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Monthly Spotlight / 鈴木太郎

究極の「物作り」
~高性能な自律型ロボットを目指して~

より高精度な測位が可能に

私の研究は、ロボット、特に無人システムの開発研究からスタートしました。研究の開始当初は飛行ロボットや車両型ロボットの自律ナビゲーションといった移動ロボットが専門分野でした。そのような研究の中でセンサーとしてGPSを扱うようになったことが、衛星測位システムの研究を始めたきっかけです。

GPSは、複数の衛星からの電波信号を受け、それを解析することで自分の位置を知るシステムで、もともとはアメリカが軍事用に開発したものです。現在ではロシア、EUを始め多くの国が独自の衛星測位システムを構築中です。日本でも2010年に準天頂衛星初号機として「みちびき」が打ち上げられ、2018年までに合計4機の準天頂衛星が打ち上げられる予定です。自国の測位衛星を持つことによって、更に精密な測位が可能になることが期待されています。これら各国の衛星測位システムは、GNSS(Global Navigation Satellite System)と総称されています。

このように利用可能な衛星の数が増えることによって、高い建物や山などが障害となって衛星からの測位信号が届きにくい場所でも測位が可能になります。私は、都会でビルが邪魔をするような場所でも衛星測位システムを使用可能にし、さらに測位精度をあげるための解析法を研究しています。特に、そういった高精度な衛星測位システムをロボットに応用する方法を研究しています。

位置を把握し「自分で動ける」ロボット

現在は、自律移動ロボット(UGV: Unmanned Ground Vehicle)及び自律飛行ロボット(UAV: Unmanned Aerial Vehicle)を主に研究しています。自律ロボットといっても、単に移動するだけでは何の役にも立ちません。自分で移動し、なおかつ何かしらのミッションを果たすことが重要になってきます。自律ロボットの重要なミッションの一つとして、環境の地図を作成することがあげられます。つまり、人が入れないような場所へ行ってその環境を計測し、様々な地図を作成するということです。このようなミッションを果たすためには、ロボット自体の正確な位置や姿勢というデータをセンシングする必要があります。そのために、GNSSにほかの様々なセンサーを組み合わせます。

UGVではGNSSとカメラを組み合わせた手法を用い、地上における自律ナビゲーションを行っています。都市部など建物が密集した場所では衛星から直接電波を受信できないため、ロボットが正確な位置を把握できません。そこで、全方位赤外線カメラでロボットの上空を撮影し、自動的に可視衛星を選択するシステムを開発しました。これにより、可視衛星からの情報を利用して、より正確な位置推定が可能となっています。また、正確な位置推定とリアルタイムに計測した情報を組み合わせ、UGVを自律的に制御する研究も行っています。実際に国内で行われた自律型ロボットの実証実験では、途中、エレベーターを利用するなど、いくつかの課題をクリアしながら人間の指示なしに設定された市街地の約1.2kmのコースをロボットが自ら移動することができました。

GNSSアンテナと全方位赤外線カメラを搭載したUGV。その他に、レーザスキャナや光ファイバージャイロスコープなどが搭載されており、自律走行が可能になっている。(提供/鈴木助教)

 

UAVの場合は、位置だけでなく、その姿勢を把握することも重要になってきます。そこで、UAVに多数のGNSSアンテナを取り付けることで、空中での正確な位置と姿勢を同時に推定し、地上の凹凸などを直接三次元で計測しようと試みています。

これまでのUAVでは加速度計やジャイロセンサーで姿勢を測定していたのですが、方位角(どちらの方向を向いているのか)を正確に測るのは困難でした。磁気方位と言って地磁気を測定することで方向を推定する方法も一般的ですが、この方法では精度があまりよくありません。一方、多数のGNSSアンテナを用いることでUAVの位置と姿勢が正確に決定できれば、その情報を基に様々な計測が可能になります。これまでは、正確な位置と姿勢を決定できないために、単純にカメラで画像を撮ってくるというようなことしかできなかったのですが、計測の用途にもUAVが利用できるようになることが期待されます。

また、少し難しい話にはなるのですが、ロボット分野ではSLAM(Simultaneous Localization And Mappingの略)という有名な問題があります。これは、ロボットで地図を作成する際、ロボットの位置や姿勢とその環境で作成した地図が、切っても切り離せない関係になっているということです。環境を測定するレーザーやカメラ、センサーはロボットの位置や姿勢に対して相対的な測定を行います。つまり、地図を作成するためにはロボットの位置を推定する必要があり、ロボットの位置を推定するためには地図を作成する必要があるという、答えの出ない問題が生まれます。この問題を解決するための手段になりうるのが前述のGNSSアンテナを多数搭載したUAVです。UAVの位置や姿勢の推定とレーザスキャナやカメラ画像を組み合わせることで、三次元の地図を瞬時に作成出来るのです。SLAM問題の解決につながるという意味で、学術的にも重要な研究だと考えています。

これまでに研究を行ってきたUAV。デジタルカメラ、IMU(慣性計測装置)及びGNSSの情報から自らの位置や姿勢を測定できる。全長1.7m、重さ約2kg。(提供/鈴木助教)

人の生活に役立つロボットを目指して

これらの研究成果をどのように社会に還元していくのかが今後の課題です。例えば農業分野では、準天頂衛星からの情報を利用したトラクターの自動運転などの実証実験を行っています。このような精密測位を利用した農業は精密農業と呼ばれています。また、UAVを使った植生観測も試みています。例えば、牧草地化した湿原をもとの姿に戻す自然再生事業では、湿原の状態をUAVで観測するといった試みです。通常の航空測量には多額の費用が必要ですが、UAVで上空からのモニタリングや地図作成を行えば、簡便に湿原の生態評価が可能ではないかと考えています。また、災害発生時に活用するために、人が立ち入れない場所の3DマッピングをUAVで行う研究も始めています。いずれも、GNSSによる高精度な衛星測位技術と移動ロボットを組み合わせている点が重要で、私の研究成果が存分に発揮できるものと考えています。

取材・構成:天野千尋
協力:早稲田大学大学院政治学研究科J-School

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