• HOME
  • 早稲田大学TOP
  • お問合せ
  • アクセス
  • サイトマップ
  • ENGLISH
Loading
  • facebook
  • twitter
  • 研究所について
  • 研究プロジェクト
  • 研究員
  • イベント情報
  • 研究成果
  • 国際研究交流
  • 採用情報

Monthly Spotlight / 水野 俊太郎

インフレーションの謎を解くことで、科学の理解を深めたい

●インフレーションがどのように起きたかはまだわかっていない

僕は宇宙のインフレーションモデルの研究をしています。

宇宙は、高温・高密度の火の玉のような状態で誕生し、それが急激に加速膨張したと考えられています。この加速膨張のことをインフレーションと呼びます。

宇宙論では、宇宙の始まりにはどこにも特別な場所がない、特別な方向がないという仮定を使っています。しかし、銀河や星ができるためには、真っ平らなまま宇宙が膨張するのではなく、途中でちょっとだけ密度の高いところと低いところが生まれる必要があります。それがどういうふうにできたのかを説明してくれるのがインフレーションです。宇宙の始まりのときにあったごく小さな量子ゆらぎが、インフレーションのときに急激に拡大され、そのゆらぎが現在の銀河などの種になったと考えられています。

しかし、インフレーションを引き起こすような粒子や場(インフラトン)の正体はまだよくわかっていません。現在は100個以上のインフレーションモデルが考えられていて、僕も新たなモデルを1つ提唱しています。また、他の研究者が提唱しているモデルを検討し、その欠点を指摘することもあります。

現在の宇宙には、宇宙が火の玉だったころに放射されたエネルギーが、マイクロ波となって飛び交っています。これを「宇宙マイクロ波背景放射(CMB)」と呼びます。CMBのゆらぎは宇宙の始まりのゆらぎを反映しており、インフレーションモデルが正しいかどうかは、CMBのゆらぎをきちんと説明できるかどうかによって判断されるのです。

CMBは、人工衛星によって観測することができます。1989年にはCOBE、2002年にはWMAP、そして、2009年にはプランクという衛星が打ち上げられ、最近は観測技術の進歩によって、ゆらぎについてすごく細かいところまでわかるようになってきました。これに伴って、モデルについても詳しく検証できるようになってきています。

図1: プランク衛星によるCMBの全天の温度揺らぎの観測結果。青は2.73度より10万分の1度程度低温の部分、赤は2.73度より10万分の1度程度高温の部分。

●インフレーションの謎を解けば、物理理論の進展につながる?

理論物理学者というと、福山雅治のドラマのように黒板に長い計算式を書くイメージをもつかもしれませんが、実際はパソコンや大型コンピュータで、自分が考えたモデルだとゆらぎがどうなるのかという計算をすることが多いですね。あとはやはり理論を考えるためのアイデアが勝負なので、論文はたくさん読みます。

インフレーションモデルが違うと、ゆらぎの性質が微妙に変わってきます。スケールの大きいところと小さいところでゆらぎの大きさがどう変わるかを示すパワースペクトルというものがあります。これまでの多くのモデルでは、インフレーション終了時点でパワースペクトルはほぼフラットだったと考えていますが、僕のモデルでは、もしかしたらその時点ですでに凸凹しているところがあったかもしれないと考えています。

今後の観測結果によって、今まで他の人が唱えていなかったこのモデルの証拠となるようなデータが得られればおもしろいですね。特に、2013年に第一報が発表されたプランク衛星の続報によって、CMBの偏光成分がわかるかもしれません。それは、インフレーションモデルを特定する上で非常に有益な情報になるので楽しみにしています。

図2: 水野助教のインフレーションモデルによるパワースペクトルの計算結果。プランク衛星の観測結果のこれまでの報告の中に、スペクトル中に凸凹があるかもしれないことを示唆するものがあり、続報や今後の観測により、モデルの証拠が得られる可能性がある。(提供:水野助教)


さらに、インフレーションへの理解を通じて、相互作用の統一という別の物理理論の進展につながればおもしろいなと思っています。物理の相互作用には重力、電磁気力、強い力、弱い力という4つの力があります。重力以外の3つの力を統一する理論はすでにありますが、それら4つをすべて統一する理論というのはまだできていません。

そういう理論の候補として、「超弦理論」があります。もしかしたらインフレーションのときに生まれたゆらぎの性質を調べることで、宇宙誕生のメカニズムを説明する超弦理論の効果がわかるかもしれない。僕の考えるモデルが、相互作用といった他の物理理論の進展につながるものだったらおもしろいと思っています。

●宇宙はわからないけどおもしろい

佐藤勝彦先生という、宇宙論の研究で世界的に有名な物理学者がいます。その先生が、僕が高校生のときに文化祭に来てくださって、講演を聞いたのが宇宙論の道に進んだきっかけです。

もちろん当時は今のレベルでの理解なんてできていなかったと思いますが、「わからないけど何かおもしろい」という感覚はそのときからもっていました。

それから僕は歴史も好きなんです。過去のこの時期にはこういうことがあったというのを考えるのが歴史ですが、どんどんさかのぼっていくことで、「地球はどうやってできたんだろう?」とか「宇宙はどうやってできたんだろう?」という疑問につながったのだと思います。

●宇宙研究が100年後につながることを信じて

インフレーションモデルがわかったからといって明日から僕たちの生活が劇的に変わるわけではありませんが、研究をやるのは、やっぱり知りたいことがあるから知りたいということですよね。ニュートンやアインシュタインが理論を考えたときも、たぶんどういう理論を考えたら人間の生活に役に立つかではなく、純粋に知りたい現象を説明したいというのがあったと思うんです。

科学と技術の関係は、お互いを助け合うもので、人間の役に立つ技術は、科学理論を応用することで生まれるものだと思います。宇宙論を考えることによって、人類が科学への理解を深めることには貢献していると思っています。

もしかしたら今の技術というのは、まだ宇宙論を応用できるレベルには追いついていないかもしれません。でも、たとえば宇宙を考えることに使った理論が、100年後や200年後に人類の生活の向上につながるかもしれない。そう楽観的に信じて研究しているところはあります。

取材・構成:青山聖子/宮本裕人
協力:早稲田大学大学院政治学研究科J-School

PAGE TOP