WIAPS研究会

第53回アジア太平洋研究センター(WIAPS)研究会

開催日時 2017年10月9日(月)12:15-12:50
場所早稲田大学19号館(西早稲田ビル)7階713会議室
参加資格WIAPS専任教員・助手, WIAPS受入の交換研究員・訪問学者・外国人研究員, GSAPS修士課程・博士後期課程在学生
報告1

報告者:嶋内 佐絵 (アジア太平洋研究センター助手)

報告テーマ:
「国際教養」教育の日本的展開と課題

要旨:
本発表は、日本における大学の国際化のなかで、近年その存在感を増している「国際教養」という教育プログラム(学部)に注目し、その「国際」性が意味するもの、国際化の中に位置づけられた「教養」の内容を、批判的に検討するものである。日本における教養教育は、主に国立大学の学士課程を中心に展開されてきたが、近年ではその教養に「国際」が冠された「国際教養(インターナショナル・リベラルアーツ)」を掲げた学部や大学が、私立大学を中心に増加している。国、高等教育機関レベルにおける国際化の流れとも親和的であり、現在では4年制大学がその主要な担い手になっているが、日本における「国際教養」の枠組みやその特徴を包括的に取り扱った研究は存在しない。
そこで本研究では、「国際教養」を高等教育国際化のなかで、「内なる国際化」(Internationalisation at Home: IaH、その教育カリキュラムで学ぶすべての学生に国際的な経験の機会が与えられるもの)として位置付け、その「国際」性と「教養」の意味するものを、様々なデータの質的分析を通して明らかにすることを目的とする。「国際教養」を扱う大学および学部は、「国際」と「教養」の2つのキーワードを名称に含んだ学部16校を選び、人材育成ビジョン、教養」の概念および、「教養」教育を通じて育成されるスキル、能力、国際教育のカリキュラム、教育実践・方法、日本(研究)に関する専攻・教育内容、外国人留学生割合等に関するデータを取得し、各大学(学部)の置かれた社会的環境・位置や前述の分析枠組みとも関連させつつ、批判的言説分析を行った。補足的に、3つの大学における国際教養学部にて創設や運営に関わる教員を対象としたインタビュー調査で得た情報を加えている。分析では、日本の高等教育の国際化の中で、「国際教養」教育プログラムがどのような特徴と志向性を持っているのかについて、①ナショナリズム(国家的な志向性)とコスモポリタニズム(国際的な志向性)、②教養(主義)と実用(主義)・専門(主義)という二組の枠組を用いて質的に論じた。
結論として、まず「国際教養」教育は、育成するスキル・能力や理念上・教育方法上の共通点を有している一方で、その分野上の範囲や教育実践は、各大学によってかなり多様であること、また特に制度や教育手法に関して、「伝統的な日本的教育のアンチテーゼとしての国際化」・「西洋化(米国化)」・「ユニバーサル化」を通した内的受容・変容が進む一方、それらの「国際」的な様相は、各大学のブランド力や外国人留学生・教員率などと相関があり、これも大学間で異なった様相を見せていることが明らかになった。次に、「国際教養」教育のカリキュラムのなかで、日本研究や日本語教育など、日本(文化・社会)に関する知識の付与だけでなく、日本コンテンツの発信力の育成や、国に資するグローバル人材育成を反映したビジョンと教育内容が含まれることは、「国際教養」が「対外拡大・展開戦略としての国際化」というナショナルな志向性を強く持つ可能性も示唆している。最後に、実用性(職業教育)や専門性(専門教育)と対比されることの多い「教養」は、そこに「国際」という側面が追加されることで、国際的に活躍するために必要な実践力や職業に直結する資格、グローバルな視野を持った専門性の習得をカリキュラムの中に位置づけることを可能にしていることが明らかになった。

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