• HOME
  • 早稲田大学TOP
  • お問合せ
  • アクセス
  • サイトマップ
  • ENGLISH
Loading
  • facebook
  • twitter
  • 研究所について
  • 研究プロジェクト
  • 研究員
  • イベント情報
  • 研究成果
  • 国際研究交流
  • 採用情報

Monthly Spotlight / 西脇雅人

経済学の視点から社会を読み解く

産業組織論とは

私は経済学を専門とし、産業組織論という分野の研究に取り組んでいます。産業組織論とは、対象とする産業について、その構造や戦略的相互依存関係にある市場参加者(企業、消費者)の行動を分析する学問分野です。産業組織論の学術的成果は公共政策(競争政策、産業政策、規制)に活かされています。

産業組織論と競争政策

産業組織論は公共政策の中でもとりわけ競争政策と密接な関わりをもち、理論的・実証的成果は、政策運営に様々な形で反映されています。2005年に改正独占禁止法でカルテル理論に基づくリーニエンシー制度が導入されたことは記憶に新しいですし、実証面でも需要関数の推定による市場支配力の検出法、合併評価における基準やシミュレーション手法等のツールを提供してきています。一方で、政策課題が産業組織論を刺激し、発展させたという側面もあり、両者のインタラクションは実り豊かなものとなっています。

実証産業組織論―実証経済学の新たなトレンド―

私は「理論研究者」と「実証研究者」の区分で言えば、実証研究者です。おおざっぱに言えば、実証研究者が行っていることは、得られたデータから変数間の因果関係を読み解くという作業です。現在、経済学の実証研究には大きく分けて2つのトレンドがあるように感じます。1つには、あたかも現実世界で実験を行ったかのような状態を生み出すイベントを探し出し、これを活用して、関心のある変数間の因果関係を識別する自然実験法とよばれる手法です。思いもかけないイベントが実験と非常に似た状況を作り出すことを利用するのです。この方法の考え方は自然科学で行われる実験と基本的に同じです。

一方、データと理論モデルとを密接に融合させる構造推定とよばれる手法があります。理論モデルは外生変数、内生変数、そしてパラメターで構成されます。現実のデータの傾向をうまく説明できるようなパラメターの値を探す(推定する)ことが構造推定の目的です。パラメターの値が推定できれば、理論モデルで現実を描写するのに必要なすべてを得たことになります。

実証産業組織論は、構造推定を積極的に研究に活用している分野です。例えば、現在の私の研究では、航空産業におけるJALとJASの合併を分析しています。その効果を分析するためには、JALとJASが合併しなかった場合、つまり別々の航空会社として存在していたとしたら市場で何が起きるのかを知る必要がありますが、構造推定は、現実のデータをもとにして、観察されている事実とは異なる反事実をモデルから作り出すことを可能にします。これにより、JALとJASが合併した現実と両航空会社が合併しなかった反事実を比較して、合併が社会に与えた影響を知ることができます。

産業組織論の社会への応用

産業組織論の研究は、公共政策への応用が期待できます。先述したように、競争政策つまり独占禁止法の運営において、産業組織論の研究成果が活かされています。私の研究との関わりが深い分野であれば、企業結合(合併)規制とカルテルの取り締まりがあります。

企業結合審査においては、規制当局が提案された企業結合案件を審査する必要が出てきます。企業が合併することで市場競争を歪め、消費者利益を損なう可能性と、ふたつ(あるいはそれ以上)の企業が1つになることでシナジー効果が期待でき、効率性が改善される可能性があります。これらの相反する効果を考慮し、規制当局は政策判断をしなければなりません。産業組織論で開発された理論・実証やそれに基づくシミュレーションは合併認可の政策判断を手助けします。

カルテルの取り締まりに関しても、規制当局はカルテルを組織しやすい市場構造が形成されるのを未然に防ぐ必要があります。そのためには、そもそもどのような市場構造でカルテルが組織されやすいかを知らなくてはなりません。産業組織論は市場構造とカルテルの関係について、理論的示唆および実証的事実を提供しています。

今後の展望

今後は、カルテルを取り締まるルール作りからもう一歩踏み込んで、カルテルを発見する方法を考案したいと考えています。

産業組織論の手法を用いて、正常な競争が行われている市場の状態を予測できれば、予測と異なる値段や数量で商品を販売している企業を特定しやすくなります。この手法が確立されれば、カルテルの取り締まりにかかる負担を大幅に軽減することができると考えられます。まだまだ研究は未完成ですが、研究内容をさらに社会に活かすことができるように、これからも努力していきたいと思います。

取材・構成:青山聖子/秦 千里/濱口翔太郎
協力:早稲田大学大学院政治学研究科J-School

PAGE TOP