WIAPS Seminar

34th WIAPS Seminar

Date&Time November 16, 2015 (Monday) 12:15-12:50
VenueWaseda University: Waseda Campus :19th building 7F Room No.713
Intended AudienceWIAPS Full-time Faculty/Research Associates, WIAPS Exchange Researchers/Visiting Scholars/Visiting Researchers, GSAPS MA/PhD Students
Presentation1

Presenter:Shunji Matsuoka (Professor, Graduate School of Asia-Pacific Studies, Waseda University)

Presentation Theme:
原子力発電所のバックエンド問題とリスクガバナンスについて考える

Abstract:
 本報告は、原子力利用により生み出される高レベル放射性廃棄物の最終処分をめぐる問題、いわゆるバックエンド問題から、日本の原子力リスクガバナンスの問題点について考える。
 高レベル放射性廃棄物(High-Level Radioactive Waste: HLW)とは、一般に、原子力発電所から出る使用済核燃料の再処理工程で発生する高レベル放射性廃液およびそれを安定的な形態にするために固化したものを言うが、直接処分の場合は、その対象となる使用済核燃料そのものもHLWに含める。日本では、HLWは再処理過程で出る廃液などをガラス化してガラス固化体とし、ステンレス鋼製の容器に閉じ込めて物理的・化学的に安定な形態とし、冷却のため30年から50年程度の地上貯蔵した後に、地下300メートル以上の深い地層中に処分(いわゆる地層処分)することとされている。
 100万kw級原子力発電所を1年間運転すると、使用済核燃料が約27トン発生し、その再処理によりガラス固化体が約26本発生する。現在の日本には、青森県六ヶ所村と茨城県東海村に約2,200本のガラス固化体が貯蔵管理されているが、すでに発生した使用済核燃料分(約17,000トン)を加えると、ガラス固化体数は約25,000本になると言われている。
 使用済核燃料は再処理により、その重量の約95%がMOX燃料などとして再利用され、残りの約5%が高レベル放射性廃液となり、溶融ガラスと混ぜられてガラス固化体(1本の高さ約1.3m、直径約40cm、重さ約500kg)となる。使用済核燃料をガラス固化体にすることにより、フィンランドやスウェーデンの使用済核燃料のままの地層処分(直接処分)に比べて約4分の1に廃棄物量が減容化され、有害度が天然ウラン7t(核燃料1t)並みになるまでの期間は、直接処分の約10万年から約8千年へ短縮できると言われている(資源エネルギー庁, 2015)。しかしガラス固化体であっても、社会に循環してよい放射線レベルになるには100万年以上かかり、ほぼ永遠に隔離・封じ込めすることが必要である。
 日本のHLW政策は「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(最終処分法、2000年)に基づき、HLW最終処分の実施機関として原子力発電環境整備機構(NUMO、経産大臣認可特別法人)が設立されている。NUMOは、2002年より全国市町村を対象に最終処分施設の立地に向けた文献調査の公募を開始した。秋田県や長崎県などの幾つかの町村が関心を示したと報道されることはあったが、正式応募は2007年1月の高知県東洋町のみであった。しかし東洋町では、町民や議会の強い反対により、町長が辞職し、出直し町長選において反対派候補が圧勝し、2007年4月には応募が取下げられた。
 こうした状況を、所管官庁の経済産業省資源エネルギー庁は以下のように説明している。「高レベル放射性廃棄物の最終処分問題は、法制度を2000年に整備して以降、今に至るまで、処分地選定の最初の調査(文献調査)にも着手できていない状況です。これまで立地選定が進んでいない背景には、①地層処分の安全性に対し十分な信頼が得られていない、②応募プロセスが地元の発意が前提であるため、地元の負う説明責任・負担が重いなどの問題がありました。」(経済産業省資源エネルギー庁HP, 2015年10月25日閲覧)。
 2015年5月の閣議決定で、国は従来の公募路線を修正し、国がより前面に立って科学的に見た適地(科学的有望地)を提示し、関係自治体に対して文献調査受入れの申入れを行うこととした。新方針を受け、経済産業省・NUMOは、全国の主要9都市で、「いま改めて考えよう地層処分」と題した国民向け大規模シンポジウムを開催し、また各都道府県において地方自治体向けの説明会を開催している。
 国が前面に立つという「新たな政策」は、この15年間全く進まなかったバックエンドの問題を解決へと導くことができるのだろうか?そもそも、福島原発事故後の日本社会において、原子力発電所のバックエンド問題とは何であり、どのような議論の枠組み(フレーミング)で社会的合意形成を目指すべきなのだろうか?
 報告では、以上のような問いに対して、日本の原子力リスクガバナンス(特に科学技術コミュニケーション)という視点から考えみたい。

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