- 日 時
2021年1月29日(金)/ 13:00-17:10 - 開催方法
Zoom Webinarによるオンライン開催 - 言 語
日本語、英語(同時通訳あり) - 登壇者情報
講演内容
波乱に満ちた米国大統領選挙を経て、移民対策強化を公約としていたトランプ政権が終わりを告げた。しかし、アメリカ国民の間に存在する亀裂が明らかになった今、アメリカ社会はどうなっていくのか?更に、2020年はコロナ感染症流行により、特に欧州において移民の脆弱性が浮き彫りになった。今回のシンポジウムでは、各分野を専門とする研究者を招き、変容しつつある欧米社会を念頭に置きながら、世界がどのような方向に向かうのかについて考えた。
はじめに、カルフォルニア大学サンディエゴ校のRafael Fernández de Castro教授より、「Biden and U.S.-Mexico Relations」をテーマとした基調講演が行われた。同講演では、バイデン政権の対メキシコ政策や米墨関係についての考察と将来の米墨関係に関する明るい展望が示された。
セッション1は、吉野孝(早稲田大学)の司会のもと、米国の観点から3名の報告者が発表を行った。山崎眞次(早稲田大学)報告では「『想像の共同体』MexAmericaの構築」というタイトルで、メキシコ政府による新旧移民政策にかかる比較と考察、同国における村おこしのためのマッチングファンド(3x1プログラム)の紹介、そして同国での新型コロナウイルス感染に関する深刻な状況が報告された。前嶋和弘(上智大学)報告では「アメリカの移民政策と今後」のテーマで、トランプ政権・バイデン政権による移民政策の比較分析がなされ、今次の米国大統領選挙の結果、分断がより明確化されたとの報告があった。渡辺暁(東京工業大学)報告では「ラテンアメリカ諸国からアメリカ合衆国への移民:近年の傾向」というタイトルで、2006年頃の移民の活躍の時代、2008-2019年のリーマンショック後のメキシコ系移民の減少と中米移民キャラバンといったメキシコ系移民の行動を時系列的に紹介した。更に、2020-2021年の新型コロナウイルスの移民への影響について述べた上で、地元に尽くし同ウィルス感染が原因で亡くなったフェリペ・タピア氏への哀悼の意で締めくくられた。質疑応答セッションでは、聴衆の方々から、「米墨国境に壁を建設するというトランプ政権の政策の実現可能性」、「バイデン政権の今後の対移民政策」、「移民キャラバンの衣食住」、「非メキシコ系移民からみた『想像の共同体』という概念」等、多数の質問が寄せられ、それぞれ報告者から回答がなされた。
セッション2では、福田耕治(早稲田大学)の司会のもと、欧米諸国の観点から3名による報告がなされた。渡邊啓貴(帝京大学)報告では、「移民と統合-ポピュリズムとEU(フランスを中心に)」をタイトルとして、フランスにおける移民問題、ホームグロウンテロリストの存在、そして極右政党の拡大について考察が加えられた。伊藤さゆり(ニッセイ基礎研究所)報告では、「英国のEU離脱の経済的な帰結と日本経済への影響」というタイトルで、英国のEU完全離脱の影響について説明したうえで、新型コロナウイルスとEU離脱の影響が共振し所得や地域の格差を増幅する恐れが示された。更に、EU離脱後の英国の成長戦略と今後の日英関係に関する展望が報告された。土谷岳史(高崎経済大学)報告では、「シェンゲン協定とCOVID-19」をタイトルとして、コロナ以前のシェンゲン・ガヴァナンスの状況を踏まえつつコロナ禍でのシェンゲン協定をめぐるEUおよび加盟国の対応が報告された。その後の質疑応答セッションでは、冒頭、司会者と報告者間で「フランスの移民施策とシェンゲン協定」、「英国における高技能移民労働者導入政策、EU離脱後の移民流出」、「EUにおける移民政策への新型コロナウイルスの影響」等について議論した後、聴衆の方々と報告者の間で「フランス極右政党の支持層」、「フランス極右政党拡大への米国政権交代の影響」、「新型コロナウイルス終息後の英国経済」、「ヨーロッパにおける移民と少子化問題の関係性」、「EU法等に対するEUの一般市民の捉え方」等について質疑応答がなされた。