WEB MAGAZINE 早稲田@日本橋

ファイナンス稲門会 第7回総会特別企画

歴代研究科長によるパネルディスカッション

『これからの金融界に求められる人材育成とNFS』
大村敬一教授(初代科長)、宇野淳教授(二代科長)、首藤惠教授(三代科長)

パネルディスカッションの主要テーマは、『これからの金融界に求められる人材育成とNFS』。大学院ファイナンス研究科(NFS)歴代の研究科長経験者を迎え、白熱した議論が展開された。

グローバル・マーケットの進展とともに
求められる人材も高度に多様化

司会 まず、ファイナンスの現場で求められている人材、求められてきた人材についてお聞きしたいと思います。専門分野が多様化している背景もあわせて、金融機関においてはどのようなことがいえると思われますか?
首藤教授 不動産などの証券化や金融商品の多様化に伴い、リスクの細分化・複雑化が進んでいます。それをコントロールできる幅広い知識を持つ人材が求められていると思います。また、リーマン・ショック以降、投資に対し法的な規制を設ける動きが強まっていますが、あまりに行き過ぎた規制は金融・経済のダイナミズムを損なってしまいます。ですから、市場に携わる人間が自己規制を心がけることが重要で、そのシステムを構築できる人材も必要でしょう。
司会 一般の企業・事業法人についてはいかがでしょうか?
大村教授 本来、金融機関と事業法人に分けて人材育成を考えることに意味はありません。人材の交流が広がった今日では、ファイナンス教育を縦割り的にではなくもっとグローバルにとらえるべきでしょう。ただし、現状は過渡期にあるので、金融機関がこれまでのように財務面での面倒をみてくれないとか、マーケットからのファイナンスを拡大して金融機関離れを進めるなどの事情のある事業法人では、CFOの育成など専門的知識を装備する財務担当者を育成する必要性が高いと思われます。
宇野教授 いま私が参加している経済産業省の「高度金融人材産学協議会」が、ちょうどこのテーマに取り組んでいるのですが、例えば、企業の財務担当者などからは、銀行以外の「市場」からの資金調達の経験が乏しいために困っている、との意見が出されています。また、エクイティやデットなどの問題、さらには年金について。企業年金の運用・マネジメントは非常に大きなテーマとなってきましたね。これらを鑑みますと、金融機関と事業法人に求められる人材像は、かなり近づいてきている。いずれにせよ、今後ファイナンスの世界で重要となるのは、グローバルな運用の実力でしょう。

知識・技能よりも大切なことは
Financeを通して何がしたいかという“志”

司会 グローバルな運用において、人材育成に関する問題点はどのようなところにあるとお考えですか?
首藤教授 金融界は、プロフェッショナルという意識が欠けているところだと思います。ここでいうプロ意識とは、会社のためだけでなく、金融に関わる人間として、使命感・責任感をも自覚してサービスを提供するということです。
大村教授 首藤先生のおっしゃるとおりで、与えられることを待っている人が多いことが問題です。ファイナンスの世界で自分は何をしたいのか、自分は金融界をどうしたいのか、各個人が会社の枠を超え、自分なりに考えるべき時です。
司会 では、そのような人材の育成に向けて、例えばファイナンス研究科では、どのような取り組みが行われているのでしょうか?
宇野教授 私の授業を例にとると、コンピュータによる仮想市場での実験という、テキストに書かれたケースではない、「動くケース」に学生を参加させるという試みを行ってきました。仮想市場での出来事ですから、現実の市場とは違って、参加者全員に「なぜそうしたか」という行動の理由を聞いて、マーケットの変動理由を探ることができます。時には予想外の事態が発生して、市場がクラッシュしてしまうこともある。原因の一つは誤発注、そして、マーケットの限界を考えずに、自分勝手に際限なく売り買いを行う人が現れること。「確実に勝てる方法を見つけた」という自信過剰が、バブルを発生させることすらあります。金融に対する意識の高い学生が集まるNFSでも、このような事態を惹き起こすのですから、現実は「さもありなん」といったところでしょう。

司会 最後に改めて、ファイナンス研究科設立の趣旨、そして、今後のNFSの方向性などについて、語っていただきたいと思います。
大村教授 初代研究科長としては、私自身、かつて「働きながら学びたい」と思ったことがあるのですが、そのような場がなく苦労しました。ですから、同じような気持ちを持つ人のために社会人大学院を創設したいという思いがありました。そしていま、終身雇用制が崩壊する環境変化の中で、能力を備えることに対するニーズが、社会人の間で拡がりを見せてきたことです。ただ、それでも社内での地位の向上や、より良い条件での転職など、「組織で仕事をする」程度にとどまっている学生が支配的で、意図した人材育成が進んでいるわけではありません。しかし、教育の役割は重要です。私たちが、例えば、2〜3人の人材を育成したとして、その一人ひとりがさらに良き理解者となって3人、5人と人を育てるなら、それは金融ビジネスでいえばまさに信用創造ともいうべきもので、非常に意義深いことではないかと思っています。
首藤教授 今後の金融界の動向を見据えて、大きく2点、強化を図って行きたいと考えています。一つは国際化。すべて英語で実施される授業や、国際的に通用する人材を育てるプログラムを既に試行しています。もう一つは金融に関わる人材としての意識を喚起すること。今後は知識や技能、理論やスキルだけではなく、それらを駆使する土台となる見識、ものの考え方を培うという方向性を強く打ち出して行きたい。大村先生もおっしゃるように、社会の中での金融界、ファイナンスの世界における自分自身の立ち位置に無頓着な学生がまだまだ多い。そこを突き詰めたところにビジネスチャンスがあるのかもしれないというのに。
宇野教授 このファイナンス稲門会のように、広く同窓の仲間が集まる場というものは、大変貴重です。大学院ファイナンス研究科は、金融機関関係者と、そうでない人との割合が半々という稀なビジネス・スクールでもありますので、多様な世代間での異業種交流という側面から見ても、その意義は非常に大きいと思います。

SCHEDULE

18:30〜18:50

総会

18:50〜20:10

パネルディスカッション

(大村教授、宇野教授、首藤教授)

20:10〜21:00

交流会

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