Graduate School of International Culture and Communication Studies早稲田大学 国際コミュニケーション研究科

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研究科長挨拶

グローバリゼーションを越えて

国際コミュニケーション研究科 研究科長・教授 吉本光宏

国際コミュニケーション研究科はスタートしてから5年余りという短い歴史にもかかわらず、早稲田大学のなかでも特に人気の高い研究科として順調に発展してきました。「コミュニケーション」を問題関心の中心に据えて、それを文化、言語、社会という多角的な視点から考察するという本研究科の基本理念は、当初の予想以上に多くの方々の共感を持って受け入れられるところとなり、日本だけではなくアジアや欧州その他世界各地から厳しい選考過程を経て入学した多くの学生が、修士および博士後期課程で学んでいます。カリキュラムの詳細や学位の取得要件などについては、本ウェブサイトおよびパンフレットに詳しい説明がありますので、ぜひそちらを参照していただくようお願いします。ここでは基本理念を補足するかたちで、私個人が理解する本研究科の特徴やその目指すところについて、もう少し詳しく述べてみたいと思います。

 

本研究科ではすべての演習や講義を英語で行っており、特別な事情がない限り、論文も英語で執筆してもらいます。本来研究や学問は、特定の国民国家の内部でだけ通用するようなものではありません。研究のコミュニティは世界中に拡がっているため、様々なバックグラウンドや価値観を持った多くの研究者と積極的に議論をし、国境を越えて研究成果を問う必要があります。そのためには、現在グローバルな言説空間における事実上の共通言語として機能している英語を避けて通ることができません。しかし残念ながら、たとえば人文学の分野では、国際的な学会やシンポジウムに参加し研究発表を行う日本からの研究者の数が、他のアジアの研究者と比較して圧倒的に少ない。既存のディシプリンで「英語を使って」論文を執筆したり研究書を出版したりする研究者を育成するという方法だけでは、もはやこのギャップを埋めることは困難ではないかと言わざるを得ないほど立ち遅れているように見えます。もちろん英語を無批判にグローバルな共通言語として受け入れるべきではなく、常に再帰的かつ批判的に英語中心主義の問題点を言語化し続けなければなりません。しかしそれさえも、英語で行わなければ広く国際的に議論される可能性が少ないという厳しい現状から眼をそむけるべきではないと考えます。

 

したがって本研究科の目標の一つは、英語を媒体として教育・研究を行うことによって英米圏の大学院プログラムをモデルとし、その「日本版」を縮小再生産することにではなく、アメリカの大学が圧倒的な影響力を持つグローバルな知の秩序を脱中心化することにあると言えます。英語圏の研究者と同じ土俵の上で議論する力をつけることと、グローバルな基準と呼ばれるものを当たり前のように受け入れることは全く別の事柄です。グローバリゼーションの名のもとに進行してきた世界の大学の階層化と英語を中心にした制度化に取り込まれざるを得ないことを認めつつ、同時にこの状況を相対化する視座を確立し、制度の問題点や矛盾を内部から明らかにしていくことが重要です。少なくとも大学院教育や研究の場におけるグローバル化の波とは、それに乗るべき何かではなく、戦略的に攪乱すべき対象です。幻想としての「国際化」や「グローバル化」を打ち砕く必要があります。ただし「真の」国際化やグローバル化というのも、また別の幻想にしか過ぎません。「ほんもの」と「フェイク」の差異が問題なのではなく、国際化やグローバル化という紋切り型の考え方では把握できない世界や惑星としての地球の大きな変化を、今どう捉え、分析し、議論できるのかが問われているのです。

 

しかし、相対化する視座とは、日本独自のシステムや日本に特有の方法論を追求することで生まれるものではありません。「日本の独自性」や「日本に特有のもの」は、「世界基準」に劣らず疑わしい概念あるいは符牒であり、徹底的に再吟味する必要があります。グローバル化した知の体制の中に一度深く身を沈めて研究や活動を行わなければ、その問題点を根本的に理解し対抗できる言説を創造することは難しいでしょう。ルールを理解し受け入れながらも内面化はしないという、なかば曲芸的な離れ業を成し遂げることで、ようやく内部に外部の視点を確立することができるのです。もちろんこうして獲得した外部も、究極的には単なる仮想されたものでしかないのかもしれません。しかし、「世界基準」や「日本の独自性」という物神を信じるよりも、私自身は仮想としての外部の可能性に賭けてみたいと思います。

 

もし日本の大学で教育を受けた学生の皆さんのなかで、英語圏とりわけアメリカの大学院で勉強し研究を続けたいと考えている方がおられましたら、ぜひ早稲田大学国際コミュニケーション研究科への進学を選択肢の一つとして真剣に考えてみてください。アメリカの大学院では学部から修士課程を経ずに博士課程へ進むことができるプログラムが珍しくありませんが、日本で学部を卒業しただけの学生にとって直接アメリカの博士プログラムに進学するのは、かなりハードルが高いと言わざるを得ません。したがって通常は、まず修士課程に入りその後博士課程を受験することになります。問題はアメリカの大学院の授業料が非常に高額であるということ、また博士課程を中心に運営されているために、修士レベルでは丁寧なガイダンスや研究指導を受けることが難しい場合が多いということです。その一方、博士課程では返済不要の奨学金やスカラシップが充実しており、教育助手や研究助手として働きながら勉強をすることが普通になっています。そこで国際コミュニケーション研究科の修士課程で専門および関連分野の基礎知識を英語で習得し、大学院レベルのペーパーの書き方やディスカッションの仕方を実践的に学んだ上で、アメリカの大学院博士課程へ進学することを、一つの現実的なオプションとして提案してみたいと思います。本研究科や国際教養学部の教員の多くは海外の大学で博士課程を修了しており、また英語圏の大学で教えていた教員や、おもに英語で学術論文ならびに学術書を出版している研究者も少なくありません。修士論文の研究指導や演習制度を通じて、アメリカの一般的な修士課程よりもきめの細かいガイダンスができる体制が本研究科には整っています。

 

大学院は将来大学で教えることを目指す研究者を養成するだけの機関ではなく、様々な分野や職業で必要とされる、最新の専門知識を学ぶ場所でもあります。日本ではまだ理系以外の大学院へ進学することが一般的になっていませんが、今後こうした状況は大きく変化するほかないでしょう。既存のディシプリンに束縛されることなく高度な知識の専門性をどう確保することができるのか。そもそもコミュニケーションとは何なのか。こうした疑問を避けるのではなく真正面から受け止める国際コミュニケーション研究科の挑戦は、まだ始まったばかりです。

 

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