School of Education早稲田大学 教育学部

【初等教育学専攻】早稲田大学初の芸術教育ゼミナール(大泉 義一教授 教授の部屋/研究室紹介)

教員情報

  • 教員名:大泉 義一 教授
  • 学科専攻専修:初等教育学専攻
  • 専門分野:教科教育学(美術教育),ワークショップ論

他者や社会との関わりにおける子どもの芸術表現の可能性を探究

社会が大きく変容する今,子どもの教育も,従来のように学校の中だけで完結するものから,地域や社会との連携で行われるものへと,変化が求められています。私の専門である美術教育もそれは同じで,教育の機会は学校内にとどまりません。最近では,子供の芸術体験に対する親や地域の求めに応じて,学校に限定しないオルタナティブな芸術教育への期待が高まっています。

私の研究室では大きく次の二つの研究に取り組んでいます。一つは学校教育における図画工作・美術科の授業研究です。そこでは,学校のなかに子どもの表現が位置付く意味を考察しています。さらにもう一つ,公共施設や美術館,公園など,子どもが居る場に出向いて行う造形ワークショップの研究に力を入れています。学校の内外を問わず,美術教育において重要となるのは,作品をつくること以上に,形や色などで表現するプロセスを通して子どもが自分なりの意味や価値をつくりだしていくこと,すなわち創造性の発揮だと私は捉えています。さらに他者の表現を味わうことで,自他の違いを認識し,自身の個性を発見する機会にもなるでしょう。

子どもたちが他者や社会との関わりの中で,美術などの芸術を通して自分を表現する喜びを感じられるような授業やワークショップのあり方を,学生と一緒に考えていきたいと思います。また同時に,学生自身にも表現の喜びを体感してほしいと考えています。

※ 本文は,『早稲田大学 学部入学案内2021』に紹介されているものから抜粋・加筆しています。
https://www.waseda.jp/nyusi/ebro/ug/admissions_jp_2020/html5m.html#page=39

表現する子ども。

大学・学校から出る学びを創出する:ワークショップ・プロジェクト『アートツール・キャラバン』

ゼミで取り組んでいることの一つに,『アートツール・キャラバン』(以下,ATC と記す)というワークショップ・プロジェクトがあります。これは,受託研究「造形実験装置による巡回式ワークショップ・プログラムの開発研究」において開発されたワークショップ・プログラムで,2010年から継続的に実践している取り組みです。

ATCは,「あそぶプログラム」と「つくりだすプログラム」から構成されています。前者には,子どもが全身の感覚を働かせて造形的な遊びや試みを促す装置群「アートツール」が設置されています。それらは,指導者から「…しなさい」「…してみよう」といった言葉による“投げかけ” がなくても,子どもたちが自然に活動したくなるようにデザインされています。そしてその造形的な遊びや試みを通して子どもたちの能動性が促され,自分の実感に自信をもった能動的で協働的な表現を生み出す後者のプログラムへと発展していきます。

このATCのプログラムを携えて,子どもの居る様々な場所(公園,商業施設,美術館,学校,東日本大震災の被災地・避難所など)に出向いて巡回実践を展開してきました。その企画・運営・実践には,ゼミ所属の学生を中心に,本プロジェクトに関心のある方ならだれでも参画できるようになっています。これまでに,他大学の学生,現職の小中学校・高等学校の教員,高校生,アーティスト,学童保育施設経営者,民間企業人など,多様な立場の方が参画されています。

今年度は,新型コロナウィルスの影響により対面でのワークショップ実施が見送られているので,オンラインでの実施を計画中です。

※ ATCの紹介動画をご覧ください。→ 動画データ
※ 下記大泉研究室のホームページでも,過去の実践の様子を閲覧できます。
http://www7b.biglobe.ne.jp/~oizumi-labo/

アートツール『なんのたまご?』(見た目は卵。触ってみると…?)

周りと協働しながら自らの信念を実現できる人に

教育学を学ぶということは人間を深く理解することにほかならず,その学びを活かして卒業生は教育分野に限らずビジネスの第一線でも広く活躍しています。

一方で,私自身は教育学部の教員として,これからの学校を創造し変革していく熱意や力量を持つ若者を現場に送り出したいと強く思っています。皆さんの中には,教員になることに関心を持ちながらも,メディアで見聞きする学校教育のネガティブな話題に不安を募らせている人も少なからずいることでしょう。そうした人にこそ,ぜひ早稲田の教育学部で学び,多様な専門性を持つ教員やゲスト講師との対話交流,実習・演習などの機会を通して,教育現場の今を自分自身で確かめ,より良い未来を考えてほしいと思います。

またこれからの社会では,深い人間理解に基づいた未来に向けた思索(Speculation)や,Design Thinkingのように「実際に手掛けてみること」を通した問題解決をすすめる力,さらにはArt Thinkingの提唱に見られるようなイノベーションを起こす力が期待されています。本ゼミは,芸術教育や子どもの表現を対象にしながら,そうした物事を創造的に「つくりだす」現場であることを目指しています。

教師であれ,ビジネス人であれ,学校や社会が直面するさまざまな課題の解決に挑むには,自らの信念を持つと同時に,周りの人と協働して粘り強く取り組むタフさや,ものごとを面白がる知的好奇心も大切になります。早稲田の自由闊達な学生文化や多様な学びの選択肢も,皆さんがそれらの力を手に入れる大きな助けとなるはずです。

 

川崎市市民ミュージアムでの『アートツール・キャラバン』(筆者前任校における実践)

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