所長
劉 傑 [ りゅう けつ ]
社会科学総合学術院 教授
概要
東アジアにおける和解のための研究
詳細
東アジアにおいては、1970年代までに政府レベルの「和解」の枠組みが一応構築された。しかし、その「和解」が国民レベルの和解に繋がらなかった原因は、歴史家(知識人)が作り出す和解のための「知」が機能しなかったことである。このような認識から、国家間の和解における歴史家(知識人)ネットワークの意義を検証することを本研究の目的とする。この研究は、歴史学と国際関係学、地域研究などの学問分野と融合を促進し、和解学の構築に貢献するものと考えられる。具体的には、(1)国家間の歴史認識問題を各国の国内問題としてもとらえ、各国の政治、社会状況と歴史認識の関係を検証する。(2)戦後の歴史家(知識人)ネットワークを三つの時期に分けて分析し、各時期の歴史家とそのネットワークレベルの「和解」が80年代以降崩れていった要因を解明する。(3)各国の歴史認識に大きく影響する「国史」研究者の対話を検証し、そのネットワークを東アジアの公共財にする方法を追求する。
所長の劉傑は本研究計画の基盤として、学外の研究協力者の澁谷由里、段瑞聡、馬暁華と国際日本文化研究センター主催の共同研究「日本の軍事戦略と東アジア社会」に参加し、成果をまとめた。また、アジア歴史資料センター所長の波多野澄雄と共に、2016年12月に国際シンポジウム「和解への道-日中戦争の再検討」を主催し、日中戦争史研究がアジアの和解に何を貢献するのかを検討した。本シンポジウムでは、上記の学外研究者とともに本研究所の所員も企画運営に参加し、西野可奈・野口真広・鄭成・黄斌は各報告セッションの司会を務めた。
本研究を進めるなかで、歴史家ネットワークの交流や、国史研究者の対話の内容と成果を、雑誌『ワセダアジアレビュー』を活用し、広く国民に知らせる。また、『国境を越える歴史認識』などの日中同時出版の経験を生かして、(仮称)「東アジア知的プラットフォーム」を中心にウェブサイトでの多言語による成果発信を積極的に行う。
ワークショップ
「日本と中国— 記憶との共生」 詳細
顧問
- 平野 健一郎 早稲田大学名誉教授
研究所員
- 浅野 豊美 政治経済学術院政治経済学部教授
- 奥迫 元 社会科学総合学術院社会科学部准教授
- 桑原 太朗 社会科学総合学術院社会科学部助手
- チン ロ 社会科学総合学術院社会科学部准教授(任期付)
- 駱 豊 社会科学総合学術院社会科学部助教
- 劉 傑 社会科学総合学術院社会科学部教授
招聘研究員
- 黄 斌 早稲田大学社会科学部非常勤講師
- 金戸 幸子
- 黄 自進 台湾中央研究院近代史研究所研究員
- 高 翔 公益財団法人笹川平和財団海洋政策研究所
- 小林 義之 公益財団法人笹川平和財団笹川日中友好基金主任研究員
- 徐 興慶 台湾東呉大学教授
- 鄭 成 兵庫県立大学環境人間学部教授
- 西野 可奈 東京工業大学国際室国際連携プランナー特任准教授
- 野口 真広
- 花井 みわ 早稲田大学社会科学総合学術院非常勤講師
- 羽場 久美子 神奈川大学教授
- 裵 姈美 韓国独立記念館研究員
- 葉 亭テイ 台湾国史館館員