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Monthly Spotlight / 紺野友彦

ネットワークの性質によって変わる協力行動の起こりやすさ

なぜ協力行動が起こるのか?

私はこれまで、主に複雑ネットワーク(実際の社会や生物に存在する巨大で複雑なネットワーク)の持つ構造やトポロジー(つながり具合)がどのような特徴を持つのかを、ネットワークのモデルを用いて研究してきました。ネットワーク科学はインターネットの構造や細胞内の化学反応、意外なものではテロ組織の特徴の検証など、応用範囲が広い領域です。ネットワークに関する研究には様々な分野の研究者が参入しており、分野横断的な領域と言えます。今回ご紹介する研究成果も、数理生物学のセミナーで聞いた話から着想を得たものです。

我々人間も含め、生物は、自分には不利であっても、集団にとっては有利となる利他行動をとることがあります。このように、コストを払っても協力行動をすることが、普遍的な現象なのかどうかは進化生物学の大きな問題であり、ネットワークが協力行動を生み出すのではないかという検討がなされてきました。

ネットワーク上の要素のことを「ノード」、ノードと他のノードの繋がりを「リンク」と呼びます。人間関係に例えると、人が「ノード」であり、面識や友人関係が「リンク」です。今回の私の研究は、どういった場合にネットワークがノード同士の協力行動を促すのかという条件を探ることでした。

ネットワークによって異なる特徴

今回の研究では、レギュラーネットワーク、ランダムネットワーク、スケールフリーネットワークという、それぞれ異なった特徴を持つネットワークを扱いました(図1)。モデル図に散在している円がノード、ノード同士をつなぐ線がリンクです。レギュラーネットワークでは、ノード同士が規則正しくつながれています。図のネットワークでは、すべてのノードが周囲の4つのリンクを持っており、安定したネットワークだといえます。

一方、ランダムネットワークは、2つのノードがリンクするかどうかが、一定の確率で、まさにランダムに決まるという特徴を持っています。2つのノードの組み合わせすべてをランダムにつなぐことで成立するのがランダムネットワークです。どのノードも同じ確率でリンクするかどうかが決まるため、それぞれのノードが持つリンクの数には極端な差がありません。そのため、このネットワークは、都市の間をつなぐ高速道路に例えられることもよくあります。路線図を見れば分かるとおり、どの都市も同じくらいの数の高速道路でつながっていて、特定のインターチェンジだけが100本の高速道路とつながっているということはありません。

3つめのスケールフリーネットワークは他の2つのネットワークとは異なり、ノードによって持っているリンクの数に極端な差があります。インターネットをはじめ、実際の社会に多く見られるネットワークです。多くのノードは大変少ないリンクしか持っていませんが、いくつかのノードはたくさんのリンクを持ち、ネットワークの中心となっているのが特徴です。インターネット上でのGoogleのように、多くのリンクを持っているノードを「ハブ」と呼びます。

図1: 3つのネットワークのモデル図(提供/紺野友彦助教)

囚人のジレンマ

このようなネットワーク上での協力行動を解析するために、ノード同士にゲームを行わせます。その際の基本となるのが、ゲーム理論でよく使われる「囚人のジレンマ」と呼ばれる利益とコストの構造です。これは、2人のプレイヤーが、自分にとって合理的な選択をした結果、全体としてみれば2人とも損をしてしまう状況をモデル化したものです。

今回は、自分が協力を拒めば、相手が協力しようがしまいが、自分の利得が大きくなるというモデルを立てました(図2)。2人でこのゲームを行うと、どちらも非協力的な行動をとるという結果に終わります。しかし、ゲームのプレイヤーをノードとしてネットワークに配置し、ネットワーク上で隣り合うプレイヤーとゲームを行うことで協力行動が誘発されるケースがあるのです。

 

図2: 今回の解析に用いた利得表。合理的な選択が全体の利益に反映されない。(提供/紺野友彦助教)

協力行動の起こりやすいネットワーク-「隣の」ノードが持つリンク数が基準に-

ネットワーク上で行う囚人のジレンマゲームについて、これまでの研究では、協力の利益とコストの比がノードの平均リンク数を上回るネットワークで協力行動が誘発されることが知られていました。しかし、この条件ではネットワークの構造がどの程度協力行動へ影響しているのか、その違いを検討することはできません。例えば、図1のレギュラーネットワークとスケールフリーネットワークでは、ノードが持つ平均リンク数はどちらも3となり、同程度に協力行動が起こりやすいことになってしまいます。そこで私は、ネットワーク上で「隣の」ノードが持っているリンク数(図3)に着目しました。

図3:ノードが持つリンクと、「隣の」ノードが持つリンクとの違い。「オレンジ」のノードから見た「白い」ノードが持つリンク数が、「隣の」ノードが持つリンク数 (提供/紺野友彦助教)

一般に、ネットワーク上で「隣の」ノードが持つ平均リンク数は、ノードが持つ平均リンク数よりも大きくなります。また、「隣の」ノードが持つ平均リンク数は、ネットワークの構造によって異なる特徴を持ちます。図1のランダムネットワークとスケールフリーネットワークはどちらも平均リンク数が3ですが、「隣の」ノードが持つ平均リンク数はランダムネットワークでは4、スケールフリーネットワークでは無限です。つまり、ネットワークの構造によって協力行動が誘発される程度がどのように異なるのかを判断する条件として用いることができるのです。

先ほどの利得表に従って、ネットワークのノード上にいるプレイヤーが隣り合うプレイヤーとのみゲームを行った場合を検討した結果、協力の利益とコストの比が「隣の」ノードが持つ平均リンク数を上回る場合に協力行動が誘発されることがわかりました。つまり、ネットワークのタイプではレギュラーネットワーク、ランダムネットワーク、スケールフリーネットワークの順で協力行動が起きやすいことが分かったのです。

冒頭でも述べた通り、ネットワーク科学の応用範囲は多岐に渡るため、他の分野でどのように利用できるかという点については、他の研究者も交えた検討が必要だろうと考えています。

取材・構成:菊地乃依瑠
協力:早稲田大学大学院政治学研究科J-School

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