WIAPS研究会

第8回アジア太平洋研究センター(WIAPS)研究会

開催日時 2012年5月28日(月)13:00 - 15:00
場所早稲田大学19号館(西早稲田ビル)7階713会議室
参加資格WIAPS専任教員・助手, WIAPS受入の交換研究員・訪問学者・外国人研究員, GSAPS修士課程・博士後期課程在学生
報告1

報告者:福岡 侑希 氏(早大アジア太平洋研究センター助手)

報告テーマ:
インドネシアにおける「非民主的」な民主化の比較政治学的研究

要旨:
 本報告では、インドネシアにおいて見られた「非民主的」な民主化を捉える新たな視座を提示する。これまで、スハルト体制の崩壊は独裁体制に対する「市民社会の勝利」であり、その後の民主化は「自由民主主義への移行」と解釈されてきた。しかし、スハルト体制崩壊に至るプロセスで市民社会の 果たした役割は限定的であった。また、ポスト・スハルト期のインドネシアでは、金権政治や政治的暴力が蔓延する「非民主的」な民主主義が定着した。こうした中、既存理論は次第に説得力を失っていったが、依然として代替理論は提示されていない。そこで、本報告ではインドネシアの民主化を再検証し、新たな理論構築の可能性を模索する。特に、スハルト体制下で周辺化されていた政治・経済エリートが、ポスト・スハルト期に「改革」の名の下に権力を獲得した過程に着目し、その理論的含意を探る。

報告2

報告者:斎川 貴嗣 氏(早大アジア太平洋研究センター助手)

報告テーマ:
国際連盟知的協力国際委員会と新渡戸稲造 -1920年代初頭における知的協力理念の形成-

要旨:
 1922年8月、誕生間もない国際連盟において、あるユニークな組織が設立された。すなわち、国際連盟知的協力国際委員会 (International Committee on Intellectual Co-operation、ICICと略記)である。ICICが他の連盟諸機関と比べて特異であったのは、第一に、国家政府を代表する外交官ではなく、知識人が原則として個人資格で参加していた点である。政府間国際機構である国際連盟において、アンリ・ベルグソン(Henri Bergson)、アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)、マリー・キュリー(Marie Curie)などの世界的知識人が個人として委員に名を連ねるICICは、当時の人々の耳目を引く独特な存在であった。ICICの第二の特異性は、第一次大戦後の新たな国際政治、国際経済の構築という課題への取り組みを主要な任務としていた国際連盟において、主に文化領域の活動を担当した点である。例えば、出版物の国際的交換、知的財産権の研究、各国大学間の連携、学生教員の交流、歴史教科書の共同編纂、国際問題に関する会議の主催、国際関係研究の組織化、各国文学の翻訳出版など、多岐にわたる国際文化事業を実施したのであり、これらICICの活動と理念は、第二次大戦後のユネスコへ継承されている。
 こうした特異性を持つICICは、個人や民間団体など国際関係における非政府主体の役割に着目し、また国際関係の文化、社会的側面に焦点を当てる近年の国際関係史研究の動向を背景に、研究者の関心を集めるようになってきている。また最近の研究では、国際文化交流を目的とした先駆的国際機関としてICICを評価するものもある。しかしながら、国際文化交流史の観点からICICを位置付ける研究は少なく、特にその理念についての検討は緒に就いたばかりである。国際文化交流の歴史的展開におけるICICの意義を理解するためには、国際文化交流とICICの知的協力との理念的関係性を明らかにする必要があるだろう。そして、そのためには先ず、ICICの基本理念である知的協力とは一体何であったのかが検討されなければならない。
 以上の観点から、本報告の目的は、1920年代初頭のICIC設立過程に焦点を絞り、国際連盟において知的協力がいかに構想され、概念化されたのかを分析することにある。その際、特に新渡戸稲造の活動に注目する。なぜなら、知的協力の萌芽段階における国際連盟で中心的役割を果たしたのは、当時連盟事務次長を務めていた新渡戸稲造であったからである。事実、新渡戸は、連盟事務局の「国際事務局ならびに知的協力部門」を担当し、連盟を辞職する1926年まで、ICIC会議に事務責任者として継続的に出席していた。また、新渡戸は、単にICIC設立準備の事務作業だけではなく、さまざまな団体から提議される知的協力の理念を整理することを通して、連盟における知的協力の概念化にも大きく関わっていた。したがって、新渡戸を中心に据えることで、ICIC設立過程における知的協力理念の形成とその問題性を明瞭に把握することができると考えられる。

報告3

報告者:加藤 篤行 氏(早大アジア太平洋研究科助教)

報告テーマ:
ミクロ・マクロデータによる東アジアの生産ネットワークに関する研究の方向性

要旨:
 今日、東アジア諸国の生産活動は比較優位の原則に基づいた高度な生産ネットワークによって結びついているが、こうした生産ネットワークの発展は、各国の産業構造にどのような影響を与えるのだろうか?このような問題意識に基づいて、東アジア諸国の企業・産業レベルのデータを用いた生産性、貿易構造についての実証研究を行うことを計画している。このうち、企業レベルのデータを用いた研究では、生産性・価格決定力をそれぞれ推計し、生産ネットワークに組み込まれた産業やその周辺産業において、その水準や分布構造に見られる変化を明らかにする。一方で、産業レベルのデータ を用いて、現在・将来の貿易構造において、為替レート安定化が相互利益の最大化に果たす役割についても検証する。本研究の最終目的は、東アジアの生産ネットワークがもたらす相互利益を最大化するための道筋を明らかにすることである。また、これまでの研究内容とその成果について、本報告の最初に簡単に振り返る。

Page Top