Comprehensive Research Organization早稲田大学 総合研究機構

その他

先史考古学研究所
Institute of Prehistoric Archaeology

研究テーマ

世界的な視野から考察する日本先史社会の研究

分野:文化

研究概要

今までの研究成果を通じて、代表者が推進してきた「民族考古学」的方法が縄文社会研究の正当な方法論として一般に周知されてきた。2015年までの研究では、「縄文土器型式」が成立する社会的背景や製作者の行動的側面の研究を進展させてきた。その最後の課題として、土器の「型式変化」の課題が残されている。それについては従来の学説を覆す民族誌の事実を多数発見しており、今後は5年間をかけてパプアニューギニアの現地調査を継続し、その証明に当たる予定である。
縄文土器型式は、一定の地理的範囲に居住する多くの土器製作者すべてによって改変されると信じられてきたが、民族誌調査では、土器型式の変化を主導する一人の製作者がおり、その人物が型式変化において重要な役割を演じていることが判明した。しかも、単に制作技術が断然優れているという技術的要因もさることながら、その人物が持つ地域社会のリーダーとしての宗教儀礼観や世界観が土器型式の改変に当たって重要な意味を持っていることが解っている。縄文土器の型式変化を考える上で、この民族誌的事実は重要な意味を持っているので、亀ヶ岡式土器の型式変遷の実相と照合しながら、縄文式土器の型式変化について考えていく。また親族組織の変化や出自体系の変化が土器型式の変化とどのように関連するのかについて、縄文中期の加曾利E式土器、環状集落との関係を明らかにする計画である。

研究報告

【2019年度】
本年度は、科研費(基盤A: 縄文時代における氏族制社会の成立に関する考古学と集団遺伝学の共同研究)に関する調査・研究に集中した。主な活動は以下の通りである。
(1)研究代表者としての考古学的調査・研究 
(2)専門的知識の供与に関する調査 
(3)分担研究者への指示、調整などがある。
このうちここでは(1)代表者としての考古学的調査について報告する。
本研究の主課題である縄文時代中期から後期への移行過程の解明と社会変動について調査研究した。環状集落の解体に端を発する集団の分散化と氏族制社会の出現に関するプロセスを、集落論、土器論、遺物論の立場から資料を分析した。これらについて、高橋は今までの研究成果に基づいて学会などで講演し論文として公表した。4月に岡山大学考古学研究会第65回総会の記念講演(招待講演)で「縄文時代の土器生産と権威の発生―氏族社会の民族誌から見た土器型式の成立と流通―」を講演した。また地方教育委員会からの要請に基づき、10月に「エリ穴遺跡と縄文後晩期の社会―近隣諸県との比較からー」(長野県松本市教育委員会)、11月に「未開社会における耳飾の民族誌」(福井県あわら市教育委員会シンポジウム)などで講演し、論文などで公表した。(科研費研究URL: http://w3.waseda.jp/prj-jomonjidai/status2019/)

研究成果
(論文)
高橋龍三郎2019「未開社会における耳飾りの民族誌」『桑野遺跡』あわら市埋蔵文化財調査報告第3集 pp212-218 福井県あわら市教育委員会
高橋龍三郎2019「未開社会における耳飾の民族誌」『桑野遺跡から見た縄文世界』pp83-85 あわら市教育委員会 日本玉文化学会
高橋龍三郎2019「縄文時代の土器生産と権威の発生―氏族社会の民族誌から見た土器型式の成立と流通―」『権力とは何かー生産と流通から考えるー』岡山大学第65回総会・研究集会講演会 発表要旨集pp1-10
高橋龍三郎2019「縄文時代の土器生産と権威の発生―氏族社会の民族誌から見た土器型式の成立と流通」『考古学研究』第66巻第3号 pp23-35岡山大学考古学研究会
高橋龍三郎2020「縄文中期社会と諏訪野遺跡」『平成27年度ほるたま考古学セミナー特別講演録』埼玉県埋蔵文化財調査事業団 埼玉県教育委員会 pp73-100
高橋龍三郎・佐藤亮太・比留間絢香・隈元道厚2020「パプアニューギニアにおける民族考古学的研究(16)」『史観』第182冊

(学会発表)
高橋龍三郎「未開社会における耳飾の民族誌」桑野遺跡シンポジウム『桑野遺跡から見た縄文世界』」2019年10月6日 あわら市民文化研修センター 大ホール 福井県あわら市教育委員会

(講演会)
高橋龍三郎「縄文社会の氏族制の成立に関する研究と課題」早稲田大学考古学会2019年度総会講演 2019年4月13日(午後)早稲田大学
高橋龍三郎 「縄文社会研究にはたす山梨県遺跡の役割―氏族制社会の成立に向けた中期の歩み―」2019年4月13日(午前中)山梨県立考古博物館講演会
高橋龍三郎2019年「石器石材採掘坑の出現に関する比較と民族誌」『岡谷縄文シンポジウム』9月28日 岡谷市立美術考古館主催 テクノプラザおかや 大研修室・展示場 【基調講演】
高橋龍三郎 2019年「縄文時代の土器工芸の発達を社会背景から考える」第37回企画展「縄文文化の頂点」展講演会 山梨県立考古博物館 2019年11月17日 【記念講演】
高橋龍三郎2019年「エリ穴遺跡と縄文後晩期の社会―近隣諸県との比較からー」松本市教育委員会 エリ穴遺跡重要文化財指定記念講演会2019年8月24日 【記念講演】

(招待講演)
高橋龍三郎2019年「縄文時代の土器生産と権威の発生―氏族社会の民族誌から見た土器型式の成立と流通―」『権力とは何かー生産と流通から考えるー』岡山大学第65回総会・研究集会記念講演 2019年4月20日
高橋龍三郎2019年「これからの縄文考古学と山梨県遺跡」『早稲田大学地域交流フォーラム in 山梨』6月29日 ホテル談露棺 山梨稲門会講演会

(特別寄稿)
高橋龍三郎「縄文土器工芸の発達を社会背景から考える」『縄文文化の頂点』第37回特別展カタログ 山梨県立考古博物館 10月 pp72-73

(科研費研究URL: http://w3.waseda.jp/prj-jomonjidai/status2019/)

【2018年度】
 所長の高橋は本学の特別研究期間制度の適用を受け、4月より英国East Anglia 大学Sainsbury研究所に客員研究員として在籍し、研究活動を実施した。平成31年度の科研費基盤A(課題名)「縄文時代の氏族制社会の成立に関する考古学と集団遺伝学の共同研究」に採択され、この一年間は英国において同課題に関する研究を実施した。特に縄文社会に関するテーマでケンブリッジ大学リラ・ジャニク講師、イーストアングリア大学サイモン・ケーナ教授、秋田国際大学根岸洋准教授などと共同で国際シンポジウム”Jomon Transition in Comparative Context”を開催した。高橋はシンポ全体をとりまとめると同時に” Archaeological indicators of the emergence of clan systems in the Late Jomon period ” と題して研究発表した。分担研究者の米田穣(東京大学))も” Contrasting patterns of human diet from Jomon to Yayoi”と題する発表を行った。そのプログラムおよび発表内容は下記のURLに収納してある。
 また千葉市との受託研究「加曽利貝塚三次元測量・地下レーダー探査調査(Ⅱ期)」を実施し、2018年8月~9月にかけて、3次元地形測量および地中レーダー探査を実施した。研究書籍、招聘講演、雑誌論文などについては早稲田大学研究者データベースに掲載した。
科研費ウェブサイト:http://w3.waseda.jp/prj-jomonjidai/

【2017年度】
フィールド調査
〇 パプアニューギニアにおける民族考古的調査(2017年3月10日~3月21日)
 2017年3月10日~21日にかけて、パプアニューギニア、ミルンベイ州、イーストケープトパ地区およびノルマンビー島において、女性土器製作者による土器製作に関する聞き取り調査を実施した。今回の大きな目的は、土器製作者の女性がもつ世界観を明らかにすることにあり、女性だけでなく男性たちからも聴き取りを行った。特に土器型式が、有能な製作技術をもつ一人の女性が変革することを以前の聞き取り調査で確認しており、その女性が如何なる特性において、土器型式を変革できるのかについて、精神世界に深く踏み込んで探る必要からであった。その結果、その女性は土器製作技術において秀出ているのみならず、死霊観や人の死後に関するイデオロギーにも詳しい人物であることが判明した。土器といえば、一般に日常の食料を調理するための容器を念頭に置くが、実は土器はそれのみでなく、死後の葬送儀礼や遺体の処理にも使われているらしく、その側面において、土器作りは著しく精神世界と深く結びついているからこそ、一部の特別な女性が関与するのである。一般にメラネシアを含むオセアニアでは、そのような女性は魔女(witch)と呼ばれ、地域において突出した立場を築いていることが多い。土器型式を変革しうる一部の女性とは、まさにそのような女性なのである。これから土器作りの技術面だけでなく、精神世界との深い繋がりを解明していかないと、土器型式の成立や型式変化について重要な視点を見落とすことになりかねない。この事実の確認は、翻って縄文土器を製作した人々の性格や、型式の変化を考える上で大変重要な情報を提供してくれた。
〇 千葉県千葉市加曽利貝塚の3次元測量・地中レーダー探査調査
(2017年8月6日~8月19日)
千葉市教育委員会との受託契約に基づき、2017年度に国の特別史跡に指定された千葉市若葉区加曽利貝塚の北貝塚および南貝塚の3次元地形測量と地中レーダー探査を行い。縄文時代中期に形成された北貝塚、縄文時代後期に形成された南貝塚の貝層堆積状況と、過去の発掘トレンチの状況について調査した。本調査は千葉市と高橋を代表者として受託契約を締結し、相互の契約に基づきながら研究によるものである。千葉市教育委員会、千葉市埋蔵文化財センター、早稲田大学考古学研究室、先史考古学研究所などの緊密な連携のもとで共同的に調査・研究を進めた。
 実際に調査は夏期休暇を利用して、早稲田大学文学研究科大学院生と、文学部考古学コースの学生達と合宿をしながら実施した。
その結果、北貝塚(中期)の北側斜面地を中心に3200㎡を3次元測量した。また南貝塚(後期)においても、千葉市埋蔵文化財センターとの共同調査により、3500㎡を測量した。また地中レーダー探査では、南貝塚で発掘調査に先立って2400㎡を調査した。その結果、貝層の残存状態の概要が把握された。また、かつてその一部が検出されていた大型住居らしき竪穴遺構があることがほぼ確実となった。これについては千葉市埋蔵文化財センターとの連携により、2018年度も発掘調査を継続することで合意している。

〇 研究成果の公表について
研究成果については、学術雑誌への論文公表や、学会発表、招待講演会などの場において学術成果を公表している。2017年度に成果を公開したものには、以下のものがある。

研究成果
[論文]
高橋龍三郎・菅谷通保・西野雅人・松田光太郎2017「地中レーダー探査(GPR)は加塚の実態をどこまで明らかにできるかー加曽利貝塚の探査を通じてー」『3D考古学の挑戦-考古遺物・遺構の三次元計測における研究の現状と課題』pp.72 -84
高橋龍三郎・根岸洋・平原信崇・佐藤亮太2017「パプアニューギニアにおける民族考古学的研究(15)」『史観』第178冊pp167-199
高橋龍三郎2017「パプア・ニューギニアの土器作りと縄文土器」『進化する縄文土器』長野県立歴史館 pp.62-70
高橋龍三郎「パプアニューギニアの民族考古学研究総論」『日本考古学協会第87回総会研究発表主旨』pp.78-81

[学会発表]
高橋龍三郎2017「パプアニューギニアにおける民族考古学総論」第87回日本考古学協会総会発表  セッション2『パプアニューギニア民族誌研究から縄文土器型式の成立をさぐる』を主催・担当 2017年5月23日 大正大学
高橋龍三郎・菅谷通保・西野雅人・松田光太郎2017「加曽利貝塚の3次元測量及びレーダ探査報告―加曽利貝塚の探査を通じてー」『3D考古学の挑戦-考古遺物・遺構の三次元計測における研究の現状と課題』大隈講堂 2017年10月28日

[講演会]
高橋龍三郎2017「パプア・ニューギニアの土器作りと縄文土器」長野県立歴史館2017年10月28日
高橋龍三郎2017「縄文後期社会の特質と本上遺跡」埼玉県伊奈町教育委員会主催 2017年11月15日
高橋龍三郎2017「土器製作とパプアニューギニア社会―パプアニューギニアとの出会い展によせてー」 4月17日 早稲田大学文化推進部
高橋龍三郎2018「縄文時代の社会と宗教―考古学から見た関東地方の縄文時代後晩期社会について―」相模原市教育委員会 相模原市ハテナ館 2018年3月10日

所長

高橋 龍三郎[たかはし りゅうざぶろう](文学学術院)

メンバー

【研究所員】
高橋 龍三郎(文学学術院教授)
近藤 二郎(文学学術院教授)
城倉 正祥(文学学術院教授)
田畑 幸嗣(文学学術院教授)
寺崎 秀一郎(文学学術院教授)

【招聘研究員】
坂口 隆(北海道大学埋蔵文化財調査センター特定専門職員)
柳澤 清一(千葉大学文学部史学科教授)

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WASEDA University

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