Waseda Institute for Sport Sciences早稲田大学 スポーツ科学研究センター

その他

生体リズム調整によるピークコンディショニングについての総合的研究

研究課題

筋力トレーニング効果の評価指標の確立

研究組織

研究代表者

内田直(スポーツ科学学術院教授、研究を総合的に推進)

研究分担者

  • 彼末一之(スポーツ科学学術院教授、生体リズム・自律神経系基礎研究)
  • 正木宏明(スポーツ科学学術院准教授、事象関連電位との関連についての応用研究)
  • 廣瀬統一(早稲田大学客員講師、国際的に活躍するスポーツ選手への応用研究)
  • 内田淳子(平沢記念病院睡眠医療認定医師、臨床的薬物使用の可能性についての研究)

研究計画

一般に大筋力を主体とした競技パフォーマンスは、体温の高い午後の時間帯に良い結果を得られることがこれまでの研究で知られている。また経験的に多くの競技会は午後の時間帯に開催される。しかしながら、近年では国際映像によるテレビ放映などの関連から午前の時間帯に競技が開催されたり、また慣習的に駅伝など朝早くから競技が行われる種目もある。さらには、国際的に活躍するアスリートは、時差のある地域に移動し、時差による生体リズムの非同調が改善する前に競技を行う必要に迫られる状況が多くある。

本研究では、生体リズムを調節することにより、競技の行われる時間帯に可能な限りピークパフォーマンスが発揮できる生体リズムの頂点をもってゆくトレーニング計画を開発することを目的とする。具体的な課題は以下の2点である。

  1. 午前中の時間帯に行われる競技のパフォーマンスを改善する方法の開発
  2. 時差のある地域に移動した際に、競技時間帯により良いパフォーマンスを行うためのトレーニングスケジュールの立てかたについての研究

方法としては、これまでの時間生物学的研究によって得られている二つの方法を用いる。ひとつは高照度光照射である。一般に5000Lux以上の照度をもった光は、生体リズムに対して影響があることが知られている。また、光は暴露する時間帯によって生体リズムへの影響が異なっている。もうひとつはメラトニンの投与である。メラトニンは松果体より分泌される内在性物質であるが、これを経口投与などによって血中濃度を上昇させることで、生体リズムに対して影響を与えることができることが知られている。メラトニンも投与のタイミングによってその効果が異なり、夕方から夜の時間帯では生体リズムを前進(早寝早起き方向)させるが、別の時間帯では逆の効果をもつ。これら2つの方法を組み合わせるとより効果的な変化が得られることも報告されている。これを、アスリートのトレーニングスケジュールに取り入れるわけである。しかし一方で、メラトニンは眠気を催しパフォーマンスを下げる可能性があるため、使用のテクニックを確立する必要がある。メラトニンのスポーツパフォーマンスへの影響も十分に明らかにされていないので、これもテーマとなる。また、短時間型睡眠薬など他の薬物もドーピングチェックとの関連については慎重に調査を進めながら、検討してゆく。

研究では、これらの方法を、競技別に実際の選手を対象に試しながら、より効果的に競技パフォーマンスの向上を図る方法を開発する。具体的には、被験者の生体リズムをカプセル型深部体温計でモニターし、被験者に対してさまざまな時刻に光、メラトニンを独立して、あるいは両方を一度に与える。また、それぞれのタイミングも変化させ、それぞれの、あるいは組み合わせによる影響がどのようなものになるのかを明らかにする。

次に、これらの変化させた生体リズムにおいてパフォーマンスがどのように変化するのかを、有酸素運動、無酸素運動、反射、認知などのさまざまなコンポーネントから検討する。中枢神経系の活動については、事象関連電位やfMRI測定も用いることを計画している。

これまでのパイロットスタディーでは、国際的に活躍する陸上競技選手1名を対象として、東向きに7時間の時差のある地域に移動する際に、光療法とメラトニンを用いて出発前に体内リズムの操作を行った。その結果、現地の明暗リズムに対する同調は非常に速やかであり、結果として現地での試合前トレーニングがスムーズに行え、さらには競技会において10000m走で日本人学生新記録をマークした。記録自体は、時間生物学的操作によるものとは言えないが、このような操作が少なくとも助力となった可能性は大きい。

客員研究員の推薦
スポーツ科学研究センター客員研究員として、本研究計画遂行のため、上記の内田淳子さんを推薦いたします。

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