稲田大学 地域・地域間研究機構

その他

日欧比較基本権理論研究所(2018.1.22終了)

※日欧比較基本権理論研究所は、2018年1月22日をもって終了いたしました。

所長

西原 博史  [ にしはら ひろし ]
社会科学総合学術院  教授

概要

  • 社会的包摂と権利
  • 安全目的の規制と人権制約基準

詳細

人々の自由と安全を守るために、基本的人権は何を保障するのか。
各国法制度及び国際的な人権保障あり方の中から、侵害されることがあってはならない一人ひとりの人間の権利が未来に向けて確保される道筋を探り、その理論的な基盤を明確化する。
基本的人権に関する理論と実務は、20世紀後半に大きな発展を見せた。すなわち、民主的な多数決であっても否定することのできない、一人ひとりの人間にとって侵害を容認できない基本的な権利があるという認識が―政治的権力の基本的な正当性に関わる問題として―共有されるに至った。ただ、具体的にどのような内容の権利が、どのような強度において、どのような制約原理を伴いながら保障されるのか、という個別問題に関しては、なお合意は達成されていない。
この状況の中で本研究所は、先進的な法治国および国際人権システムにおける理念的・制度的比較を通じて、必ず保障されなければならない個人の基本権の内容及び保障制度に関する研究を行う。その際、一方では個人の「自律」可能性の条件保障が基本の核となることを意識し、その意味で国家の不可侵領域を形造る基本権の意義を重視するとともに、個人の自律可能性の「条件保障」として個人の生活条件に関してどの範囲で「権利」が成立可能かという、社会経済的権利の成立要件に関する問題にも解答を出すことを目標とする。

研究報告

2015年度の主な活動実績

研究テーマ

A:社会的包摂の思想を個人の権利と接合させる方法について
B:安全目的の国家による規制の許容条件法理のあり方について

  • [研究概要]
    人々の自由と安全を守るために、基本的人権は何を保障するのか。本研究所は、先進的な法治国および国際人権システムにおける理念的・制度的比較を通じて、一人ひとりの人間の権利として個人の自律可能性の条件保障を確保する法的・制度的な道筋を探り、その理論的な基盤を明確化する。
    その目的のために本研究所は当面、上記A、Bという二つの研究テーマに関わるプロジェクトを設定し、考察を深める。
  • [2015年度活動報告]
    2015年度は、B課題に関連したテーマで所長が獲得している科学研究費補助金(基金)の最終年度であったため、研究成果の取りまとめを行った。その際、比例原則の様々なモデルを踏まえて法的措置の効果測定に関わる事実認識を対象とする審査手法と、価値の優先性に関わる価値判断を対象とする審査手法が構造的に別個のものとして構築されることを明らかにしてきた所長=研究代表者の研究が主要な研究成果となった。英語、ドイツ語、日本語で発表された論文等を取りまとめ、また法治国原理の意義に関する新たな研究を付け加えつつ、最終報告書を作成した。
    また2016年度に向け、Aの課題に関する共同研究の準備を行った。特に、過程としての社会的排除の段階において排除する側の責任を問い得る基本的人権保障の枠組みの構築をめざし、「間接差別」法理の意義と射程を具体化することの中に手がかりが見出し得るとの視角のもと、研究を進めた。将来的な共同研究を担ってもらうことを期待しながら、植木淳氏(北九州市立大学教授)・白水隆氏(帝京大学講師)をセミナー報告者として迎え、間接差別論の位置づけに関する実質的な議論を深めることができた。
  • [セミナー開催記録]
    第26回(2015年8月6日)~第29回(2016年1月7日)まで4回。
    白水隆氏を招待した第27回(2015年11月3日)を含む。

2011年度の主な活動実績

  • 2011年度は、研究課題Bに関わる科学研究費補助金による研究プロジェクトの3年目として、前年度来の研究成果、特に2010年12月の国際憲法学会第8回世界大会報告に結実した規制許容条件法理の体系的な位置づけに関する理論と、それに対する内外の理論的反応を踏まえ、それを精緻化して論文として発表するためのプロセスが研究の中心を占めた。また、2012年3月の韓国における喫煙規制に関するシンポジウムでの研究代表者の報告においても、追加的な研究成果が明らかにされた。
  • また研究課題Aに関しては、共同研究を継続することにより、「社会的排除の克服」および「社会的包摂」という観点が憲法学、労働法学、社会保障法学などの様々な分野・領域において重層的な意味をもって使われている状況の認識を深め、個別領域における当該観点が具体的な法理に発展する構造の研究を進めた。
  • 以下のセミナーが開催され、研究協力者による研究成果の共有と分析枠組の精緻化に関わる議論が行われた。
    ●6月2日 第7回セミナー
    淡路智典(社学研博士後期課程)「比例原則と合理的関連性審査の関係」(B)
    ●7月21日 第8回セミナー
    安原陽平(社学研博士後期課程)「国家との関係にみる憲法上の権利保障に関する公務員像の諸相」(B)
    黒岩容子(法研博士後期課程)「EU法におけるポジティブ・アクション法理の展開」(A)
    ●7月28日 第9回セミナー
    淡路智典(社学研博士課程後期)「比例原則における必要性審査の意義」(B)
    杉山有沙(社学研博士課程後期)「雇用における障害者の平等実現手段としての積極的措置の法構造」(A)
    ●10月20日 第10回セミナー
    淡路智典(社学研博士課程後期)「比例原則の構造とArgmentationslast」(B)
    ●10月27日 第11回セミナー
    杉山有紗(社学研博士課程後期)「障害者差別禁止法理が使用者に求める合理的配慮義務の射程と判断枠組み」(A)
  • 西原博史「リスク社会における管理目的の介入と個人の自由―喫煙の権利の位置づけを例として」延世大学校法学専門大学院シンポジウム『Smoking Regulation and Legal Issues for Health Care Financial Stability』2012年03月21日 於:延世大学(大韓民国・ソウル)
  • 論文_西原博史
    ●「社会的排除の構造と形式的平等論の新たな理論的可能性」(A) 樋口陽一、森英樹、高見勝利、辻村みよ子、長谷部恭男編『国家と自由・再論』〔日本評論社、2012年〕pp.167~188.
    ●“Challenges to Proportionality Principle in the Face of‘Precaution State’and the Future of Judicial Review”, 30 Waseda Bulletin of Comparative Law (2011), pp.7~25.
    ●「『人権』規範の構造と国際人権の憲法学的レレヴァンス」国際人権22号(2011), pp.51~55.
  • 論文_黒岩容子
    ●「妊娠・出産保護に関するEU法の展開(2)」早大法研論集139号(2011), pp.93-118.
    ●「EU法におけるポジティブ・アクション法理の展開とその意義(1)」早大法研論集141号(2012),pp.105-129.
  • 論文_杉山有沙
    ●「障害者差別禁止法理における平等取扱と合理的配慮義務の関係」早大社学研論集18号(2011), pp.220-235.
    ●「障害者差別禁止法理が使用者に求める合理的配慮義務の射程と審査枠組」早大社学研論集19号(2012), pp.
    ●「障害者差別禁止法理における合理的配慮義務と公的支援制度の関係」早大ソシオサイエンス19号(2012), pp.

2010年度の主な活動実績

  • 2010年度は、研究課題Bに関わる科学研究費補助金による研究プロジェクトの2年目として、前年度来の研究成果を踏まえ、2010年12月に Mexico-City で開催された国際憲法学会第8回世界大会において、安全目的の規制が許容される条件法理としての比例原則の意義と限界について部会報告を行い、各国における同原則の展開と重ね合わせながらの討論を通じて有益な示唆を得た。
    また、同研究テーマに関連して、具体的には比例原則の構造理解をめぐる論争的な問題につき、科学研究費研究の研究協力者である大学院社会科学研究科博士後期課程の淡路智典による研究成果が明らかにされた。
  • また研究課題Aに関しては、共同研究を継続することにより、「社会的排除の克服」および「社会的包摂」という観点が憲法学、労働法学、社会保障法学などの様々な分野・領域において重層的な意味をもって使われている状況の認識を深め、個別領域における当該観点が具体的な法理に発展する構造の研究を進めた。
    ●2月14日 第6回セミナー(テーマA)杉山有沙氏(社学研博士後期課程)
    「障害者差別禁止法理における合理的配慮義務の意義」
    なお、3月に予定された第7回、第8回のセミナーは東日本大震災の影響で2011年度に延期。
  • 発表・出版等_西原博史
    ●「貧困・差別問題と憲法学」戒能通厚、石田眞、上村達男編『法創造の比較法学』〔日本評論社・2010年〕116-145頁。
    ●「貧困・差別問題と憲法学」山内敏弘先生古稀記念『立憲平和主義と憲法理論』〔法律文化社・2010年〕272-287頁。
    ●‘Challenges to Proportionality Principle in the Face of “Precaution State” and the Future of Judicial Review’, Presented  at: 8th World Congress of the International Association of Constitutional Law, Workshop 9, Mixico-City, December 8th, 2010.
  • 発表・出版等_黒岩容子
    ●「EU法における男女同一賃金原則」早稲田法学会誌61巻1号(2010年10月)191-243頁。
  • 発表・出版等_淡路智典
    ●「違憲審査基準としての比例原則と統制密度」早大社学研論集16号(2010年9月)210-219頁。
    ●「憲法上の比例原則の構造と段階説」早大社学研論集17号(2011年3月)118-131頁。
  • 発表・出版等_杉山有沙
    ●「障害者差別禁止法理の形成と『障害』モデル」早大社学研論集16号(2010年9月)220-234頁。
    ●「障害者差別禁止法理における『障害』と『障害者』の意味」早大社学研論集16号(2010年9月)145-160頁。

2009年度の主な活動実績

  • 2009年度は、研究課題Bに関わる科学研究費補助金による研究プロジェクトの初年度として、これまでの所長の基本権理論に関わる研究成果のとりまとめを行うとともに(西原博史『自律と保護』〔成文堂、2009年〕)、それを踏まえた新たな理論展開に向けての課題整理を行った。
  • また研究課題Aに関しては、共同研究の立ち上げを行い、「社会的排除の克服」および「社会的包摂」という観点が憲法学、労働法学、社会保障法学などの様々な分野・領域において重層的な意味をもって使われている状況を確認し、今後の研究課題を整理するとともに、特に性差別禁止および障害者差別禁止の法理の形成と発展に関わる意義について立ち入った共同研究を推進させた。
    ●1月21日 第1回セミナー(テーマA) 黒岩容子氏(法研博士後期課程)
    「EU法における男女同一賃金原則の展開」
    ●1月28日 第2回セミナー(テーマA) 中里満理子氏(法研博士後期課程)
    「フェミニズムとしての関係性の権利」

研究者

西原 博史 (社会科学総合学術院教授)
清水 敏  (社会科学総合学術院教授)
浅倉 むつ子 (法学学術院教授)
遠藤 美奈 (教育・総合科学学術院教授)
久塚 純一 (社会科学総合学術院教授)

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