研究科長挨拶

アジア太平洋地域における新たな価値の創造をめざして

早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 
研究科長・教授 三友仁志

アジア太平洋研究科は2018年に創立20周年を迎えました。アジア太平洋地域にフォーカスした教育と研究は国内外で高く評価され、研究科の地位をこの20年で確立することができました。この間、研究科を支えてくださいましたすべての方々に心より御礼を申し上げます。この20年間に輩出した修士課程学生は3000名以上にのぼり、50ヵ国以上に及びます。日本あるいはアジア太平洋地域に限らず、世界のあらゆる地域から学生が集い、修了後はさまざまな形で社会を支え、けん引する役割を担っています。また、博士後期課程学生は250名を超え、修了後は研究および教育の分野に限らず、幅広く活躍しています。 

アジア太平洋地域は世界経済をけん引するまでに成長し、近年ますます重要な役割を果たしております。国際通貨基金の『アジア太平洋地域経済見通し』(2018年5月)によれば、この地域の経済見通しは依然として力強く、世界経済の中で最も活力ある地域であり、当面は力強い成長を達成すると見込まれています。他方で、近年の保護主義的な動きや地域的な緊張など、国際政治や地政学要因による影響を受けやすく、また地域内に様々な格差が存在し、多様なリスクを抱えていることも事実です。

経済の問題のみならず、教育格差、所得格差、ジェンダー格差、環境問題、貧困問題、領土問題、安全保障問題、人権問題、少子高齢化、デジタル・ディバイドなど、解決すべきさまざまな課題があります。他方で、アジア太平洋地域は、多様な文化や豊かな自然を有し、それらが一体となって、この地域の魅力を高めていることも見逃せません。

情報化の進展によってグローバル化が進んだことなどにより、アジア太平洋地域の問題は、もはや地域内の問題にとどまらず、地球規模の問題と捉えることもできます。情報化によって人びとの生活や社会、経済のあらゆる側面において変革がもたらされていますが、アジアは情報通信分野の技術革新の担い手である一方で、グローバルに進展するデジタル化の恩恵を真に享受するための社会経済構造が、この地域において構築されているとは言えないのが現状です。

アジア太平洋研究科では、アジアがもつ多様性や潜在性、さらには抱える諸課題に対して、伝統的な学問の領域を超えて、総合的学際的に教育・研究を行うことを目指し、そのための体制の構築に努めてまいりました。単に課題の解決を志向するだけでなく、新しい価値の創造に向けた学術的貢献をめざしております。各分野の第一線で活躍する教員が、学生の学問的興味を尊重したうえで、それを研究成果として結実させるまでのプロセスをともに作り上げる努力を続けてきました。

われわれはこの20年の実績に満足しているわけではありません。すでに、次の10年に向け、国内外の大学、諸機関との連携を促進するなど、さらなる教育・研究の充実に取り組んでいます。国内外の研究者と協働を進め、同時に多様なバックグラウンドを持つ学生の皆さんと思いを一にして地道に努力を続け、アジア太平洋地域に関する研究・教育のプラットフォームを形成することを目指しています。

アジア太平洋研究科の国際的なコミュニティは、留学生にとって居心地が良いばかりではなく、日本人学生にとっても、日本に居ながらにして、毎日が国際交流の場となっています。また、セメスター留学の機会を利用して、自身の能力をさらに高めることもできます。ここでの経験は、将来、国際的に活躍するためにおおいに役立つことでしょう。

皆さんが、アジア太平洋研究科における学修・研究を通じて分析能力を養い、アジア太平洋地域および地球規模での課題の解決および価値の創造に向けて貢献できる高度人材となることを期待しています。